25話 思い込み
「ロゼルトはきっと私を試しているのでしょう」
クシャラーナ領の別荘に戻り、シークと二人きりになったリシェルの最初の言葉はそれだった。
あの後、二人は一通り祭りを楽しんだあと、また明日と約束し各々の屋敷に戻ったのである。
けれど結局逆行前の出来事については話してはもらえなかったのだが、リシェルはその理由に見当をつけていた。
彼はリシェルを試している。
今日、彼と平民の祭りに参加して学んだ事が多々あった。
自分は平民の楽しみをまったく理解していなかったのだ。
これから平民の支持を得て反乱を起こす予定のロゼルトに、平民の心情をまったく理解していないリシェルが側にいたのでは足手纏いになると考えられたのかもしれない。
これは仲間として迎え入れるか。
それとも距離をおくべきか見極めるための試練。
平民の心を理解できなければ、自分はお飾りで仲間に加えてもらえても、実質的なメンバーには加えてもらえないのだろう。
それでは意味がない。
自分のこの手で。死んでいった者たちへの弔いを。
受けた理不尽な暴力に対する復讐を。
そのために――自分は平民の心を理解しなければいけない。
シークにそう説明すれば
「………。
そうですね。流石お嬢様です」
と、一瞬間があるものの頷いてくれる。
リシェルはその様子に強く頷いた。
「明日も、平民の街を廻る約束になっています。
今日ははやく休もうと思います」
「かしこまりました」
そう言って一礼してシークが天蓋から出ていくのを見守ると、リシェルはそのまま布団にもぐる。
普段歩かないため、慣れない街を歩いたせいで足がジンジンと痛い。
けれどこれくらいでくじけてはダメだ。
そう――彼のテストに合格しなければ、自分は真相も教えてもらえないかもしれない。
彼が言っていた聖女はマリアではなくリシェルだった。
あれはどういう意味なのだろう?
リシェルは思案を巡らせながら……そのまま疲れで寝入ってしまうのだった。
■□■
自分が天蓋から出るなりすぐに寝入ってしまったリシェルを確認し、シークはため息をついた。
このように子供らしい遊びをまったくしたことのなかったリシェルにとってロゼルトとの体験はとても貴重なものだったのだろう。
遊び疲れて寝てしまうのは歳相応だともいえる。
以前マルクに「お嬢様は頭のいい人間の事はある程度わかるでしょう。ですが、頭の悪いものの考えが全く理解できていない。
ジャミルが先読みするタイプの人間だったからよかったものの、そうでなかった場合、契約が成立していた可能性は低い。
沸点の低い者が相手だった場合殺されていたでしょう。
もう二度とあのような無茶はさせないでください」と、言われた意味が今になってわかった。
お嬢様は……かなりずれている。
自分がリシェルを過大評価していたことに気づき、シークは考えを改めるのだった。








