表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/67

0話 プロローグ

 こんなはずじゃなかった。


 マリアは心の中で呟いた。

 一度目で失敗したからこそ、二度目の人生は――成功させるはずだったのに。


「リシェル・ラル・ラムディティア。

 お前のした数々の悪行。

 知らぬとは言わせない!!」


 王宮の舞踏会会場で王子がバサリと書類を広げた。


「これがその証拠。

 犯罪者と結婚することなどできぬ!!

 ――婚約破棄だ!!!」

 

 貴族が集まる王族主催の舞踏会で。

 ガルシャ王子の声が響く。


 そう、用意していたのは。

 リシェルが領地に支給された国の資金を流用したという濡れ衣の資料。

 もちろんこれはマリアが仕組んだもので、リシェルが地位を剥奪されたあと、マリアがその嘘を見抜いてリシェルに感謝されるという筋書きまである。

 本当の聖女リシェル・ラル・ラムディティアを平民の身分に落とし、自分の意のままに操る。

 それが偽聖女マリア・ファン・レンデーゼの策略だった。

 

 マリアの予定ではここでリシェルは泣き崩れるはずだった。


 だが王子に証拠を突きつけられても、リシェルは平然とその様子を見ている。

 表情一つ変えない。


 銀髪の美しい14歳の少女リシェルはまったく動じないのだ。


 あれ?前世と違う?

 逆行前では泣き崩れたはずだったのに。

 今回は泣かないの?

 王子の隣でマリアが不思議そうに見ていれば


「証拠?

 そのような捏造されたものが証拠だというのか?」


 異論を唱えたのはリシェルの父グエン・ラル・ラムディティア。

 

「な!?

 捏造などと、この期に及んでしらを切る気か!!!」


 ガルシャ王子がグエンに反論すれば


「署名に押されているその印を使用しだしたのは1年前。

 2年前の書類になぜその印が押されているのですか。殿下」


 グエンの問いにガルシャの顔が青くなる。


「そ、それは……」


「証拠というのならそれ相応の精査をしてから、断じるべき。

 このような子供でもわかるような捏造に気づきもしない。

 その上大衆の面前で裁くなど言語道断。


 婚約破棄?


 公爵家と王家との間に交わされた婚約は我が国では血の条約と同じ。

 その条約を一方的に破棄するというのなら、それ即ち宣戦布告!!!

 我領地ラムディティアの威信にかけてその勝負受けてたとう!!!!」


 言ってグエンが剣を抜き、会場にどよめきが走る。


「ち、違うっ!!誰かあれを取り押さえろ!!!!」


 ガルシャの言葉に従い兵士達がグエンを取り押さえようとしたその瞬間。


「「聖女への忠誠を(カルシャシャーン)!!!!」」


 別のところから声が聞こえ、突如舞踏会広場に神官姿の男達が姿を表し、動こうとした兵士達の首元に容赦なく剣をつきつけた。

 その服装は神官達が魔族と闘う神闘服で。

 その胸に刻まれた紋章で彼らの素性はすぐ知れた。


 神殿の暗部を司る。戦闘部隊。「神の従者」


「んな!?」


 王子とマリアが驚きの声をあげれば、会場の扉から一人の男が現れる。

 全ての神官と神殿を総べる長。大神官エクシス。


「たかが弱小国の王子ごときの分際で。

 聖女様と婚約破棄?

 思い違いも甚だしい。

 

 その罪。万死に値します」


 言って、杖をひと振りすれば王子は派手な音をたてて壁に叩きつけられる。


「ただで死ねると思わないでいただきたい。

 味わったことのない苦痛を。

 永遠の苦しみを!!

 死ぬこともできぬ地獄を味わわせてあげましょう!!」


 と、そのままぐりぐり足で踏みつけた。

 その目は神官とは思えぬほど残酷で、その場に居合わせた貴族達に引き気味に距離をとられていた。


「おい、アレどっちが悪役かわからねーな」

「貴方は黙っていてください」


 とエクシスの両隣を歩いていた護衛騎士らしき男二人がぐりぐりと王子を踏みつけている後ろでドン引きしている。


「ど、どういうことだ!?」


 踏まれながらもなんとか王子ガルシャが叫べば、


「簡単な事だ。


 そこにいる少女リシェル・ラル・ラムディティアこそ聖女なのだよ」


 と、今度は金髪の美麗なエルフ達が登場する。

 エルフの里にだけ住まう神に最も近いといわれる種族エルフ。

 彼らが人間の前に姿を現す事はあまりない。

 高位の神官でなければ会えないのだ。


 そしてその後ろには明らかに武装しているであろう竜人達も舞踏会場へ入場してきた。


 急展開に。


 マリアはついていけなかった。


 一体何がどうなっているのだろう。

 婚約破棄されて――リシェルが平民に落とされて――慈悲深いマリアが拾ってあげる予定だったのに。

 なぜこんな展開になっているのか。

 逆行前と全然違う!?


 誰かこの状況を説明してぇぇぇぇぇぇぇ!!!


 マリアは心の中で叫ぶのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

■□■宣伝■□■
★書籍化&漫画化作品★
◆クリックで関連ページへ飛べます◆

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ