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42話 婚約

「お嬢様がエルフの里に行くのを了承した。

 ジャミル悪いが、エルフの里へも同行してやってほしい」


 そうマルクに言われ、ジャミルは驚く。


「いや、それは構わないけどさ。

 神殿の庇護下なうえにエルフの庇護下にもはいるんだろ?

 そこまで見張らなくても大丈夫じゃないか?」



 そう、リシェルに神殿の極秘部隊がついた時点で身に危険がせまるとは思えない。

 その上でさらにエルフの庇護下にはいるのだ。

 このメンバー相手ではジャミルなど無力に等しい。


「問題は、神殿もエルフもとても信仰深いことです。

 お嬢様はエルフの神殿で聖女の儀式をすませると言っています。

 聖女になったお嬢様に神殿とエルフが意見を言えるかと言うことです」


「あー……なるほどね」


 シークのような狂信者がわらわら増えるだけではお嬢様は誰も止められないってことかとジャミルは理解した。

 もともと一人で暗殺者ギルドに喧嘩を売ってくるような子だ。

 ロゼルトのために無茶をしないとは言い切れない。


「わかった。ついてくよ。

 にしても、マルクもお嬢様に会っていかなくていいのか?」


「はい。これからグーデルモルグに商談がありますから。

 早馬でいかねばなりません」


「ああ。かなり大儲けしたらしいな」


「ええ、来るべき時に備えねばなりませんからね。

 あとは頼みましたよジャミル」


 そう言ってマルクはそのままジャミルに手をふった。

 グエンといろいろ打ち合わせがあったにせよ、それは領土に戻ってもできたはずなのに

 わざわざ領にまで来るとかマルクもそれはそれで狂信者の部類だとジャミルは思うが黙っておく。


 ま、愛されてるよな。お嬢様は。


 そう言ってジャミルは頭の上で腕を組みながら歩き出すのだった。


 ■□■


「リシェル。

 エルフの里に行く前に了承を得たい事がある」


 そう言って父の書斎に呼び出されたのはあれから三日後のことだった。


「了承ですか?」


「ああ、お前ももう10歳だ。

 そろそろ婚約者がいなければいけない年齢だ。

 だがこれからエルフの里に行くとなると、舞踏会などに参加はできない。

 婚約者もいない状態で舞踏会や晩餐会に出席しないのではあらぬ噂を招く。

 それ故、ロゼルトと……」


「はい!ロゼルトと婚約します!!」


 グエンの言葉にリシェルが食い気味に言えば


「……そうか」


 グエンが何とも言えない顔をした。

 最近はグエンとも大分打ち解けて話すようにはなったが……何のためらいもなく婚約を決めた娘に、少しばかり父親としての嫉妬を覚える。

 

 だが、顔を赤らめて嬉しそうにするリシェルを観て同時に複雑な気分になった。

 ロゼルトは将来死ぬ未来が待っている。

 グエンもすでにロゼルト側につき、これからの展望を聞いたがロゼルトの死は避けられないだろう。


 リシェルがロゼルトに好意をもっていることを知っているだけあって、やりきれない気持ちになるのだった。



 ■□■



「お嬢様随分嬉しそうですね」


 自室でニコニコと刺繍をしているリシェルにジャミルが聞けば


「はい!ロゼルトとの婚約が決まりました!

 いまロゼルトにあげるマントに刺繍をしている所です!」


 にっこり微笑み顔を赤らめる。


「おーそりゃおめでとうございます」


 と、ジャミルは言うが、恐らく頭のいいお嬢様ならロゼルトの話を聞けば彼が死ぬ気なのは察しているだろう。

 それでも婚約を無邪気に喜ぶさまは、哀れに感じられなくもない。


 それが表情にでてしまったのだろうか


「ジャミル」


「はい?」


「私は諦めてませんから。

 ロゼルトは絶対死なせません」


 そう言うリシェルの顔は……最初にジャミルの所に乗り込んで来た時と同じで。

 

「ええ、そうですね」


 と、ジャミルも微笑んだ。

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