一兆編 第五話 ライジングサン
「にしても、お前全然役に立たなかったな」
俺はずっとどこに行っていた小玉を探しだした。
「最初っからそんな役に立てねぇって言っただろ?」
小玉は不貞腐れてどっかから持ってきた本を読んでる。
「てか、その本どっから持ってきたんだよ」
「ん?レッドベアズのアジト、サルでもわかる古代言語ってやつ」
「あ!てめぇ!!勝手に持ち出すなよぉ!!俺のだぞ!?」
どうやらその本の持ち主ってのはトラマルのようだ。
「あ、ごめん。最近なんか流行ってるらしいからさ、異世界言語」
「あ!?一緒にすんなよ!!これは古代言語!!変な造語の混じったあれと一緒にすんな!!」
「あー!!まだ読んでたのに!!」
俺はその本をちらっと横目に見た。古代言語と異世界言語ではどうやら少し違うのか。あれ見る限りじゃフライドポテトはちゃんとフレンチフライって書いてある。和製英語あたりがどうやら異世界言語にあたるみてぇだな。にしても、あれ小学生の英語レベルだぜ?一単語一ページ使う勢いでイラストと文字が書かれている。
「てか小玉よ、読んでたけど理解できたのか?」
「あ!?馬鹿にすんなよ?これでも勉強熱心な方なんだ俺は!!さっきも面白いの見つけたしな、名前によくある太郎ってのはジョンだってな!!」
あ、そう・・・へー、そう言えばそう言う意味になるか。ジョンは英語圏の最も有名な名前だし、太郎は今時使う奴はいねぇだろうが、日本の代表的な名前だ。そうかそうやって訳せるのか。
意外な事を聞いて何となく納得した。
「ん?ジョンと言えば、あいつ等がいたな」
チアキが突然手を叩き何かを思い出したようだ。
「あぁ、そう言えば・・・一兆、青龍の付近にいる二つのグループ。それがいたな。場所が遠い分手を出されたり出したことも無いが、青龍のトップ勢力と言えばあの二つだ、やるか?」
コーキも知ってるとなると、界隈じゃ有名そうだな。
「どんな奴らなんだ?ってかチーム名は何て言うんだ?」
「一つは男性のみで構成されたゴールデンジョン、そしてもう一つが女性のみで構成されたピーチジョン。カヤノがゴールデンジョンのリーダーで、マアヤがピーチジョンのリーダーの名だ」
「ゴールデン・・・ジョン。なんだその変な名前。つまり金太郎じゃねぇか、そんでもう一つは桃太郎になっちまうじゃん」
あれ・・・ちと待てよ?この世界にこの昔ばなしってあるのか?
「はは!!訳したら変な名前だなおい!!」
トラマルが笑っている、流石に日本男児なら金太郎と桃太郎は知ってるだろうが、こいつらは知らないらしい、つまりその物語は語り継がれていない。
「だが一兆、そこに行くには少々問題がある」
「何?」
「おれもコーキも、あいつ等の居場所は知らないんだ。ろくにやりあった事ないんでね」
「そっか、じゃあどうしたものか・・・あ、そうだ。小玉大先生出番だぜ~」
俺は小玉の耳元で割と大声を出した。
「うわ!!びっくりした!!てか、俺も知らないよ!!最初っからそんなに役に立てないって言ってるじゃん!!」
小玉はそっぽを向いた。
「はぁ・・・お前なら気が付くと思ったんだけどなぁ、なぁみんな、意外とそのヒント、俺知ってるかもしれねぇんだけど」
「そうなのか?」
「へー」
俺の記憶が正しければ、あいつが知ってる可能性がある。一番の可能性だな。
「コーキとチアキさ、それぞれ一人ずつ連れてく奴決めて来てくれない?」
「いいが、どこか行くのか?」
コーキは疑った目で俺を見る、なに、変なとこにはいかねぇよ。
「東雲組の本部」
「・・・・・」
「・・・・・」
コーキとチアキ、それ以外の奴らも全員目が点になった。
「んじゃ、善は急げ。行くぞー」
「おいおいおい!!行くってお前!本気か!?」
コーキが冷や汗を流しながら俺を止めようとした。
「うん、だってそのゴールデンジョン、俺の記憶が正しかったら多分小町が知ってるんだよ」
「さ、流石に東雲組に手を出したくはないなおれも」
チアキの顔が引きつってる。そんなにヤバい組織認定されてんのか?あいつら、一体普段何やってんだよ。
「はぁ、やっと帰れる」
そんな中安堵の声を上げたのは小玉だった。それを見て更に全員目を丸くした。
「あ、その役立たず。東雲組の新道 小玉って奴だよ?」
「うっそだろ・・・」
マジ。どうやら小玉は俺が連れているただのモブのような感じだったらしい。東雲組の一員と知ると一部の態度が変わったのが分かる。
「それよりも、流石に全員は連れてけねぇから。代表のお前ら二人ともう一人ずつ選んでくれ」
こいつらが東雲組をどう思っていようが、行かなくちゃいけねぇ。
話し合いの結果。
「お、俺でいいのかよ」
レッドベアズはトラマルを連れて行く事にした。
「俺も抜けるのだ。纏めれる奴を残さねばならん」
コーキの言う事が正しい。停戦したとはいえ中にはよく思わない奴がいそうだからな。
そしてブルーサンダースはというと。
「東雲組・・・これは取材のし甲斐がありそうです!感謝しますよチアキ!」
チサトあたりを連れて行くかと思ったが、シラキを選んだ。こいつは完全に目的がネタ探しの取材だ。いいのかよ。
「うん、これでいい」
そうなのね。
「ま、いいや。じゃぁこのメンバーで東雲組に行くか」
俺たちは東雲組の本部に向けて車を発進させた。
道中、俺たちは少し会話をしていた。
「ところでチアキさ、お前なんでギャングなんかやってんの?」
「お前ならわかるでしょ?大人は信用できない、それだけだよ」
「確かに」
何となくだが、チアキは俺に似てるのかもな。大人は自分の事ばかりしか考えない。そして周りを見ようともしない。そのくせ少しでも自分に危害が及びそうな奴には、大人の力とか言うもので潰しにかかる。
だから必要なんだよ。権力、財力に加え、奴らにはない暴力って力がな。その三つが揃って俺たちは俺たちの世界を守れる。
「大変そうだな、お前もお前で」
コーキは何かを納得したようにうなずいた。
「そう?学園生活はストレスはあれど、なんだかんだ楽しいもんだよ、文化祭に修学旅行そのほか色々学校行ってなきゃやれない事もあるしね」
「ぐぬぬ・・・俺たちが学校いけないからってー!!」
チアキの煽りにトラマルがキレる。しかし
「だめですよ暴れては、ほら、ここに座って」
「あ、ああう・・・てか、なんで俺ここなんだよ・・・」
シラキがトラマルを引っ張り膝に乗せる。
「仕方ないだろ、これ六人以上乗れねぇし」
この車は五人乗り。運転席に俺、助手席にデカいコーキ、そして後部座席にはチアキと小玉。真ん中にシラキが座ってる。その中で一番小柄なトラマルが座れる場所と言ったら、まぁそこだろうな。シラキの膝の上。
「それにいいじゃん、お前まんざらでもない顔してるし」
「な!!そんな訳あるか!!恥の極みだ!!」
「こら!!悪い子にはこうしますよ」
「いででで!!参った!参った!」
シラキはトラマルに関節をキメている。柔道でも習ってるのか?見た目は完全に優等生そのものだが。
「シラキはまたどうしてギャングなんかに入ろうと思ったんだ?あれか?経験しなければ分からないからとか?」
「まぁそうですね。基本の動機はそれでしたけど、それ以外にもあるんですよね」
意外だな。こいつはどちらかというと馬鹿正直と思ってたんだが、意外と複雑そうだ。
「学校を守る者として、俺が巻き込んだ」
「うおあ!!!」
トランクの方から急に顔が出てきて流石に俺も驚いた。
「お、チサト。仕事の方はどうなの?」
「生徒会の方は片づけ、資料は提出済みだ。後塾の方は上手い事言っておいた」
「よし、これで時間できた、ご苦労さん」
トランクから顔を出したのはチサトだった。
「あーびっくりした。てか生徒会?」
「あー、そういや言ってなかったっけ。ブルーサンダースの正体はオオトリ中学生徒会。おれが生徒会長ね、それでチサトが副会長。シラキは書記って事」
「え!?初耳なんだけど!!てか、醒斗会ってなに?別名?」
トラマルはまた馬鹿な事を言っている。ってか、よくその漢字に脳内変換したなこいつ。それ考えるとこいつ馬鹿なのか?あ、馬鹿だ。
「生徒会はまぁ、学校行事とか取り仕切ってる奴らだな、普通はこんな世界に手を出すような輩じゃぁねぇよ」
「学園の闇とは深いもの。それを探るには自らも闇に身を染める必要がある。全ては健全な学園の運営のため、教師では相手にならない」
チサトがクールに語った。でもま、一理あるな。
久しく俺が学校というものと縁が無かったからか、こいつらの話に花が咲いた。そのせいかいつのまにかフロンティアへと入っていた。
「さぁて、そろそろ着くな」
車は東雲組へと向かっていく。




