31話 面会謝絶
「会いたくない?」
リシェルの滞在する館を訪ねたロゼルトにシークが告げる。
あれから三日後。
約束通りロゼルトがリシェルの元に来たのだが、リシェルに会いたくないと拒絶された。
いつもなら喜んで迎えにくるリシェルが部屋から出てきもしないのだ。
「一体何があった?」
ロゼルトがシークに詰め寄るがシークが頭を横に振る。
「主の許可なく私から話す事はできません」
「……わかった俺が直接聞く」
そう言ってロゼルトはシークをどけた。
いつも遊びにきているので部屋の位置は憶えている。
そのままズカズカと屋敷の中を進んでいく。
リシェルが自分との面会を断るなんてありえない。
あれほど知りたがっていた逆行の真実を話す約束をしているのに会いたくないなどと言うはずがないのだ。
シークがやすやすとロゼルトを通したところを見ると、ロゼルトに問題があったわけではない。
ロゼルトに問題があったのなら、シークの事なら貴族に逆らってでも行く手を阻んだはずだ。
「リシェル!!オレだロゼルトだ!!」
扉の前でこんこんと部屋をノックして、リシェルを呼ぶが、返事もない。
リシェルは極端に振り切れるところがある。
あれだけ張り切っていたのが急に会いたくもないと言い出したのだ。
余程の事があったのだろう。
「返事をしろ!!!
返事をしないなら無理矢理入るぞ!!!!」
大声で叫べば。
「来ないでください。
もう真実は知りたくもありません。
資金は……援助させていただきますが、私はもう関わりません。
お帰りください」
弱々しい声がかえってくる。
「何があった?」
ロゼルトが聞けばリシェルからの返事はない。
「リシェル、何があったのかだけでも教えてくれ」
「貴方には関係ありません」
「あのなぁ。関係ないとかあるわけないだろ。
大事な友達が困ってるのに放っておけるほど薄情だと思ってるのかお前は」
何時もの口調で呼びかけるがリシェルからの返事はない。
けれど先程の声の感じからすれば扉の前にはいるのだろう。
少なからず応えてくれる気はあるはずだ。
「……です」
リシェルが扉越しに何か呟いた。
「うん?」
声が小さすぎて聞こえずに思わず聞き返す。
けれど扉の向こうから返事はなく
「わかった。じゃあ話してくれるまでここで待つ」
と、ボスンと扉に寄りかかった。
しばらく続く沈黙。
扉の前に座り込んでもシークもロゼルトに注意はしてこなかった。
主の命令は部屋に入れないこと。
その言いつけは守っているのだから口をだすべきことではないだろうと、隣に立つ。
ここ1ヶ月の間に心を開いたロゼルトなら彼女を慰める事ができるのではないかという期待もあった。
リシェルはあれから部屋から出てくる気配がない。
本来なら毒の影響を見ていなければいけないはずなのに。
誰一人部屋に入れようとはしないのだ。
どれくらいたっただろう。
時折リシェルのすすり泣く声が聞こえ、ロゼルトがそれを慰めるが、扉は一向に開く気配はない。
朝に来たはずなのに日はとっくに暮れかけていた。
泣きつかれたのかリシェルから反応がなくなりロゼルトは悩む。
事情がわからないゆえ、慰めようもないし、かといって部屋に乗り込むのはさすがにどうか。
まったくこの三日で一体何があったんだよ。
ロゼルトは苛立ちながら扉を見つめるのだった。











