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パーティのお誘いです。

 【精霊石】使用:結果【成功(鍛冶師ボーナス+10%)】

 【藻王の靴】→【真藻王の靴】


 【真藻王の靴】

 ワカメキングの真の力を引き出した靴。

 ぬめりを強化することで能力が上がった。

 【VIT+100】

 【AGI+85】

 【真スリップ】

 靴のぬめりを武器に塗り対象を転ばせる。

 10秒間【スリップ】状態にする。

 自分のLvより上・一部の敵に効果が無い。

 対象によって再発動時間が異なる。

 再発動【3秒~3分】


「できた~!」


 通算3つ、ギリギリの精霊石を使用し栞は【藻王の靴】の進化を成功させた。

 驚異的な能力値に加え、強力なスキルを持つこのアイテムは【レア】ランク内でも上位に位置する能力を有した装備である。

 

「でも、めっちゃぬるぬるしてるし……」


 早速履いてみると、あまりの気持ち悪さに速攻で脱ぎ捨てたくなる。

 見た目にも海藻が足元からうようよしていて、目立つかもしれないが悪目立ちだ。

 どういう訳か自分がスリップする事は無さそうだが、気持ち悪すぎて戦闘に集中出来ないのではないかと栞は心配になった。


「うぅ……」


 さすがの栞もこれには我慢ならず、フィールドに出るまでは仕舞っておこうと考える。

 しかしじゃあ履き替えようかというタイミングで、そこに人の気配が感じられた。

 

「あれ、ミラーがこんなところに?」


 それは路地と入り口を挟むようにして立っているミラーの、外側から聞こえる。

 つまり向こう側にいる人間に存在がばれてしまったことになるのだ。

 

 栞は慌てて、靴を履き替えるのが先か逃げちゃうのが先か考えた。

 こんな気持ちの悪い靴、履いていたら何と思われるか溜まったものじゃない。

 しかし慌てて考えたのでどっちにもまとまらないまま、声の主は近付き、目の前にある邪魔なミラーをどけてしまう。


「や、見ないでください! 違うのこれ装備なの!」


「あら?」


 仕方ないので目をぎゅっと瞑り、特に意味のない抵抗をする。靴から延びるワカメは悲しく揺れていた。

 しかし件の相手は栞を見ると、声音を変えて黄色い声を上げた。


「し、シオリさんじゃないですかっ」


「ですからあの、そういう趣味とかでは……ほぇ……?」


 聞き覚えのある声に目を開けると、そこには見覚えのある人物が立っている。

 それは初めてのフレンドで、初めて自分の料理を食べてくれた人で、大金を送金してくれた少女。


「サクラ、さん?」


「こんにちは~! また会えましたねっ」


 少女は目を輝かせて、栞をじっと見つめるのだった。




「なるほど、そういう訳ですか! それならいいものがありますよ!」


 二人は場所はそのままに、栞は装備品の悩み(主にワカメ)についてサクラに訳を話した。

 事情を聴いたサクラはごそごそとバッグをいじり、何かを取り出す。


「じゃーん、【投影石】です!」


「とうえーせき?」


「ふふふ、これを使うと装備品の性能はそのままに外見を変更できるんです。おしゃれの必須アイテムなんですよ!」


 そう言うと、サクラは投影石を栞の靴に当てる。

 途端に靴が薄く発光し、続けてサクラがバッグから取り出した運動靴のようなものを当てるとワカメに吸収される。

 やがて光が収まると、そこには気持ち悪く揺れるワカメではなく青色の運動靴が存在していた。


「ほ、ほんとに変わっちゃった!」


「ね、すごいでしょう?」


 一応ステータスや効果を確認するが、テキストも変わっていない。

 栞は感動するのも束の間、申し訳なさそうにサクラに平謝りする。


「ごめんなさい、これ、高いですよね?」


「ううん、気にしないでください。レベル10以上のダンジョンで結構もらえますから!」


 サクラはそう言ってにこりと微笑む。


「あ、でも、せっかくだから……またお料理もらってもいいですか?」


「もちろんです! でも、今は丁度切らしてて……」


 ワカメキングとの戦闘で作っていた料理は全て食べてしまっていた。

 今バッグにあるのは大量のワカメのみで、とてもこれを食べてくださいなんて言えない。


「それならまた余った時で大丈夫です! ところで、シオリさんはどうやってこの町に……?」


「うんと、実は……」


 栞はこれまでの経緯を説明する。

 最初はラットに勝てなかったこと、順調にやってたら鎌でも一応戦えたこと。

 そしてダンジョンに潜り、なんとかワカメキングを倒したこと。


 聞いているうちに最初はうんうん頷いていたサクラも、ダンジョンに潜り始めたあたりから表情を変化させる。

 最後に装備品の生産や進化のことを聞くと、黙りこくってしまっていた。


「あの、サクラさん?」


 心配になって声を掛けると、ようやくサクラは口を開く。


「シオリさん……何と言いますか、ちょっとステータスを見せてもらってもいいですか?」


「え、あ、はい!」


「ええと、うん。なるほどです。素の能力値こそ悲惨ですが、このレベルでこの装備補正、見たことの無いスキル……そして何より、精霊石ですね」


 何やらぶつぶつと呟くサクラ。

 栞は何かまずい部分があるのか、やっぱり生産職が戦ったりすると後々に悪い影響でも出ているのかが気になった。


「……はい。ありがとうございます」


「ええと、もしかして何かまずかった、とか?」


「まさか! ただ、びっくりしたんです。【逃走】は私も持っていますし、条件さえ分かれば取れるんですが……【スニーク】。これは見たことが無いですね」


「え、でも、ただフィールドに居ただけで取れたようなものでしたよ?」


「行動も関係あると思いますが、恐らくロール限定な気もします……。生産職らしいスキルではありますが戦闘中にも可能なのは大きいです」


「確かに、便利でした」


 栞も同意する。

 ワカメキングを倒す時も、初めてのラットを倒す時も愛用したスキルだ。


「他にも、モンスターに対して園芸師の技が有効な事……普通はわざわざ戦おうなんて思いませんから、こそ得られたのでしょう」


「あはは、なんかいけるかなぁって……」


「……シオリさん! 私からちょっとお願いです!」


「わっ」


 突然迫ってくるサクラに、栞はたじろいで路地の壁にもたれかかる。

 もう後ろへは下がれないというようにサクラは栞に迫り、すぐ目の前でよく輝く瞳が見えた。

 そして、一声。


「私たちとパーティを組んでみませんかっ?」


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