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35話 誓い

「うん。大分熱も引いたな」


 リシェルの額に手を当てて、ロゼルトが呟いた。

 あれから三日間。ロゼルトは毎日お見舞いにきてくれた。

 熱が引くまでは話はおあずけだと話してはくれないが……リシェルの父のグエンとは何か話しこんでいたので恐らく過去のことを話したのだろう。

 ジャミルにお嬢様の知っている事はどうするんだ?と聞かれたのでマルクの知っている範囲でマルクが大丈夫と判断する範囲だけロゼルト達に話すのならと了承してある。

 本当ならリシェル本人が話すべきなのだろうけれど。

 今は過去を思い出したくもなかった。

 目の前でリンゼが殺された事が復讐しようと誓った理由の中でもっとも大きな理由だったのは否定できない。

 それだけリシェルには大事な人だった。

 その根底が覆されてしまった。


 復讐しようとするその意志すら揺らぎつつある。


 過去で父グエンが自分の敵をうつために国を裏切った。


 その話も本当ならまっ先に聞きたいはずなのに。


 聞いてしまえば向き合わないといけないと思うと怖くてできない。

 リシェルの記憶の中のグエンはいつも厳しくて優しい言葉をかけてくれた事もなかったように思う。


 だけれどそれが薬のせいで思い込んでいたとしたら?


 ジャミルの話ではこの薬は思い込みが激しくなる薬だといっていた。

 父の事を怖い人物と思い込んでいたのかもしれない。



「大丈夫か?」


 ふいにロゼルトに声をかけられてリシェルは意識を戻した。


「あ、はい。ごめんなさい」


「うん。まぁ薬が効いてるから無理するなよ。

 今日もちゃんと休んどけ」


「……はい」


「ところでリシェル」


「はい?」


「エクシス様は憶えているか?」


「はい」


 リシェルに神託をくだし、その神託が間違っていたとして罪に問われた大神官。

 リシェルは一時期彼を恨んでいたりもした。

 もしロゼルトのリシェルが聖女だという話が本当なら……彼に謝らなければいけないだろう。

 神託は間違いではなかったのだから。


「本当は会わせたいのはエクシス様だったんだ。

 聖女についてはエクシス様の方が詳しいからな。

 ただ、グエン卿から聞いたんだが、リシェルは王宮についたとたん過呼吸をおこしたんだろ?」


「……はい」


 ロゼルトに言われて思い出す。

 王宮についたとたん、足を切断された時の光景が目に浮かび、呼吸すらできなかった。

 リシェルが自分で思っているより――心の傷は深いのかもしれない。


「それを聞いてな。

 いきなり会わせて過呼吸をおこしてもあれだと思ってグエン卿と話したあと帰ってもらった。

 何がきっかけになるかわからないからな。

 もう少し落ち着いてからにしよう」


「はい。そうですね。

 私もお会いして謝りたいです。

 宜しくお伝えください」


 リシェルが言えばロゼルトが目で微笑んで


「きっと喜ぶぞ。

 ずっとお前に謝りたいって言ってたからな。


 じゃあ、また明日くる。

 今日はゆっくりや……」


 そう言いかけて、ロゼルトはリシェルが自分の服をつかんでいることに気づいた。


「リシェル?」


 ガクガクと震えているリシェルを観てロゼルトはしまったという顔をした。

 過呼吸をおこしたことを思い出すだけでもダメだったのだろうか。

 あまりそういった精神的病には知識がなくうかつな事を言ってしまった事を後悔する。


「ごめん、軽率だった」


「いえ、大丈夫です。

 でも……もう少しだけ居てもらってもいいですか?」


 無理に微笑むリシェルにロゼルトは手を握り返す。


「ああ、そうだな。

 リシェルがよく寝られるまで側にいるよ」


 そう言うロゼルトの言葉が嬉しくて、リシェルは微笑むのだった。



 ■□■


「……では。まだお話しにならないと」


 あれからリシェルを寝かしつかせ自分の館で待機していたエクシスに問われロゼルトは頷いた。

 グエンにも未来を説明しようと思っていたためエクシスにもこの地に来てもらっていたのだ。

 10歳の子供の自分が説明しても信じない。

 だが大神官という役職の彼の話なら信じるだろうと。

 そのため三日の猶予が必要だった。

 


「どうもメイドの件が堪えたらしくてな。

 気弱になってるっていうか」


 前までは威嚇してくる猟犬のようだったのに。

 リンゼの件があってから怯えた子犬が甘えるようになってしまっている。

 それだけロゼルトに心を許してくれたと見るべきなのか。

 それともそれだけ心が弱ってるととるべきなのか。


 判断がつかなくてロゼルトはため息をついた。



「ああ、薬の件ですか。

 盲点でした。

 まさかあのメイドのお茶にそのような効果があったとは」


「エクシス様もそういえば飲んでたんだっけか」


「……はい。まさか聖女のお付きの侍女がそのような毒物を盛っているとは知りませんでした」


「なるほど。

 前世であんたが無能だったのはそのせいかもな」


 そう言うロゼルトの言葉にエクシスは首を横に振った。

 

「……前世で聖女様を守れなかった事に言い訳をするつもりはありません。

 ですから、今世ではどんな手を使ってでもお守りしましょう。


 たとえ神の教えに背こうとも」


 エクシスは手で握り拳をつくるのだった。

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