57話 最終話
「お嬢様は稀代の詐欺師だよな」
聖女めぇぇぇおぼえぇぇぇてろぉぉぉぉぉと情けない悲鳴をあげて再び神器に吸い込まれていく魔族を見つめ……ジャミルがぼやいた。
自分もリシェルに騙された身として、なんとなく魔族側の気持ちもわからなくない。
「ええ、まさか……、魂を入れ替えて、ガルシャ王子の方の魂を捧げるとは」
そう。契約書に書かれていたのは血で契約したその『身体に宿る魂』だった。
それを利用したのだ。
ガルシゃ王子とロゼルトの魂を契約成立前に入れ替えたのである。
血で契約したロゼルトの身体にはガルシャ王子の魂が入っていたのだ。
何故。それが可能だったか。
それこそが初代聖女ソニアが邪神を倒せた理由。
聖女だけが魂を入れ替える事ができる秘術を使えたからだ。
秘術で邪神と虫の魂を入れ替えて……ハエたたきで邪神を倒したのである。
虫の方はというと、魂が身体の魔力に耐えられずあえなく昇天してしまった。
あの過去の映像を見てリシェルはその真実にたどりついたのだ。
ちなみに。
魔族側が操っていた神官の情報は他の文献と整合性がとれてなく嘘っぽいとリシェルにあっさり却下され、エクシスに怪しいと見破られていた。
「……何が一体どうなってるんだ」
ぽりぽりと頭をかきながら第一王子ガルシャの身体にはいったロゼルトが立ち上がる。
エクシスが回復魔法をかけたので刺された箇所も多少痛むが命にかかわる程の事でもない。
グエンと今後について会議をしていた所にいきなり『神の使徒』に拉致されて、気を失い、気づいたらこの状況なのである。
「ロゼルト!!!!」
嬉しそうにリシェルが叫び。
そのままロゼルトに背を向けて全速力でグエンの後ろに隠れる。
「……って!?なぜ隠れる!?」
「……その抱きつきたいのですが、身体が第一王子なので……」
と、グエンの背に隠れながら言うリシェル。
リシェルに言われ、ロゼルトは手をみるが……確かに自分ではないような気がする。
というか、王宮に『神の使徒』やらエルフの騎士やら竜人やら揃ってる状況に意味がわからず
「ちょ!?これ一体どういうことなんだよ。
意味がわからん説明してくれ」
ロゼルトが叫ぶのだった。
■□■
「じゃあ何か。
契約を逆手にとって魂を入れ替えてガルシャの方の魂を捧げたってことか」
ロゼルトが呆れ顔で聞けば
「はい。ただロゼルトに話してしまうと魔族に筒抜けになってしまうので内緒にさせていただきました」
と、しーっと指で仕草をする。
「……つーか、魂入れ替えなんてできるのか?
神話でもそんな話聞いたことがないぞ」
「それが聖女ソニアだけができたからこそ。
神ですら倒せなかった邪神を聖女が倒せたのです」
言ってリシェルが微笑む。
「……なるほど!そういうことか!
なんつーか。流石リシェルだな。
うん。よくやった」
と、ロゼルトが撫でようとすれば
リシェルが全力でグエンの後ろにワープした。
「……」
「………」
「とりあえず……元の身体に戻ろうか」
「はい。そうですね!」
嬉しそうにリシェルが微笑むのだった。
■□■
「それにしても、本当に大丈夫ですか?
刺されるのはかなり痛いはずです」
あれから場所を移し、今は王都にあるラムディティア領の別荘にきている。
そこにはガルシャ王子の身体にはいったロゼルトと、縄で縛られた状態のロゼルトの身体がある。
ちなみにガルシャの魂は魔族に吸われ死ぬことのない永遠の苦しみを味わっていることだろう。
マリアの方はといえばエクシスが物凄い笑顔で連れていった。
今この場にいるのは『神の使徒』数人とエルフ達。
そしてグエン、ジャミル、シークとロゼルトとリシェルである。
「まぁしゃあないだろう。
リシェルに逃げられるこの身体じゃ、せっかく生き残れたのに意味がない」
ポリポリロゼルトが頭をかけば
「……そ、そう言ってもらえると嬉しいです」
と、リシェルも顔が赤くなる。
その手には聖なる短剣が握られていた。
この短剣で身体を刺さないことには転魂ができないのだ。
リシェル達の後ろには回復の得意なエルフが控えていた。
「私もロゼルトとまた共に歩みたいです」
と、上目使いで顔を真っ赤にしながら言うリシェルが可愛くて
「リシェル!」
ロゼルトが抱きつこうとすれば
「はい!それじゃあ行きます!!!」
何か勘違いしたリシェルが全力で刺してくる。
「げふっ!!!」
「頑張ってください!ロゼルト!!!」
不意打ちで思いっきり血を吹き出すロゼルトと真面目に転魂をはかるリシェルを見つめながら。
「油断させて刺すとかなかなかマニアックなプレイだな」
と、ジャミルが感想を漏らし
「貴方は少し黙っててください」
と、シークに突っ込まれるのだった。
次のエピローグで完結です!








