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6話 逆行前(6)

 それからロゼルトがリシェルの前に現れる事はなかった。

 次の日。慌ただしくリシェルは処刑されたからだ。

 リシェルを哀れんでか兵士の一人が事情を説明してくれた。

 国王の隠し子がいたことが発覚し、それがロゼルトだと。

 ロゼルトが国に反旗を翻そうとしている。

 そのためリシェルの死刑がはやまってしまったと。


 教えてくれた兵士はとてもすまなそうにしていたけれど。

 やっと楽になれる。

 リシェルはそう思っていた。


 断頭台にあがるまでは。


 リシェルは固まった。

 死ぬのはずっと自分だけだと思っていた。

 なのにこれは何だろう。

 リシェルによくしてくれた人がみな断頭台に綺麗に並べられていたのだ。


「ん、ぬー!!!」


 猿轡をはめられて喋る事すらできず、リシェルは断頭台にかけられる。

 リシェルを最後まで世話をしてくれたリシェルの専属メイドのリンゼ。

 仕事を一緒にフォローしてくれたカイチェル伯爵。

 ラムディティア領にいた時リシェルの護衛だったシーク。

 他にもリシェルによくしてくれた貴族達が並んでいたのだ。


 その前で王子が嬉しそうに笑いながらリシェルを見下ろしていた。


 醜悪な笑みを浮かべながら。


 ありえない。

 


 ザシュリーー


 リンゼの首が飛んだ。

 それを皮切りに刃が次々と落ちては首をとばす。



 ありえない。彼らが何の罪をおかしたというのだろう。

 大義もなく、こんなことをすれば臣下は誰もついてこなくなる。

 

 リシェルに対しては聖女を慰めるためとまだ大義といえないが理由はあった。

 けれど――殺される人たちの中には伯爵やそれなりに身分の高いものも含まれている。

 こんな非公開に処刑するなんて、ありえない。

 この王子は分別すらついていないのか。

 なぜこの王子は越えてはいけない一線をやすやすと越えるのか。


 あまりも愚かすぎてリシェルは思考がついていけなかった。

 リシェルにはもう王子が人間ではなく魔物なのではないかと疑うほど王子の行動は常識を逸していたのだ。


 分別というものを生まれたときどこかに置いてきてしまったのでしょうか。

 何故後の事をまったく考えずこのような暴挙にでられるのでしょう?


 リシェルは思う。


 自分に関わったばかりに殺されて行く人たち。

 罪状はリシェルと仲がよかったから。ただそれだけ。


 あの時ロゼルトの手をとっていれば。

 生を諦めず生きようとしていれば、彼らの処刑も先伸ばしにされて救う手立てがあったのかもしれないのに。


 リシェルが生を諦めたがために彼らが死んでしまう。


 何故私はあの時ロゼルトの手をとらなかったのだろう。


 リシェルは溢れる涙を止められなかった。


 ごめんなさい。

 ごめんなさい。


 あの時闘う勇気をもっていれば、もしかしたら誰も死ななくてすんだかもしれないのに。

 牢屋に閉じ込められていたとしても、後で救えたのかもしれないのに。


 自暴自棄になったために救う事ができなかった。


 神よ。もし貴方が本当に存在するのなら。

 私の魂を捧げましょう。


 だから、私に力を。


 お願い――どうかみんなを助けて。


 お願いお願いお願い。


 心の中で何度も何度も願うけれど、無情に首が飛ぶ鈍い音だけが響いている。


 リシェルの願いは届かない。

 皆の首が無慈悲に転がっていく。


 次々と首が飛んで行き。リシェルの出番がきた。



 許さない。


 許さない。


 私は死してもこの王子を呪いましょう。

 悪魔に魂を売ってでも怨霊となり末代まで祟りを!!!!!!



 王子を睨みながら―――金属の擦れるような音がきこえリシェルは意識を失うのだった。

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