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作りました。

「さ、はっじめるぞ~!」


 家に帰ってVR機器をセットアップし、ダウンロードも済ませる。

 さて、あとはログイン後デスクトップに写し出された画面でキャラクタークリエイトを済ませたら冒険が始められる……と意気込んだ。


「といっても、ここからが長いんだよね」


 栞は同年代の女子高生に比べれば、よくゲームをプレイする方だ。

 オンラインゲームはこれが初めてではあるが、キャラクリのあるゲームはそれだけで時間が吸われるという事もよく理解していた。

 最新のタイトルというだけあって、その衣装は豊富である。

 栞は動物が好きなので、猫耳としっぽは絶対につけようと意気込んでいた。


「~~♪」 


 鼻歌交じりにマウスを鳴らす。

 時間がかかることは分かっていたので、あらかじめ脳内でキャラクリを終えておいた栞はサクサクと画面を進められた。


 長いと言った割にはそこまで時間をかけず、すぐに自分の分身が写し出される。

 深いブラウンのセミロング、猫耳しっぽも髪に合わせた色で調整し、少し暗めな桃色の瞳。

 デフォルトで与えられるシャツとスカートは瞳の色に合わせ、なんとも甘そうなキャラクターが出来上がった。

 それは脳内で完成されたもの、髪や猫耳などを除けばほとんど現実側の栞と大差はない姿だ。


 ……のだが、栞はしばし悩んでそっとマウスを動かした。

 【胸囲】と書かれた項目のバーを少しだけ伸ばす。


「ちょっとくらい……」


 それはほんの僅かではあるが、栞にとってはモチベーションに影響する大事な項目だった。

 調整を終えて、改めて画面を次に進める。

 名前を決める画面だ。これは簡単だった。

 すぐに打ち終わる。


「シオリ……そのままだけど、沢山いそうだしいいよね」


 画面が切り替わり、いよいよロールの公開画面が目に入る。

 演出は豪華に、映像で作成されていた。

 パッケージ絵に登場したキャラクターモデルたちがモンスターらしきものを次々となぎ倒して森の奥へと進んで行く。

 最後にド派手な演出で大技を放ち、奥に潜んでいた黒龍が倒れたところで宝箱が出現する。


 見入っていた栞の目に【箱を開けよう!】の文字が見えた。

 震える手でマウスカーソルを合わせて、


「大吉様!」


 かちり、と乾いた音が部屋に響いた。

 そして、画面には虹色の演出と共に大きく商店街ゴシックで【生 産 者】と写し出される。

 ……栞はしばらく固まり、現実を見つめるのにおよそ十分ほどの時間を要した。


「わあ、ある意味だいきち~……」


 何とも言えない気分になる。

 栞は生産者があんまりスタートダッシュに向かないという情報と、滅多に引くものじゃないから安心していいという話を、先に始めた友人から聞いていた。

 ただでさえオンラインゲームは初心者なのに、これでいいのかな? と思うもどうしようもない。


「うーん……でも、かき氷は食べられるかなぁ」


 調理師があるんだから、氷くらい削れるはずだ。

 そんな安易な理由でこのロールを受け入れられたのは、OSO中見渡しても栞くらいだった。

 理由が理由なため、選択した初期職業はもちろん調理師。

 ギャザラーも選択できたので、そちらは簡単そうな園芸師を選んだ。

 

 かくして、ここに初めて生産職に前向きなプレイヤーが登場する事となった。

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