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44話 再会

「本当に大丈夫か?」


「はい」


 ロゼルトに手をつながれた状態でリシェルは頷いた。

 あれから、婚約の儀の前に一度エクシスに会おうということになった。

 今はロゼルトが住んでいる屋敷に移動している。


 エクシス自身に恨みはない。

 過去間違った神託を下したと思い込んで恨んだ事はあったが、リシェルは本当に聖女だったのだから、濡れ衣でしかなかった。

 恨むべきはリシェルの力を封じたリンゼの方で、エクシスはむしろ被害者なのだ。


 謝らないと。


 リシェルはグエンから貰ったペンダントの魔道具を握りしめる。

 心を落ち着かせる効果のある魔道具。

 気休め程度にしかならないと言われたが、父からもらった大事な魔道具だから。

 これがあるだけで気持ちは違う。


 エクシスとの思い出はつらい事が多すぎて。

 彼自身に恨みはなくてもどうしても身体が震えてしまう。

 彼と会うときは……いつも理不尽に王子に暴力を受け、それを治療してもらうときだったためどうしても過去と切り離せない。


「大丈夫。エクシス様ならリシェルのその症状も治せる。

 そのための魔道具も用意してもらった。

 だから最初だけ我慢してくれ」


 そう言ってロゼルトが手を握ってくれた。

 そして思いついたように「あ、そうだ」というと


「リシェルちょっと手のひらを見せてくれ」


「手のひら?」


 そう言ってリシェルがロゼルトに手のひらを見せれば


「これはうちの地方に伝わるおまじないなんだ。

 何でも初代聖女様が広めたおまじないらしい」


「それはどのようなものでしょうか?」


 初代聖女の言葉にリシェルは瞳を輝かせる。

 もともと神話好きで本を読み漁っていたがそのようなおまじないは見たことも聞いたこともない。


「こうやって……棒を二本かいて」


 と、リシェルの手のひらを指でなぞり


「最後に飲み込むんだ」


 と、ロゼルトが手に書いた棒を飲み込むような仕草をしてみせる。


「この書いた棒は何の意味があるのでしょう?」


「何でも人って意味らしいぞ」


「この棒二本がですか?」


「ああ、まぁ伝承なんでどこまで本当かわからないけどな」


「凄いです。聞いた事がありません。

 ロゼルトが住んでいた地域は聖女とゆかり深い土地ですものね。

 そういうおまじない的ななにかで残っているのかもしれません。

 後でもっと調べてみます」


 と、リシェルはロゼルトに書いてもらったほうの手を嬉しそうに見ていた。


「ほら、飲み込まなきゃ」


「ダメです」


「え?」


「ロゼルトに書いてもらった文字ですから。

 大事にとっておきます」


 言ってリシェルは顔を赤らめて嬉しそうににっこり微笑んだ。


 うん。やばい。可愛い。

 

 ロゼルトは思わず顔を背ける。

 これが前世の年齢でこの関係だったらもっと喜ばしい事だったんだけどな。

 と、ロゼルトは未だ子供の身体なのを恨めしく思う。


 小さい女の子の大好き!がいかにあてにならないかはロゼルトはよく知っていた。


 ロゼルトの妹もよく義父にお父さん大好きとついてまわっていたのに年頃になったとたん、寄り付きもしなくなったのだ。

 あの時ほど女心はわからないと思ったことはない。


 今好かれてるからって浮かれちゃだめだよな。


 ロゼルトは心の中でため息をつくのだった。



 ■□■


「お久しぶりです。聖女様」


 ロゼルトの別荘の一室に入り、そこで待っていたエクシスが深々とリシェルに神官特有の挨拶のポーズをとった。

 リシェルの記憶ではエクシスはもっとやつれて老けていたように思う。

 だが、今目の前にいるのは精悍な顔つきの茶髪の大神官の風格のある男性だった。

 8年後あのように老けてしまうのか不思議なほどに今の彼は歳相応なのだ。

 それだけ――エクシスも心労が多かったのかもしれない。


 何も間違っていなかったのに。

 リシェルが聖女の力を使えなかったために、神託を読み違えたと罰せられ、小国の一令嬢のお付きにまで、その身分を堕とされた。

 それでも最後までリシェルを聖女と信じてくれて助けようとしてくれた。


 それなのに、自分は裏切った。

 生きるのが辛いと死を選んでしまった。


 全てから逃げ出す事しか考えてなかったのだ。

 あの時ロゼルトの手を握っていれば、逃げないでいれば、世界は滅びに向かわないですんだのに。


「……大丈夫か?」


 心配そうに顔を覗き込んでくるロゼルトをみて、リシェルははじめて自分が泣いていた事を自覚する。


「やはり無理でしたか。今日はやめて……」


 エクシスが去ろうとするのを、リシェルは彼に抱きついた。


「リシェル……さま?」


「ごめんなさい。私のせいです。

 私が力を使えなかったばかりに………。

 ごめんなさい。ごめんなさいっ」


 今までの何かが一気にこみ上げてきて。

 リシェルはただそのまま泣き続けるのだった。



誤字脱字報告&ポイント&ブクマありがとうございました!

今週中に完結予定です(*´∀`*)

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