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33話 意見の尊重

「はぁ?意見を尊重しろだ?」


 突然部屋に現れたグエンをロゼルトは睨みつけた。

 そこには一体いつ来たのか、リシェルの父グエンが立っていたのだ。


「ロゼルトやめ……」


 父親と今にも言い争いになりそうなロゼルトにリシェルが止めにはいるが。


「ふざけんなよ!!!

 熱で倒れて動けない子供を放っておいて!

 それが意見を尊重してるって言うのかよ!!」


 叫ぶロゼルトにグエンはまるで意にかいした風もなく


「それが、我が家のやり方だ。

 他所の者が口をだすのは……」


「そうやってあんたは逃げて、どれだけ後悔してたんだよ」


 言いかけたグエンの言葉をロゼルトは遮った。

 父に今にも食いかかりそうなロゼルトの手をやめてと訴えるかのようにリシェルが掴むがロゼルトは言葉をとめない。


「……何の話だ」


「意見を尊重している?

 はっ、意見が対立して嫌われるのが怖いだけだろう?

 尊重してるんじゃない、逃げてるだけだ。娘と向き合うのを。

 

 そのせいであんたどれだけ後悔した?

 娘を惨たらしく殺されて、首を惨めに野ざらしにされて!!!

 何もできなかった自分に発狂してやっと自分が娘と向き合ってなかったと気づいて後悔しても遅いんだ!!!」


 そう言うロゼルトの言葉は必死で。

 リシェルは思わずロゼルトを見上げた。

 その横顔は何故か泣いていて。

 何故彼は私のためにここまで怒ってくれるのだろうと不思議に思う。


「……一体何を言っている」


 グエンが眉をひそめるが


「説明してやるよ。

 だがその前にリシェル。お前はちゃんと医者に診てもらえ」


 そう言ってロゼルトが無理矢理リシェルをベッドに寝かしつけた。


「ロゼルト……お父様にはまだ話すべきじゃ……」


「お前もだリシェル。

 逃げるな。ちゃんと話し合え」


「え?」


「お前も言いたいことはちゃんと言え。

 怖がるな。

 お前はちゃんと愛されてた。

 それは俺が保障してやる。」


「……でも」


「でもじゃない。お前の父親は生きてたんだよ。

 あの戦いで。負傷して匿われていて出てこられなかっただけだ。

 傷が癒えやっと国に戻った時にはお前は殺されていた。

 そして俺たち側についた。

 お前の敵をとるために」


「お父様が?本当に?」


 そう言ってグエンを見れば、グエンは何と言っていいのかわからない様子でこちらを見ている。


「そうだ。アンタ達に足りないのはお互い向き合う勇気だ」


 そう言って、リシェルとグエンを交互に見比べる。

 しばらく無言が続いたあと。


「……わかった。話を聞こう。

 だがその前にリシェル。ちゃんと医者に診てもらいなさい」


 と、グエンがリシェルの頭を撫でる。


「……はい」


 リシェルもそのま何も言えず頷くのだった。


 □■□


「ほら、ちゃんと薬を飲め」


 そう言ってロゼルトが水を差し出した。

 あれから、グエンはロゼルトに娘を任せると出ていき、シークも天蓋の外で控えている。

 ジャミルはリンゼを置いてきたのか一人でふらりと現れこの熱に効く薬だと薬を置いていった。

 いまリシェルとロゼルトは二人きりだ。


「ありがとうございます」

 

 リシェルが水を受け取りながら微笑んだ。

 まだ心無しか顔が赤い。


「大丈夫か?飲めるか?俺が口に入れようか?」

 

 粉状の薬を紙に入れたまま聞くロゼルトがおかしくて


「大丈夫です。子供じゃないんですから」


 ベッドで大きな枕に身を任せたまま言うリシェル。


「さっきまでふてくされてたくせに。まだまだ子供だろ」


 と、ロゼルトが口を尖らせた。


「……ロゼルトは意地悪です」


 リシェルはロゼルトが出してくれた薬を受け取りながらいう。

 

「それに同い年のはずですよ。子供扱いは酷いです」


「俺は28歳まで生きたからな。

 お前より年上だ」


 ふふんと胸をはるロゼルト。


「28歳……なぜロゼルトは死んだのですか?」


「死んでなんてないさ。

 巻き戻ったんだその時点で」


「それは何故でしょう」


「熱が下がるまで教えてやらん。

 そんな状態で放置してた罰だ。

 さっさと治せよ」


「……はい」


 そう言って出された粉状の薬を飲もうとして少し戸惑う。


「……どうした?」


「……いえ」


 ロゼルトにはお茶に毒がはいっていたのはまだ説明していない。

 説明するにしても父が同席しているときの方がいいだろう。

 リシェルも実際詳しいことはよくわからないのだ。


「ジャミルも私も鑑定した薬ですから。

 大丈夫ですよ」


 天蓋の外にいたシークの言葉にリシェルは頷いた。

 ロゼルトは一瞬目を細めたがそれ以上は聞いてこなかった。


「ほら、はやく寝ておけよ。

 また明日くるから」


「……はい。あのロゼルト」


「うん?」


「その……ありがとうございます」


 そう言って顔を真っ赤にして微笑むリシェルに


「ああ、友達だからな。当然だろ?」

 

 と、ロゼルトも微笑むのだった。

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