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平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!第三章  作者: 冠 三湯切
パート1、『この異世界より平和への旅路を行く』
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ヴォイド クロスオーバー 第一の標的

 ヴォイドは謎の生物キャロットと出会い、それを連れてターゲットに近づく。

 「ここが旧国境の壁という所か、随分と立派だな」


 俺は今、アダムスの旧国境と呼ばれる場所にたどり着いた。目の前には地平線の彼方まで続く長く大きな壁がある。ただ、年月が経っているせいかあちこちに草やつるが巻きついている。そしてその壁の一部分は破壊されたような穴が空いている。


 リザの話によるとこれはこの壁の存在意義が無くなった後、地元の住人たちが開けた穴で、あちこちにあるとの事だ、耐震強度等の問題は大丈夫らしい。


 俺はその壁の穴を通り抜けた。その直後だ、俺の持っていた無線機が突然反応した。


 「誰だ?」


 『あ、繋がったわね。私よ、リザヴェノフよ。そっちは順調に行ってるみたいね』


 「なんでこの周波数が分かった?」


 俺の持つ無線機はキャンプ地としか連絡出来ない様になっている。隊の奴らから周波数を聞いたのか?


 『一応国連だもの、そこら辺の情報は簡単に手に入るのよ』


 「それより、一体何の用だ?」


 『通信がこの国境内なら通じるようになったから、そのテストよ。それとあなたのサポート、いくらあなたでもこの世界は今までの常識では通用しないわ。だから無線越しだけどサポートさせてもらうわ。まぁあなたならいらないと思うんだけど、一応上からの命令でもあるからね。よろしく、私は主に標的の情報を教えるわ』


 サポートか、リザはそうは言ってるが恐らく真の狙いは俺の監視だろう。命令を出すだけの人間はやはり単純だ。


 『それと、もう一人あなたのサポートをする人がいるの。彼も紹介するわ』


 一旦通信が切れた。そしてすぐに別の無線に繋がった。


 『どうも初めまして、俺はジョシュ カンナだ。ジョシュと呼んでくれ。俺はそのアダムスの地形に詳しい、地理の事について知りたければこっちに連絡をくれ。いつでもサポートするよ』


 地理についてか、確かに地図があるとはいえ全く知らない土地だ。俺はあまりサポートは付けたくないのだが、まぁ無線越しだ。構わないだろう。


 「よろしく頼む」


 『そんでだ、早速だがターゲットの情報を掴んでな。どうやらそこから南に数十キロ先の廃墟郡でターゲットの一人と思しき者の声が入った。恐らく麗沢 弾だ』

 

 麗沢、この丸い男か・・・なんとも間抜けな表情だな。だが油断は禁物か、常識が通用しない事が前提だ。


 キャロットは後ろでふわふわと飛んでいる。そして俺が再びバイクに乗ろうとするとやはりすぐに察してキャロットは乗り込んできた。


 『それでターゲットの位置の大まかな予測を立てた。座標を言うよ・・・」


 俺はリザから貰った地図に予測位置を書き込み、出発した。


 ・


 ・


 ・


 「ここだな」


 俺は周囲を見渡せる緩やかな丘の上に来た。そして双眼鏡を手に取り辺りを見渡す。


 「情報によればここの付近になるはずだが・・・」


 遠くに人影が見えた。数は二人。一人は女性。もう一人がターゲットだ。


 「ターゲットの一人、麗沢 弾を発見した」


 『麗沢ちゃんね。あの子はターゲットの中の実力では恐らく二番手。使う魔法もそこそこだし、武器の扱いも素人そのものね。だけど妙な幸運を持っているのよね。それが彼の一番の力よ、何が起こるか分からないから注意して』


 幸運を味方に付けるだと?そんな事が現実に可能なのか?試してみるか・・・その前にだ。


 「もう一人の女は?」


 『あぁ、彼女はエルメス アダムス。かつてこの国を統治していたアレックス アダムスの一人娘よ。元々は麗沢ちゃんたちとはあまりいい関係ではなかったみたいだけど、今は利害関係が一致してるみたいね』


 成程な、これについてはこれ以上踏み込む必要もないだろう。俺はライフルのボルトを引き、弾丸を装填し、スコープを覗きダイヤルを調節した。


 「ん?もう一人いる。あの男は誰だ?」


 岩の陰にもう一人誰かがいるのが見える。ここからではあまり見えないが、恐らく男性だ。


 『男?ごめんね、その人の情報はこっちにはないわ。ジョシュちゃんは?』


 『俺もだ、今現在であの二人にコンタクトをとれる人物・・・一体誰だ?』


 仕方ない。この位置ならば問題はないだろう。俺はトリガーに指をかける。キャロットは俺の後ろ。距離は1700メートル。風は西8メートル、この位置ならば奴の少し左上を狙えばいい・・・

 

 『バスンッ!!』


 サプレッサーの取り付けられた俺のライフルからラプアマグナム弾が発射された。


 俺の弾丸はほぼ真っ直ぐに突き進み、麗沢の脳天に命中し、彼はそのままバタンと倒れた。ボルトを引き薬莢を弾き飛ばし、次弾装填し連絡を入れた。


 「ターゲットに命中、任務完了だ」


 『流石ね、でもまだ駄目よ。彼は脳天を撃たれただけでは殺せないの。止めに心臓に一発撃ち込んで。でなければ彼は死なない。でも頭を撃たれた状態だと流石に修復に時間がかかるわ。恐らく復活までの時間は10分程。その間に止めを刺して』


 何だと?頭を撃たれて死なないのか。リザ、俺を試したな・・・全く、俺の実力を測るような事をして、一体何をしようとしているんだ?


 まぁいい、それよりも任務続行だ。他の奴らも同様にやらねばいけないという事か。結構面倒だな。


 この位置では狙いにくいな、場所を少し変えるか・・・


 「キャハハハハ!!」


 突然キャロットが腹を抱えて大爆笑しだした。その小さい手はどうやらターゲットの方を向けているみたいだ。俺は不思議に感じ念のために双眼鏡で確認した。


 「な、馬鹿な・・・外した、だと?」


 俺の目には、当たり前の様に立っている麗沢の姿があった。さっきの違うのは頭が一部禿げ上がっている事だけだ。


 まさか、俺の銃弾が奴の髪を抉っただけだと言うのか?俺は咄嗟にその場に伏せてからもう一度奴の脳天を狙った。今度こそ命中だ。

 

 俺は双眼鏡で、確認する。


 「リザ・・・どうやら仕留め損ねた様だ」


 まただ、別の場所が禿げただけだ。

 

 『へ?嘘でしょ?』


 「嘘じゃない、どうやら弾丸が当たる直前に奴はこけたようだ。俺の弾丸は奴の頭をかすめただけだ。お前の言う通り、幸運を味方に付けるというのは本当らしいな。これで完全に警戒された。この任務時間がかかりそうだ」


 『そうね・・・私も麗沢ちゃんを甘く見過ぎたわ。まさかあなたの銃弾を避けるなんて』


 ここからではもう狙えないな、場所を移さなくては・・・だがこの広げた場所では中々に難しいな。


 「ジョシュ、ここの近くにスナイピングポイントになれるような場所はあるか?」


 『駄目だ、せいぜい800メートル先の木の横ぐらいだろう。しかしそこではターゲットの陰になってしまうし、大分標的に近づくことに・・・』


 「構わない。あそこだな」


 俺は真っ直ぐ走って唯一窪んだ地形の場所に伏せて待機した。


 ここからは我慢比べだ。奴も永遠にあそこにいる事は出来ない。どこかでボロがでる。


 俺は装填された弾丸を一発発射した。弾丸はターゲットの近くの岩を削り取る。当てる事が出来なくとも精神的に追い詰める事は可能だ。それに、あの崩れ方だと三発撃ち込めば岩は崩れるだろう。


 俺は時間を待ち、ターゲットが出てくるのを待つ。出来るだけ無駄撃ちはしたくない。時間をかけて、一発ずつ撃ち込む。しびれを切らすのが先か、俺が岩を破壊するのが先か・・・


 ・


 ・


 ・


 結果は、前者だ。人影が岩場から飛び出した。俺はトリガーに力を込めようとしたときだ。もう一人が飛び出し、こっちに向かって銃弾を放った。


 「チッ!」


 俺は一旦伏せた、狙いはバラバラだが弾幕を張られ容易に頭を出せない。弾切れを待つしかない。隣の岩場に移ろうとしたのだろうが、その方法ではいつまでも持たない。


 弾幕が止んだ、俺は再び構えた。


 「いない・・・?」


 俺がスコープを覗きこんだ瞬間にはもう、三人の姿が何処にも無かった。いるのは馬が3頭。一体どこに行った?


 俺はとりあえず標的のいた場所を捜索するが、やはり誰もいなかった。


 「ターゲットロスト、奴を見失った」


 『一体どうやって消えたんだ?仕方ない、仕方ない。ヴォイド、済まないが一旦そこを離脱してくれ』


 「離脱?」


 『そう、さっきあなたがいた木に向かってくれる?』


 俺は指示通り、先ほどの狙撃ポイントに戻った。既に何故かキャロットがそこで待っていた。


 『着いたわね、そこの木の幹に触れてみて』


 俺が木に触れた時、木が扉が現れ自動で開いた。


 「これは・・・」


 『それは離脱ゲートよ、世界中あちこちに点在してて、こっちが許可した人とその本人が照合されるとその扉が開くの。その先にある地下鉄に乗ってくれる?それに乗ればこっちに戻ってこれるわ。ハイパーループより時間がかかるけど。あとあのバイクは後で回収するわ』


 俺はキャロットと共にその入り口へと入っていった。

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