1introduction
ザクザクと音を鳴らしながら進む白銀の世界
頭の上には今にも零れ落ちそうな星の光を感じて
考えることは「死ぬほど寒い」ということだけ。
少し前を歩くあなたの背中をじっと見つめ、足だけをもくもくと動かしていた。
あの頃は
このままあなたの後を追っていけば大丈夫という
不確かな確信と安心がそこにはあったけれど
この背中が私ものではないのだと初めて知ったのは
「死ぬほど暑い」小学六年生の夏だった。
友達の真帆ちゃんと遊んだ帰り道
「あなた」こと、シンちゃんが
私の知らない女の人と歩いているのを見てしまった。
女の人はシンちゃんと同じ学校の制服を着ていて
長い髪をポニーテールにアップし
汗すら煌めく涼しい笑顔を見せていた。
「アコ!お帰り」
シンちゃんと目が合うと同時に声を掛けられ
咄嗟のことで声も出せずポカンとしている私に
「シン君って妹いたの?可愛いね-」
シンちゃんと並んでこちらに向かってくる綺麗な人
「妹じゃないよ近所の子」
近所の子…
シンちゃんの妹以下です発言に少し突き放され伏目がちになる。
さらに彼女のクリクリとしたまん丸な目がこちらに近づいて覗き込んできた
「私妹ほしかったんだ。名前アコちゃんて言うの?何年生?」
彼女とシンちゃんの純粋で嫌味ないその言葉が私を卑屈にする。
なんで私はまだ小学生なんだろう
こういう女性がシンちゃんの彼女になるんだよ、きっと。
可愛くって優しくって…
背負っていたランドセルがダサくて情けなくなった
くそ暑い日。