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49話 エルフの里

「ようこそおいでくださいました。聖女様」


 エルフの里につくなり、長身のエルフ数人がリシェル達を出迎えた。

 長髪の金髪のエルフ達はとても整った顔立ちをしている。

 彼らはリシェルが馬車から降りるなり頭を深々と下げた。


「あ、ありがとうございます」


 神話やおとぎ話でしか見たことのないエルフに頭を下げられてリシェルがたじろいだ。

 このような歓迎までうけて、もし聖女じゃなかったら?

 王宮での陰湿ないじめを思い出し身体が震えてしまうのがリシェルでもわかった。

 慌てて父とエクシスに貰った魔道具を握りしめる。


「大丈夫ですよ。リシェル様。

 貴方は間違いなく聖女です」


 言って、エクシスに肩に手をおかれ、リシェルは頷く。


「それでは宜しくお願いします」


 エクシスが一番長身のエルフに話しかければ


「了解した。聖女様とお付きの方はこちらへ」


 言ってリシェルとシークとジャミルを案内する。

 

「お気を付けて」


 見送るエクシスにリシェルは振り返り


「有難うございました。エクシス様もお気を付けて」


 と、軽くおじぎをすれば、エクシスが目を細め神殿特有の祈りの挨拶を捧げ去っていった。

 エクシスもこれ以上神殿業務をおろそかにするわけにもいかず、滞在することはない。

 彼もまだ大神官の地位についたばかりなのだから。


「私はリシェル様の身の回りの世話を担当することになった。オーラムです。

 宜しくお願いします」


 長身のまだ若い男性エルフ。オーラムがリシェルに微笑んだ。

 エルフは美形すぎてあまり見分けがつかない。

 皆美麗な顔すぎて、同じに見えてしまうくらいなのだ。

 リシェルはマジマジと見つめ必死に顔を覚える。

 これからエルフの顔も見分けられるようにならないとと心の中でつぶやいた。


「はい。宜しくお願いします」


 エクシスの話ではこれからリシェルはエルフの里で聖女の歴史を学び――14歳で聖女の儀式を受ける。

 本来なら20歳で受けるものなのだが、前世の失敗をもとに、リシェルの力を早めに引き出す手はずになっていた。

 ロゼルト達の策略が必ずうまくいくとは限らない。

 念のため、20歳になる前に聖杯に力を注ぐ。

 普通の聖女なら、神力が足りないだろうがリシェルの力なら大丈夫だろうとエクシスは言っていた。 


 あと7年。


 ロゼルトを死なせないために。


 聖女になって彼を救ってみせる。


 リシェルは決意新たにエルフの後に続くのだった。



■□■


「はじめまして。リシェル様」


 そう言って優雅に微笑んだのはエルフの里の長。クリフォス・ラル・サウスヘルブ。

 金髪の美しい男性だ。

 今リシェルはエルフの長の住む神殿へと案内されている。

 リシェルの後ろには同行してくれるシークとジャミルが控えていた。

 幻想的な景色が広がる中庭でお茶会という形でエルフの長と面会を果たしているのだ。


「はじめまして。この度はお招きいただき光栄です。ありがとうございます」


 と、リシェルはエルフ式の挨拶のポーズで祈りを捧げる。


「エクシス殿から話は聞いています。

 我らエルフは貴方を心から歓迎します。

 どうぞごゆるりと」


 言って微笑み席を促す。

 エルフの神殿とだけあって不思議な植物が綺麗に植えられていた。

 ただ、中央に鎮座する枯れかかった大木だけが、不自然に鎮座している。


「ああ、あれは聖樹です。

 もう500年も前からあのような状態なのですよ」


 リシェルの視線に気づいたのかエルフの長が微笑んだ。


「す、すみません」


 話中視線を逸らしてしまったことを注意されたようでリシェルは慌てて謝る。


「お気になさらず。

 聖女様、宜しければあの聖樹に触れていただけませんか?」


「え?」


「この聖なる樹は500年前はそれは綺麗な花を咲かせていたらしいのですが……。

 歴代聖女様が力を注いでもこの状態のままなのです。

 貴方は歴代聖女様の中でも強い力を持つと聞いています。

 宜しければそのお力を聖樹に分け与えてあげてほしいのです」


 言って優雅に微笑むが……試されている。

 リシェルは思った。

 つい、緊張で父に貰った魔道具のペンダントを強く握りしめる。


 本当に私は聖女の力を使えるのだろうか?


 逆行前。

 聖女の力を試すための宝珠に力を注ぎ、何も反応しなかった時の恐怖が蘇る。

 あの時の絶望は言葉では言い現せなかった。

 誰もが落胆の声を上げる中。一人取り残される自分。

 チヤホヤもてはやしてきた人たちが一斉に冷淡になった瞬間でもあった。

 あの時の恐怖をまた味わうような錯覚に襲われてリシェルはたじろぐ。


「大丈夫ですよ。お嬢様。

 反応しなきゃ反応しないでいいじゃないですか。

 薬の影響もまだあるはずですし」


 リシェルの心を読んだのか、同行していたジャミルがぽんと背中を押してくれる。


「……ああ、申し訳ありません。

 無理にではありません。気がきかぬ事を言ってしまいました」


 エルフの長が困った顔をした。

 彼も自分が言った事が失礼な事だったと察したらしい。


「……大丈夫です。やってみます」


 言ってリシェルは歩み出した。


 大丈夫。信じよう。

 ロゼルトもエクシス様も私を聖女と言ってくれている。

 マルクやジャミル。そしてシークやお父様。

 彼らが逆行を信じてくれたように。


 自分もロゼルトやエクシス様を信じないと。


 前を向け。立ち止まるな。


 リシェルが聖なる樹に近づいた途端。


 ぶわっ!!!!


 聖樹が物凄い光を放ち、リシェルの身体を包み込む。


「こ、これは!?」


「お嬢様!?」


 周りにいたエルフやジャミルとシークが慌ててリシェルに駆け寄るが



「大丈夫ですよ。二人とも」



 光に包まれながらリシェルが微笑んだ。


 とても優しい温かい光。


 初めてのはずなのにどこか懐かしいと感じる不思議な感じ。


『おかえり。聖なる子』


 聖樹の声だろうか?

 優しい声とともに――光は消え


 そこに鎮座していたのは……青々しい葉を生い茂らせ若々しくそびえ立つ聖樹だった。

 木には蕾ができていて、今にも花が咲きそうな状態だ。


 一瞬の静寂の後。


 その場に居合わせたエルフが皆リシェルに跪いた。


「我らは貴方への忠義を誓いましょう。

 聖女への忠誠を(カルシャシャーン)


 クリフォスがそのままリシェルの手の甲にキスを落とすのだった。

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