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16話 予想外

「紅蓮の炎」の一部を取り込んだ。


 そうリシェルがマルクに相談してきたのはマルクの館でのドレス選びの時だった。

 彼らの家族が安全に住める土地を手配して欲しいと頼まれたのだ。

 

「まさか、あの暗殺者集団をですか?」


「はい。前世の記憶で離反者がいることは知っていましたから」


 そう言って少女はお茶を飲む。


「いえ、しかし。お嬢様がなぜそこまでの情報を?」


「紅蓮の炎の残党を捕えたあとの資料を父の許可を得て読ませていただきました。

 領地で起きた事ですから。領主の娘として知っておくべきだと思いましたので」


「……それでその内容を憶えていたと?」


「……はい。何かおかしかったでしょうか?」


 本当に訳が分からない様子で聞くリシェルにマルクはため息をついた。

 父親に助けを求めるだろうと、予想していたマルクにとってはリシェルの行動は予想外だ。

 まさか危険をおかしてまで暗殺者集団と取引をしてくるとは。

 マルクもリシェルが依頼できそうな冒険者ギルドなどには手をまわし、リシェルの依頼があればマルクに連絡が行くことになっていた。


 だが、リシェルは正規ルートで頼めるようなギルドでは人を雇うこともなく、いきなり暗殺者ギルドへ交渉にのりだした。


 想像以上に優秀で、そして思っていた以上に危うい。


 過小評価しすぎていた。

 マルクは軽くため息をつく。


 マルクに渡された資料を見た時点で、彼女の異常なまでの記憶力は把握していたが、これほどだとは思っていなかった。

 経済など興味がある分野で発揮されるタイプの記憶力と勝手に推測していたが考えを改めるべきだろう。


 記憶と行動力があり――それでいて精神はまだ18歳の少女だ。

 しかも復讐に囚われて正常さを失っている危うい状態。


 自分の無力さに気づいて父親に助けを求めるのを期待していたが、それもうまくいかないらしい。

 恐らく強固にマルクが止める姿勢を見せれば、彼女は別の手段を模索する。

 マルクが手をだすのは難しくなるだろう。

 だったら手の内で見守った方が得策と考えてはいたが……予想以上に行動力がある。



 それに――死ぬリスクをおかしても暗殺者と直接交渉を選び、父親に助けを求めないという事は――

 それだけリシェルの母親の件は、リシェルにとっては許せない事だったのだろうと、改めて親子の溝の深さを知る。

 下手にリシェルの父グエンに真実を告げて行動を制限しようとすれば、家を飛び出しかねない。


 監視をつけた方がよさそうだ――と、マルクはため息をついた。


 一歩間違えば既にもう死んでいてもおかしくない事を少女がしているのだから。


 マルクはチラリとシークを見る。

 彼女の専属護衛騎士だが……彼が止める事がなかったということは、彼に期待するのは無理だろう。

 従順な家来のようだ。もっと意見を出来る者を側に置いた方がいい。


「わかりました。

 その暗殺者ギルドとのやり取りはあとはお任せください。

 ですが次からそのような行動に出るときは、私に相談してからにしてください」


 そう言ってマルクは微笑むのだった。

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