46話 婚約の儀
「リシェル・ラル・ラムディティア。
貴方はここにいるロゼルト・エル・カーシェントを
病めるときも、健やかなる時も。
富める時も、貧しき時も、
婚約者として愛し、敬い、
慈しむ事を誓いますか?」
小さな教会でエクシスがかつて初代聖女ソニアが伝えたとされる誓いの言葉を述べた。
リシェルの手には、ロゼルトに貰った誓いの指輪が輝いている。
「はい、誓います」
ロゼルトの顔を見ながらリシェルは微笑んだ。
婚約の儀は本当に身内の者だけで行われた。
ロゼルトの義両親にグエンとエクシス、そしてリシェルとロゼルトの6人だけだ。
互いに指輪を交換し、誓いの言葉をかわす。
本当に形式的な儀式だけで、ごく小規模な婚約の儀式。
それでもリシェルは幸せだった。
ロゼルトにとってはリシェルを守るための偽装婚約だったとしても。
リシェルにとっては大事な大事な婚約の儀。
大事な事をたくさん教えてくれて。
勇気をもって接することも。
現実から目を逸らしていた事実も。
彼がいたから受け止められた。
ジャミルが心配するように、今はまだ自分はロゼルトに依存しているだけなのかもしれない。
彼の優しさに自分は甘えているだけなのだと思う。
それでも、最初が依存でも。
これから共に歩めるように努力すればいい。
彼と対等に渡り合おうとするのは優秀な彼に失礼だ。
マルクの言うとおり、自分はまだまだ子供で。
出来ない事ばかりだけれど。
これから頑張ればきっと彼の隣を歩くことくらいはできるはず。
だから、絶対ロゼルトが助かる手段を見つけてみせる。
二人で歩める未来を諦めない。
全てに絶望して諦めてしまい後悔した過去を繰り返さない。
そのために一時的に別れる事になってしまうけれど。
不安で押しつぶされそうになったら今日この日を思い出そう。
一緒に未来を誓い合った今日この日を。
「誓いのキスを」
エクシスの言葉に、ロゼルトが微笑んで、リシェルの額にキスを落とす。
それが嬉しくてつい顔が赤くなるけれど。
リシェルも自分にあわせてしゃがんでくれたロゼルトの額にキスを落とした。
「本当に俺でいいのか?」
見つめ合ってロゼルトが不安そうに聞いてくるのでリシェルはそのまま抱きついた。
「私はもう貴方に気持ちを伝えているつもりです」
リシェルがちょっと拗ねた風に言えば
「い、いや、そうだけどさ。
なんつーか。一応確認を」
「もちろん大好きです。
………ロゼルトの気持ちはどうなのでしょう?」
抱きついたまま顔が見えない位置で聞くリシェル。
流石に顔をあわせた状態では恥ずかしくて聞けなかった。
すると背中にロゼルトが手を乗せて
「うん。俺も好きだよ。
初めて会った時からずっと」
言って微笑む。
その言葉が嬉しくて。
リシェルはロゼルトにさらに強く抱きついた。
どうかこのぬくもりがずっと失われませんようにーーと。








