47話 はったり
「それじゃあ気を付けてな」
婚約の儀を終えて、ロゼルトは馬車でリシェルを見送りにきていた。
これからエルフの里にエクシス達と向かうことになる。
「はい。ロゼルトも遊びに来てくれる約束を忘れないでくださいね?」
一生懸命ロゼルトの手を握っていうリシェルにロゼルトは微笑んで。
「ああ、ちゃんと会いに行くさ。
婚約者だしな。
……それにリシェルの場合、行かないとエルフの里を抜け出して会いにきそうで怖い」
ロゼルトが冗談まじりでいえば
「はい!会いに来てくれないなら抜け出してロゼルトの所に会いに行きます!」
真顔で答えられる。
「……うん。絶対行く」
冗談なのかもしれないがリシェルの場合冗談でなく、エルフの里も抜け出しそうで冷や汗をかいた。
リシェルは行動力がありすぎてある意味怖い。
「道中無理のないように」
グエンが言えばリシェルは嬉しそうにグエンの手をとり
「お父様も会いに来てくださいね。
楽しみにしてます」
と優雅に微笑んだ。
「ああ、会いに行こう。
身体に気を付けてな」
「はい。お父様も」
「それでは行ましょう。リシェル様」
名残おしそうに見送られるリシェルにエクシスが手を伸ばせば
「はい。お願いします」
と、エクシスの手をとるのだった。
■□■
ガタガタガ。
馬車に揺られながら、一行はエルフの里へと向かう。
エクシスとリシェルは同じ馬車で同乗しているものの、馬車に乗ってから一言も口を開いていない。
「……エクシス様」
「……はい?」
唐突にリシェルに名を呼ばれエクシスはリシェルの顔を見つめた。
その表情は……逆行前に執務を行なっていた時と変わらない。
10歳の少女にしてはかなり大人びて見える。
「ロゼルトは一体どのような計画を建てているのでしょうか?」
「何の事でしょうか」
エクシスが問えば
「ロゼルトが自らを犠牲にしようとしているのはわかっています。
聖女になり魔族を倒せばいいとロゼルトは言っていましたが……。
文献にははっきりと記載はありませんでしたが、神話や伝承を総合的に考えれば魔族を殺せばロゼルトも死ぬはずです。
彼がそんなことに気づいていないわけがない。
元からロゼルトは死ぬつもりなのでしょう?
そして、その計画は貴方が主導で実行されている。
調べはついています」
リシェルの言葉に、エクシスは微笑むのだった。
■□■
恐らくリシェルの言葉はハッタリだろう。
いくらリシェルがマルクやジャミルという実働できる人員を抱えていたとしても。
エクシスの「聖女の使徒」は暗殺ギルドごときが出し抜ける部隊ではい。
聖女のためだけに魔力の高い者達を特別な訓練をした特別部隊だ。
魔術で身を隠すことも気配を隠すこともできる。
エルフなどには後れをとることはあるかもしれないが人間相手なら彼らの右にでる者はいないだろう。
常にエクシスとロゼルトに聖女の使徒は控えているので盗み聞きなどは不可能だ。
それでも。
相変わらずの読みの良さに嬉しくもある。
心情としては彼女に教えるべきではない。
だがこれからリシェルはエルフの里で聖女の力を手に入れる。
彼女は神殿の神官ですら凌駕する力を手に入れるのだ。
力を手に入れた彼女がその力の使い方を覚え独自で行動しようと動き出した場合誰も止められない。
エクシスですら敵わないだろう。
ロゼルトの話では暗殺者ギルドに乗り込むほどの度胸の持ち主なのだから。
事情を下手に隠せば逆に彼女がエクシスの手に負えない危険に飛び込む場合がある。
何よりエクシスには前世でリシェルを守れなかった後ろめたさがあった。
リシェルもそれがわかったうえで見え透いたハッタリで揺さぶってきたのだろう。
ここは事情を全て話し信用してもらったほうが得策だろう。
「わかりました。全てお話しましょう」
言ってエクシスは語りだすのだった。








