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7話 巻戻り

 リシェルは断罪されたはずだった。


 なのに――。


「お嬢様おはようございます。今日もいい天気ですよ」


 幼い時過ごした公爵領の屋敷の自分の部屋でリシェルに仕えていてくれたメイドのリンゼが微笑んだ。

 最後までリシェルに付き従ってくれたリンゼ。

 彼女も最後は断頭台で裁かれてしまった。

 そのリンゼがかつてリシェルが住んでいた屋敷の部屋で微笑んでいる。


 いまだ慣れない状況にリシェルは戸惑った。

 手を見ればまだ幼い少女のままで。


 どうやらリシェルは8年前の幼少時代。

 10歳にまで巻き戻ってしまったようなのである。

 まだ領地で父親と暮らしていた時代だ。


 夢を見ているのか、ここは天国なのかと考えても答えは出ずリシェルは10歳の自分をやり直しているのである。


「どうかしましたか?お嬢様?」


 リンゼがにっこり微笑みながら紅茶を差し出してくれる。

 リシェルが牢に入るまでの間、ずっとリシェルの側で入れてくれた美味しい紅茶。

 王都に無理矢理つれていかれてもリンゼはずっとリシェルに付き従ってくれた。

 王子たちに虐められても――彼女だけが慰めてくれたのだ。

 泣いていたときよくリンゼが入れてくれた紅茶をリシェルは大事そうに口をつけた。

 懐かしい味を楽しみながら――リシェルは思う。


 何故時代を逆行したのか、それはわからない。

 もしかしたらこれは死ぬ前に見ている夢なのかもしれない。


 けれど。それでも。

 

 殺されるその前に。

 ガルシャ王子に復讐してみせようとリシェルは神に誓った。

 怨霊となって、末代まで呪ってみせようと。

 これはきっと神がリシェルの願いを叶えてくれたのだろうと思う。


 神がまた機会を与えてくださったというなら。

 私は誓いを守りましょう。

 私から全てを奪った王子に。

 私から愛おしい人を奪い国をあのような状態にした聖女に。

 


 必ず制裁を。

 

 

 私に味方をしたばかりに死んでいった人たち。

 重い税に苦しむ人々。


 あのような未来はもう二度と体験したくありません。

 必ず復讐を。

 そのために私は生まれ変わったのですから。


 リシェルは遠くを見つめ思うのだった。



 □■□



 まずしなければいけないのは――。

 リシェルは自室で机に向かって考えていた。

 

 10歳のリシェルに出来ることはそう多くない。

 まだ社交デビューも果たしていない小娘が、出来ることなどたかが知れているのだ。

 慌ててはいけない。

 リシェルが処刑される頃にはかなりの貴族がリシェルに力をかしてくれた。

 けれどあれは王子の目に余る横暴さについていけず、リシェルを哀れんでいた部分もあっただろう。

 時代が巻き戻った今、あの時のように力をかしてくれる保証はどこにもない。

 元々リシェルに力をかしてくれた貴族達は国王陛下への忠誠があつい。

 真実を打ち明ければ国王陛下が健在な今、力をかしてくれるどころか、逆に敵にまわる恐れもある。


 慌てるな。見誤るな。


 リシェルは知っている。国王陛下に隠し子がいるということを。

 将来ロゼルトが王子に反旗を翻す事を。


 リシェルに出来る事といえば彼の力になること。

 彼を王位にたたせ、必ずやガルシャ王子に復讐を。

 国の経済に混乱をきたし、民たちを苦しめた罪として断頭台にあげること。


 そのために蓄えなければいけないのは資金と兵力。


 そしてリシェルの手足となって動いてくれる駒。

 これがなければ、話にならない。


 どんな汚い手段をもちいても必ず復讐してみせましょう。

 必ず。

 

 リシェルは決意を新たに外を見上げた。

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