ぷろろーぐ 3
『――――――発火場所は、職員室』
「お前ら、職員室周辺を通らずに落ち着いて移動しろ!」
教師がまた叫ぶ、生徒たちが今度こそ立ち上が――
『――職員室、事務室、化学実験室、地学準備室、調理室、美術室、体育館。です』
凍りついた。校舎の全域をカバーしているほどのラインナップだ。
『――速やかに運動場へ避難してください』
「――ッ! これで全部か。お前ら、ちょっと動くのは待ってくれ」
皆神妙な面持ちでこくんとうなずく。
ほかの教室では悲鳴が上がっているようで、かなり騒がしかった。
だが、それを覆い尽くすように叫ぶ。
「……よしわかった。西側非常階段と中央階段、後は遠いが東側の階段から一回降りて図書室まで走ってからそこの階段。その中のどれかでさっさと逃げろッ!!」
何も知らない者がみればただの数年間勤めているだけのおっさんの教師。
しかし、要点を押さえた分かりやすい説明をし、寝ている生徒の授業態度を咎めることもなく、生徒に人気のあった彼だからこそ
「各自、生きろッ!」
こうして、生徒に的確で迅速な指示が出来たのだ。
だが、生徒たちはその言葉を聞かず、全員が同時に姿勢を正した。
「礼」
と、そう委員長が言ったからだ。
「「「「「ありがとうございましたッ!」」」」」
全員がキッチリ頭を下げ、
ほぼ全員が、終わると同時に小走りに教室を後にした。
職員室だけかと思ったか?
残念だったな!
最後大事です。
今回の話に疑問を感じた方は下をご覧下さい。
そうでもない方はこの話は此処で終わりです。
感想欄にて質問をいただいたのでいずれ描写することですがこちらにも書いておきます。
生きろ、と教師が言った理由です。
この学校は単位制で二年生からはクラス内でも別の教室で授業を受けることが多いのです。
そしてそれに伴い数多い単位から受けるものを生徒個人で選ぶ関係で学校の施設が巨大化しています。
複雑化した校舎の中を教師の指導のもと避難するのは渋滞が起こってしまうため、その場その場での生徒の判断に任せ避難するようにしています。
この教師もまた、ざっくりとした説明はしましたが校内アナウンス及びその周辺の文から分かる通り、校内全域に渡って火事が広がっているので、これ以上に生徒の判断に任せなければならないと、そういうことにしております。