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45話 ビショップ(エクシス視点)

45話 ビショップ(エクシス視点)


「貴方を恨むのは筋違いなのはわかっています。

 けれど――貴方さえ、貴方さえいなければ……私はフランツと結ばれることができたのにっ!!」


 逆行前。

 王子の理不尽な暴力の治療の後、泣き崩れた18歳のリシェルに、自分は何も声をかけられなかった。

 彼女が生前、たった一度だけエクシスを責めた事がある。

 それがその言葉だったのだ。

 自分が不用意に神託を身内のものに告げたせいで、リシェルは王子の婚約者にさせられてしまった。

 これでリシェルが聖女として正式に力が使えたのなら、そしてリシェル本人がガルシャ王子との婚約解消を望めば、神殿の権限で解放することができただろう。


 

 だがリシェルはいつまでたっても聖女の力を使うことが出来なかった。


 そのため神託を告げたエクシスもまたその力を疑われ、大神官としての権威が失墜していった。

 

 そしてマリアが現れたのが決定的だった。


 エクシスは歴史上はじめて神託を読み違えた大神官として、その任を解かれてしまう。

 それを期にエクシスと対立していた神官が大神官として就任し、エクシスは閑職へと追いやられた。


 それでも、彼はリシェルが聖女だと信じていた。

 だからリシェル専属の回復師になったのだが……


 そこで初めて彼はリシェルが酷い境遇だということを知った。

 望まぬ婚約をさせられ、14歳から16歳までほぼ監禁状態で籠の中の鳥だったのだ。

 彼女を調べさせた神官からは、そのような報告は一度も上がってこなかったのに。

 王子との婚約を受け入れ幸せにやっているのだと報告を受けていたのだ。


 恐らくエクシスと対立していた神官ラクセルがその情報を握りつぶしていたのだろう。

 リシェルが本当の聖女だった場合、リシェルが不幸な身の上にあったのに保護もなにもしなかったとエクシスの責任を問うために。


 聖女の神託を告げてからリシェルとは何度か面会していた。

 リシェルは優雅に微笑むばかりであまり自分のことを話す子ではなかったため、エクシスは彼女の境遇に気づけなかった。


 恨まれるのは当然の事だ。

 救うチャンスは何度もあったのに、自分はリシェルの境遇に気づいてやれなかったのだ。

 そしてその不遇の状態を見逃してしまったのは、くだらぬ神殿内の争いのせいだったのだから。


 偽聖女と認定されるまで3年もあった。

 その間に神殿の保護下に入れていれば、彼女はあのような不幸な運命になることはなかったのである。


 逆行前の自分はあまりにも無能だった。

 前任の大神官様に気に入られ神殿内で悪意から守られ育ったエクシスはあまりにも敵意に鈍感すぎたのだ。


 二度と同じ過ちは繰り返さない。

 聖女を貶めたガルシャとマリアに安らぎのない死を。

 聖女であるリシェルの境遇を自分の私利私欲のためだけに握りつぶした神官ラクセルに永遠の苦しみを。


 そして聖女リシェルに今世でこそ幸せな未来を。



 逆行前の記憶を思い出した2年前。

 エクシスがまずしたことは徹底的な敵の排除。

 逆行前に自分を蹴落とした派閥の人間の不正を前世の知識で全てあばき、役職を全て自分の息のかかったものにすげ替えた。

 汚い手段を使ってでも敵は徹底的に排除し、今世ではエクシスに逆らう者は誰もいない。

 そして敵を全部排除してやっと、大神官へと就任した。


 あとは聖女リシェルに接触し今から保護しようと思った矢先。

 先に記憶を思い出していたロゼルトの報告で驚いた。


 リシェルもまた過去の記憶を所持している。


 と。


 逆行後。またこうして彼女と再会を果たした。

 

 自分が力を使えなかったから。

 自分が逃げ出したから。

 貴方に迷惑をかけてしまったと震えながら泣く少女にエクシスは誓う。


 今度こそ貴方を守り抜きましょう。

 この命にかえて――。

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