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合わさって違う、

「私は、ミモザ。その子はスピカといいます」

 落ち着いた母親、ミモザは、ルエに促されるままソファに座り、ぽつりぽつりと自身たちのことを話していた。それをルエはベッドに腰かけ、ゼロは床に座り込み、ハヤトは扉に背を預け聞いている。

「ミモザ……(サウス)の生まれか?」

 ハヤトの問いに頷き、ミモザは自身の腰まである髪を忌々しく握りしめた。茶色のそれは、確かに微かではあるが、黄色を帯びている。

「ハヤト様も(サウス)の生まれだとお見受けしますが……?」

「あぁ、母親は水の生まれだが父親は……」

 そこで言葉を濁したハヤトを見て、ミモザは何かを悟ったようで深くは追求せず、代わりに自分の話を続けた。

「あの子は、地の私と父親の間に生まれた風の子なんです」

 ハヤトがハッとしたように顔を上げ、穏やかな寝息を立てるスピカへと視線をやる。それからミモザに視線を戻し、

「……大変だったろう」

 と小さく呟いた。その言葉に、ミモザは弱々しくも首を横に振り、気丈に笑ってみせる。

「その言葉だけで十分です。先程もゼロ様が庇ってくれなければどうなっていたか」

 少しの沈黙の後、ゼロがおずおずと挙手をする。

「あのさー……言い辛いんだけど、どゆこと?」

「お前、本当に」

「バカはなしで。もうバカはわかってるから、なしで」

 ハヤトは冷たい視線をゼロに送り、それからルエにも視線をやる。彼女も苦笑いしている辺り、話が飲み込めていないのだろう。

「はぁ……。(サウス)神力(しんりょく)の加護を強く持って生まれることは知っているな。別にこれは親の力を受け継ぐわけではない。大体が同じ力ではあるが……」


 そう、例えば両親共に風だとしても、子供が風になるわけではない。その場合、子供が18の誕生日を迎えた日、子供本来の力の村へと養子に出されるのだ。若しくは、神使団(しんしだん)へ入る為、幼くして親元を離れるか。

 どちらにしろ、子供は親と一緒にいれるわけではない。

 しかし、ひとつ方法がある。それが。


神力(しんりょく)を消す方法だ。父親はそれで亡くなったか?」

「お前っ、その言い方!」

 立ちかけたゼロを制し、ルエが静かにと宥める。スピカを起こすわけにもいかず、仕方なしにゼロはまた座り直す。

 ミモザは「いいんです」と悲しげに瞳を伏せる。それがさらに痛々しく、明日になったらハヤトを殴りつけてやろうとゼロは誓った。

「1人分の神力(しんりょく)を流し込めばどうなる?ルエがそうなったろう?つまりそういうことだ」

 恐怖を思い出したのか、ルエもシーツをぎゅっと握り締めた。その手に自分の手を重ねて安心させてやり、ゼロはふぅとひとつ息を吐く。

「話はわかった。まぁ、オレらの事情は説明したし?今日のとこは寝ようぜー。また明日も船の上なんだろ?」

「あと4日だ。異民船は5日かかるからな」

 うへーと舌を出しつつ、ソファで寝るために立ち上がるゼロに合わせ、ミモザも立ち上がると2段ベッドの梯子を登り始めた。

 微かな明かりを消すと、ひとつだけある窓から綺麗な星空が見えた。明日にでも外で見たいなと思いつつ、ルエもまたそっとベッドに横になる。反対にあるソファからゼロの寝息が聞こえ、なんだかんだ、大人しくソファで寝るんだと可笑しくなる。

 そう、思う内に、ルエもうとうとし始め。

「おやすみ、ルエ……」

 彼の優しく頭を撫でる手が気持ちよく、身を任せると、すぐに意識を手放した。



 ※



 ふと、声が聞こえた。

 それは耳に直接囁きかけるような、それでいてはっきりとは聞こえてこない。

 誰かが(うた)っているようだ。

 ルエは身体を起こし、誰が(うた)っているのかと見回すが、その(うた)う誰かはここにはいなかった。

 しかしハヤトの姿が見えないことに気づき、静かにベッドから抜け出すと、足音を立てないようにして部屋から出ていく。


「……追わないのですか?」

 上で寝ているはずのミモザが、同じく寝ているはずのゼロに問いかける。目を閉じたままで、ゼロは鼻で笑い飛ばし、

「へっ、アンタも意地悪いこと聞くなぁ」

「意地悪いのはどちらでしょうか。貴方様にも聞こえているのでしょう?」

 聞こえる。

 それは先程から囁かれるこれのことで。

 否定も肯定もしないが、ミモザにはそれで十分だったらしい。

(うた)なんて、いつぶりでしょうか。元来白髪で生まれた者には聞こえない(うた)……。貴方様も娘と同じで何かしらあったのですね」

「そういうの、好きじゃない」

「……ごめんなさい。けれど、貴方様の纏う力が、いつも哀しい色を帯びているから」

 哀しい。

 どうやらミモザは読み取ることに長けているらしい。人には見せないようにしてきたつもりだが、ここにきて会いたくない部類の人間に会うとは。

 ミモザの笑い声がきこえ、ゼロは苛立ちと共に起き上がる。

「助けなければ良かったと、思っていますか?」

「そういう後悔はしないようにしてる。自分を否定したくないし」

 何より、スピカを助けたいと思ったのは本当だ。

 昔の自分、そして幼い日の妹の姿が重なって。それに嘘はつきたくないと、ゼロは大きく息を吸い。

 またソファに横になった。

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