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15話 ポーン(ジャミル視点)

 未来を体験してきた。


 目の前で淡々と語るリシェルの逆行前の話にそんな馬鹿げた話があるかと内心イラつきもした。だが少女の出す暗殺者ギルドの情報は全てこちらしか知らぬ真実で。

 これから予定して実行しようと計画段階の話すら言い当てた。


 そして、裏切り者ダラスを見抜いた。


 正直な話、ジャミルもまさか彼が裏切っているとは思いもよらなかった。

 主要メンバーの一人だったのだから。


 それでも少女の情報をもとにすれば、間違いはなく。

 何より話を聞いていたはずのダラスが逃亡を試みていたと他のメンバーに知らされ確信した。


 彼は裏切っていると。

 自白剤を飲ませればリシェルの言うとおりで。

 彼女の前世を体験してきたという話は嘘だとは言いきれない。


 悔しい話だが……むしろ真実と見たほうがいいだろう。


 それにしても――。


 ジャミルは少女が座っていたはずの席を見る。


 少女が話す未来は出来の悪い夢物語のようで、今ひとつ信憑性にかけていた。

 まるで子供が考えた出来の悪い絵巻物の頭の悪い国王をそのまま体現したかのような話なのだ。


 だがそれゆえに真実なのではないかとも思う。


「あんたの話が本当なら国に喧嘩を売ることになる。

 そんな無謀な賭けに俺たちに力をかせと?」


 少女に問えばにっこり笑い


「ここで死に絶える未来よりはいいはずですが?」


「わからないな。

 あんたの話が本当なら、さっさと他国に逃げるのが正解だ。

 国相手に本気で戦えると思っているのか?」


 ジャミルの言葉に少女は微笑みながら


「戦えるかではないのです。

 戦わなければいけない。だから戦います。

 私は復讐を誓いました。

 すべてを諦めて目をそらし聞こえないふりをして私は後悔しました。

 もう一度悔いに満ちた人生を繰り返すくらいなら私は死を選びましょう。

 これは誰のためでもない。

 私のための復讐です」


 と、言い切る少女の顔は。

 10代の少女とは思えぬほど憂いを秘めていて。

 彼女はどれだけ悲惨な人生をおくってきたのか窺い知れた。


 むろん暗殺者ギルドに所属していたジャミルにとってはリシェル程度の虐待話などよく聞く話だ。

 別段同情するほどの話ではない。


 それなのに。


 なんとなく放っておけないと感じるのは、きっとあの子の力なのだろうとジャミルは思う。


 まぁ、リシェルがいなければダラスの密告で自分たちは全員死んでいたのだろう。


 恩義は受けたのだ。

 それを返すのはかつての主の教えに背く事ではない。


 たまには正義の味方側もいいかもしれないな。


 ジャミルは大きくため息をつき、どうやってギルド員全員を説得しようか想いを巡らせるのだった。

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