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フレンドが出来ました。


 新しいフィールドへ出ようとすると、大勢のプレイヤーたちが出口でざわついているのが見えた。

 

「なにかな?」

 

 気になって他のプレイヤーたちに混ざり、背の小さい栞はぴょんぴょんと跳ねる。

 それに気付いた背の高いプレイヤー達は栞が見やすいようにとスペースを開けてくれた。

 おかげで最前列で様子が確認できる。

 栞はぺこぺことお辞儀して、皆の視線の先を見た。


「わあ」


 そこには二人の冒険者がいた。

 煌びやかな金や銀の装備に身を包み、ごてごてと装飾の付いた大剣と杖をそれぞれ背負っている。

 装備からして現時点で少数の上級プレイヤーであり、強力なダンジョンを攻略してきたのだと予想できた。


 きらきらとした瞳で、栞もその装備を見る。

 同じくプレイヤーたちも皆彼らに称賛の言葉を浴びせ、拍手を送ったり声援を送ったりしているのだった。


「私もあんなのほしいなぁ……」


 ダンジョンに挑むにはパーティを組むのが普通だ。

 けれども生産職である栞に、それは難しい話。

 ううんと頭を悩ませて、あーでもやっぱりほしいなぁなんて考えていたら。

 杖を持ったプレイヤーが栞の様子に気付き、近付いてくる。


「あの、あなたは……」


 背負っている杖こそ目立つものの、それは栞より少し背丈が大きいくらいの少女だった。

 白いローブに金髪の長い髪がよく映える。

 

「え、私?」


 突然の出来事に驚きを隠せない。


「はい。ひょっとして、調理師さん?」

「そうですよ! あれ、まだ匂います?」

「まあっ!」


 フライパンは仕舞っているしなんで気付かれたのかな?

 と、栞が疑問に思っていると突然手を握られる。


 周囲も栞の発言に驚きを隠せないらしく、二人はたちまち視線を集めた。

 少女は嬉しそうな笑顔で手を握ったまま、目を輝かせて続ける。


「初めて見ました! お料理は作れるんですか!?」

「え、えっとまあちょっとだけ」

「素敵! あ、あの、今何か作れたりします!?」

「キッチンが無いとだめかなぁ。……もしかして料理が好きなんですか?」

「食べるのが好きなんです! でも調理師さんっていなくって……」

「あ、じゃあ」


 そう言って栞はナビフォンを操作し、バッグを開く。

 先ほど作ったスイートリーフが余っていたので取り出すと、少女に手渡した。

 

「これ、よかったらどうぞ!」

「まあ……!」


 激甘のスイートリーフを受け取った少女は、それをゆっくりと口へ運ぶ。

 ぱりぱり、もぐもぐ。

 ゆっくりと味わっていた。


 栞は少し不安だった。

 見た目が一番マシだったからとはいえ、ちょっと甘過ぎてしまう料理。

 しかし少女は美味しそうに、とても嬉しそうに完食し終えた。


「か、感激です! こんなに甘いものがこの世界にあるなんて……」

「お、美味しかったですか?」

「あの、良かったら私とフレンド登録してくれませんか?

 こんな美味しい料理、また食べてみたいんです」

「私なんかで良かったら、よろしくお願いします!」

「ありがとう! 生産は戦闘面で大変でしょうし、何か困った事があったら全力でサポートしますから連絡してくださいね!」


 とんとんと話が進み、二人はお互いのナビフォンからフレンド申請を飛ばし承認し合う。

 ぴろんと音がして、栞のフレンドリストに初めてプレイヤーの名前が追加された。


「サクラ、もういい? そろそろログアウトするわよ」

「ええ。それじゃあえっと……シオリさん。また是非お会いしましょう!」


 サクラ、と呼ばれた少女はそう言って剣士の後に続いて町へと入っていった。

 栞は大きく手を振って、自分も町の外へと駆け出して行く。




「びっくりしたけど、かわいい人だったなぁ」


 港町を出ると、海岸のフィールドへ辿り着く。

 先ほどの出来事を思い出しながら、栞は海を眺めている。

 

 さっきのサクラという子。 

 武器も綺麗だったけど、白いローブも素敵だった。

 武器とかは無理でも、生産職でもああいうローブなら着られるんじゃない? と思った栞はダンジョンを見てみようと決めるのだった。


「ん?」


 と、その時通知が鳴る。

 見ると、サクラからのメール。先ほどのお礼メールだった。

 それだけではなく、何か添付品が付いている。

 何だろうと開いてみると、画面にとんでもない文字が写し出された。


『【サクラ】から10万Goldを受け取りました』


 クエストでおばあちゃんから貰ったお金が300Goldであることを考えると、すごい金額。

 キッチンのレンタルを500回も行える金額。

 栞はしばらく硬直したのち、サクラへとお礼のメールを送った。


「今度は、腕を上げてちゃんとしたの食べさせてあげなきゃ……」


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