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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!第三章  作者: 冠 三湯切
パート1、『この異世界より平和への旅路を行く』
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馬と鹿 ライアー&フェイカー

 一兆は紅とイカサマ師たちとのポーカーの勝負に挑む。

 さて、次は本番だ。イカサマ師共との対決。今度のルールは手数を増やすためにパイナップルホールデムだ、フォールドは無し、全員が全財産を賭ける。負ければ全ての財産を無くす、そしてイカサマがバレた場合は財産没収の上、ここのカジノへ出禁となる。


 他の全員は全財産をチップに変換しに部屋から消えた。この部屋には俺と紅だけが残っている。


 「はい、一兆さん。これ追加分のチップだよー。最低これだけ無いと勝負は出来ないからねー」


 紅は俺にチップを渡してきた。


 「どうも、で、あんたは仕掛けに行かなくていいのか?おそらく他の奴らは何か仕掛けてるはずだぜ?」

 

 「私はいいの、仕掛けはこの部屋にいっぱいあるしねー。私に勝ったら教えてあげるよー」


 部屋自体に仕掛けか・・・流石はここのオーナーか。俺は周りを確認したが特に気になるところは見つからなかった。入念に隠されているみたいだ。


 「ま、でも今回は私の腕だけで勝負しよー。あなたもそれが好きなんでしょ?確実に勝つ方法じゃなくて、バレるかバレないかのスリル。リスクを伴う事は逆に言えば超がつく大チャンスってねー」


 そう言えば、あのエファナとかいう男、俺たちの事を少し調べていたみたいな感じだったな。俺は紅の言う通り、ギリギリを狙ったイカサマが好きだ。俺が勝負を仕掛けるのは最後のショウダウン直前。この瞬間は大概がイカサマを終えた後だ。だからそこでイカサマをする。何をするかは言わないが、まぁ相手が自分の手札を二度見するようなことだ。


 だから俺は今は何もしない。確かに多少のタネは撒いているが、仕掛けるのは最後だ。


 ・


 ・


 ・


 「さぁて、みんな覚悟はいーいー?」


 俺と紅、紳士な野郎と着飾った女。そしてスーツ姿の男、その5人での勝負だ。


 パイナップルはテキサスと違い最初に配るカードは2枚ではなく3枚だ、そしてそのうちの1枚を捨ててゲーム開始だ。これだけ聞けばただの勝負であればただ悩んで選ぶだけの事だが、こいつらは違う。この瞬間に誰かはもう仕掛けている。


 ホールデムのルールは表に出た合計5枚のカードと自分の2枚のカードで役を作り勝負をする。つまりは表の5枚だけは俺でもいじりようがない。だからフリフロップが始まる前から仕掛けなければいけない。

 

 まずはハートのエース、スペードのエース、スペードのキング。


 やはり狙いは、ロイヤルストレートフラッシュ。いや、エースのフォアカード狙いの奴もいるみたいだ。


 マズイな、全員をくまなく見ていたが不審な動きをした奴は誰一人見当たらなかった。


 仕方ない、あまりやりたくはなかったが・・・ 


 「うんしょっと」


 俺はカードを下に向けに置いて少し背伸びをした。


 「うん?どうしたんじゃ?」


 「いや、このタイミングで誰か怪しい動きをしないかじっと見てたら疲れてな。流石プロだねぇ」


 「当り前よ、どういたします?今なら降りても構いませんわよ」


 「いや、俺もあくまでも一端のギャンブラーだ。ゲームを降りたりしねぇよ。さて、再開だ」


 「はは、威勢がいいね」


 俺は今の間にさっき俺が捨てたカードと今のカードを入れ替えた。やっぱりか、カードが変わっている。綺麗にこっそり小さく付けた折り目も真似されている。


  

 4枚目が出てきた、スペードの4か・・・


 ん?今・・・


 「なぁ、スーツの後ろにいるお前、今何した?」


 俺は見逃さなかった。スーツの野郎の後ろにいる男が4枚目を出す瞬間に、右肩が少し動いた。この瞬間は全員テーブルに目が行っている。


 「ん?何を・・・」

 

 俺はスーツの腕を掴んだ。


 「なんでカードが3枚あるんだ?」


 スーツの奴の手の中には一枚余分にカードがあった。フラッシュが完成できる。こいつ、フラッシュ狙いだったのか?まぁいい、とりあえず見つけたぜ。


 「・・・っかああああぁぁ。残念、見つかっちまったかぁ。こっからが勝負だったのに・・・仕方ない、この際白状するかね。俺は後ろのこいつと手を組んでイカサマをやってる。こいつはメンタリストをやっててな、要は真にイカサマをしているのはこっちで俺はこいつの指示でタイミングよくカードを受け渡してもらってたって訳。あ、因みにおれの本職はマジシャンだ。ばれないようにカードを投げるのは得意だったんだけどなぁ。まさか俺とこいつの目をかいくぐるなんてねぇ、恐れ入ったよ。


 バレちまったものは仕方ない、チップはここに置いてく。俺はまたストリートマジシャンからやり直しかな?じゃ」


 スーツの男と、後ろの男は大量のチップと財布を置いて去っていった。随分と潔いんだな。俺の知ってる奴は必死こいて財布を守ろうとしてたのによ。


 とりあえず一人は脱落、メンタリストは俺にとって一番厄介だからな、手札を表情だけで読んでくるし・・・先に降ろせてよかったよ。次は最後のカードが配られるな。


 スペードのジャック。予想通りだ、因みに今俺の手元には役は全くそろっていない。あるのは前に出ているエースのワンペアのみ。


 おそらくあの女が主体で表のカードの役を出している。ロイヤルストレートフラッシュはあの女の手元にあるはずだ。


 俺はイカサマの瞬間を発見できなかった。立ち位置が悪いんだ、いや、それでうまくイカサマを隠しているのか。


 「さてと、次はショウダウンだよー。この勝負、絶対誰かがロイヤル持ってるねー、誰なんだろー」


 紅はまだ何かした気配がない。あの紳士風の奴もだ。いや、あの男は隠してはいるが今思い返せば不審な行動もあったかもしれない。 


 だが、紅だけは全く動きを見せていない。俺は奴だけは何があろうともマークしていた。さっきのトクの件だ。トクは馬鹿だから自分の手札がすり替えられた事にも全く気が付いていなかったが。


 仕掛けたのは紅だ。他の奴らはむしろそれを見て楽しんでいただけだ。手に持っている札を一体どうやって変えたのか。どのタイミングでやるか。


 それよりも、勝負を仕掛けるのは今だ。よし


 「ちょい待ち!!」


 ヤベッ・・・ばれた?紳士風の奴がショウダウンをいったん止めた。このタイミングはまずかったか、いや、まだ俺は出していない。これは・・・


 「レディ、おぬしの胸元、よぉ見せてみなされ」


 「あら?女の胸をまじまじと見るだなんて、とんだ変態紳士ね」


 「ほほほ、男はどんなに行ってもケダモノじゃて。さてと、それよりも、お前さんいい乳しとるのぉ」

 

 エロジジイは女の胸をじっと見ている。何がしてぇんだ?手がワキワキしてるじゃねぇか。あれ?このジジイ・・・


 「ほい!」


 「きゃ!!」


 そこは俺も見てなかったな。


 「お前さん、ええパンティ履いとるのぉ。こんなものを履いておるとは」

 

 男は一瞬で女の腰の後ろに手を回してスカートをめくった。それと同時に女がスカートの中に隠していたカードを拾い上げた。


 「いやらしい爺さんね。紳士として恥ずかしくないのかしら」


 「ほほほ、それはお互い様じゃて。さて、これでバレてしまったの」


 「えぇ、ルールは守るわ。持ってきなさい。それよりも、私のお尻、高くつくわよ」


 「おー、恐ろしい女じゃ、な、少年」


 俺に振るな、それよりもこいつ。


 「確かにな、だがそれはお前もだろ?」


 「お?」


 俺は少し乱暴だがこいつの胸ぐらをつかみ、上のボタンを少しちぎった。


 「ジジイにしてはやたら綺麗な肌してんな、それに、ジジイにしては変なもんが2つ付いてんぜ」


 このジジイ、俺の睨んだ通り女だ。ジジイに成りすましてやがったんだな。


 「あらら~、イカサマじゃなくてこっちがバレちゃったか。イカサマよりも入念にやってたのにな、どこで気が付いたの?」


「さっきその女の胸をジロジロ見てた時だ。あんたの手のしわが年の割に血管が浮き出てなかったし、妙に肌艶がよく見えたんだよ」


 ジジイは首元からペリペリと何かをはがし始めた。そして一気にそれを剥ぎ取った。すると中から若々しい女が顔を出した。着飾った女の方はそいつを見て目を見開いていた。


 「まさか、あなたは」


 「あら、私の事ご存知みたい?この姿を見せるのはほとんどないんだけどなぁ、あなた結構筋金入りね」


 「いやー君だったんだねー、私も全然気が付かなかったよー。久しぶりだねメリーヌ」


 紅もこいつの事知ってんのか。


 「どうだか、にしても少年。私の変装見破るなんてやるじゃない。手元は高を括ってあんましやってなかったわ。見る人は見るものね。私はメリーヌ アルセナよ。世間だと大怪盗だのなんだの言われてるわ」


 怪盗ってルパンか。顔のマスクもなんかそれっぽかったし、変声機使ってないから肉声であのジジイの声出してたみてぇだしな。


 「ほーん、で、そんな怪盗さんがここに何の用だったんだ?」


 「今日はただの休暇。たまたまクレナイちゃんが久しぶりにゲームをやるって聞いたから駆けつけただけさ。さぁてと、そろそろ仕事の時間が迫ってきちゃったな。クレナイちゃん悪いけど降りるわね。変装はバレたけどイカサマはバレてないからいいでしょ?このチップ持ってっていいよ。二人の一騎打ち、どうなったか後で教えてねー。さてと、行きましょうか依頼主様?」


 「え、あ、はい・・・」


 あー、そう言う事か。この後こいつらが何するか聞くつもりはねぇが、あの女とこの怪盗、依頼主と仕事人だったわけか。もしこのゲームに負けた場合の保険ね。


 俺はテーブルに戻った。その時メリーヌが小声で俺に話しかけてきた


 「このゲームが終わったらまた会いましょ、私も彼女の依頼を終わらすから、深夜十二時にあなたの前に来るわね・・・それともう一つ、クレナイちゃんはいい子だけど、クレナイちゃんには気を付けてね」


 言ってる意味が分からん。とりあえずメリーヌはそれだけ言ってドアから出ていった。




 「あらら、寂しくなっちゃったねー」


 「だな、でもこういうのも嫌いじゃないぜ。1対1は燃えるタイプか?」


 「私も好きだよー、さてと、そろそろ勝負決めよっか。もし私に勝ったら凄いプレゼントあげる」


 「いいぜ、もし俺が負けたら約束の金は無しだ。それに加え財産差し押さえても構わねぇぜ。その方が燃えるしな」


 さてと、ようやくショウダウンだ。ここで俺のイカサマ開始だ。俺がやるのは大概の奴が見たことあるやつ、袖の中に仕込んだカードに手持ちをすり替える。単純にそれだけだ。


 だが、一つだけ俺の専売特許としている事がある。それはカードを表に出す瞬間に入れ替える技術だ。俺は2枚のカードを投げる瞬間に袖の中にしまってあるカードを入れ替える事が出来る。これを誰にもバレずにやるのをマスターするのに3年近くかかったがな。


 今手元にあるのはクラブの7、ハートの9。そして袖の中にあるのはスペードの10とクイーン、そう。さっきの女が手持ちに入っていたやつだ。さっきメリーヌが女のイカサマをばらした直後にこっそりとすり替えておいた。その瞬間にわずかに傷もつけておいた、偽カードの対策と、紅用の対策だ。あいつがどのタイミングで仕掛けるのか・・・


 「さぁ、ショウダウン」


 2人は同時にカードを出した。


 「スペードエース・・・っな!?」


 馬鹿な、一体どうやった?俺のカードはダイヤのエースとスペードのクイーン、スリーカードになっていた。じゃあ、スペードの10はどこに!?


 「スリーカードだー。じゃ、私はねー」


 しまった。スリーカードになるようにすり替えられたんだ。だがどうやった?どのタイミングで俺のカードを変えた?


 「スペード10・・・ハートの5。って、まさかエースのワンペアのみ?」

 

 「うん、その通り!私の手札は残念、ブタだよー、ブヒー  さぁどおぞー」


 紅はこっちにチップの山を寄越してきた。


 「てめぇ、またわざと俺に勝たせたのか?あんまし舐めた真似してると女でも殴るぜ?勝負は実力で勝ってなんぼだろうが」


 「あらら、そのことはごめんねー。とはいっても、元より君たちをここに連れてきた理由はこのプレゼントをあげる為。ここで君が実力で勝っても負けてもあげるつもりだったもの。君たちにあげたかったのはこのゲームやチップじゃないよ。ここそのもの。このカジノを君たちにあげるために呼んだの」


 って事は、まさか・・・


 「ポーカーは私の勝ちだよー」


 そう言う事か・・・完全に乗せられてた。紅の奴は最初っからここを俺に明け渡す気で勝負してきてたのか。


 「くっそ、マジか・・・完全に敗北じゃねぇか全く。一体いつすり替えなんかやったんだよ」


 「ひみつー、今度また勝負しよ?勝ったら教えるねー。一兆さん、勝つことに拘りすぎたねー、だから今回のミスをやっちゃったんだと思うな、負けるのが勝ちってのもあるんだよー」


 紅は俺の頭をポンポンと叩いた。


 「あー、楽しかった。さてと、ここの経営だけど、別に一兆さんがやる必要はないよー。私もいっつもいないからね、経営はスタッフに任せてるんだ。一兆さんはこれまで通りこの世界を満喫してくれていいよ。ここで遊んでいたいのならそれでもいいしねー」


 「チッ、まったく、明るい笑顔の割には性格悪いなお前」


 紅はバニースーツからさっさと白衣に着替えている。


 「そうだね、私は最低で最悪の女なのかもね・・・」


 俺が軽い冗談で悪口を言ったら、紅はこれまで見せたことのないような悲しげな表情を一瞬見せた。すぐに元ののほほんとした顔に戻ったが。そんなに悪い事言ったか?


 「さてと、私は仕事に戻ろっかなー」


 「エファナとか言うやつのところか?」


 「そうだねー、ちょっとこれから忙しくて長い間会えないから、トクさんにも言っておいてねー」


 「分かった、トクの奴、どんな表情すんだろうな」


 俺は紅がしばらく会えないと知ったトクの表情を想像したら笑えてきた。


 「一兆さんはどうするのー?」


 「俺はぶらぶらとしてるわ、ここの経営権があるって事はここの備品も使っていいんだろ?」


 「うん、送迎用の車とかねー、とりあえずここの施設は自由に使っていいよーホテルもあるしねー」


 「そっか、じゃお言葉に甘えて使わせてもらうぜ。あと、紅さんよ。俺の事は別に呼び捨てでもいいぜ。なんかさっきから違和感ありまくりだ」


 「あ、そなの。じゃイッチーって呼んでいい?トクさんは・・・トクちゃんだねー」


 「多分、あんたにそう呼ばれたら卒倒するだろうなあいつ」


 「そかなー。よく分かんないけど・・・じゃ、私は行くねー」


 紅は出口ではなく、壁に隠れていた隠し扉を通って出ていった。


 勝負も終わった事だし行くか。負けて少々腹立ったが、今は若干気分がいい。今度は俺の手で勝ってやる。イカサマギャンブルは最近つまらなかったからな。いいライバルになれそうかもな。


 さて、トクん所に行くか。


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 「いっち~・・・」


 「おまぇ・・・」


 トクはパンツ一丁にされていた。ものの30分で何をどうやったら家一軒分の金が消えるんだ?おい。


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