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5-28 呼び出された 2




「きっきさ、キサマぁ……!」


 バキンと、頭頂部まで赤黒く染まったダンドンの歯がかける音が響く。

 さっきはなんとでも言えって言ってたのにね。


 とはいえこれまでずっと渋い顔をしていたように、ダンドンにとっても集団リンチは望ましいものではないようだ。


「オヤジ、いいだろもう!」


 敬愛する相手を貶されたことで、忠犬トゥバイは怒り狂っている。

 だがダンドンは怒りに震えながらも、ゴーサインを出さない。


「キサマら、跳ねっ反るのも大概にしておけ! 勝ち目などないことくらいわかるだろうが!」


 などと言ってくる。


 今更ためらったって、遅すぎるのだが。


「気が済みましたか、マスター。もういいですね」


 俺を地面に降ろし、トゥバイと似たようなこと言ってくるニケに頷く。


「うん、残念だが懸命の説得にも応じてくれないようだから」

「あれが説得? 世界から口喧嘩という概念がなくなりそうだな。さて、では私は」


 そう言うなり振り向いたルチアは、トンと跳ねた。

 あまりに軽やかな跳躍に虚を突かれたのだろう。後方の冒険者たちは、自分の頭を越えていくルチアを口を開けて見送った。


「おっ、おい! 逃がすな!」


 誰かの声にハッとなり、扉の前に降り立ったルチアを追う。

 立ち止まっているルチアは、上半身を捻り顔だけを冒険者たちに向けた。


「勘違いするな」


 腰に手を回し、ルチアはマジックバッグに触れた。

 取り出したのは漆黒の盾。


「まさかそれは……」

「わかったか。ああ、アダマントの盾だ。総アダマントのな。お前たちが欲しいのはこれだろう?」


 見せびらかすように軽く掲げられた盾に、冒険者たちがツバを飲み込む。


「そっ、総アダマント……マジかよ」

「へへへ、そうだ、それを寄越しな。変な動きして焦らせやがって。逃げるのかと──」


 渡してもらえるとでも思ったのか、一人の冒険者が一歩踏み出して手を出す。

 しかし、ルチアは無視して完全に背を向けた。


「だがお前たちはわかっていない。我々がどんな覚悟を(もっ)てこれを手に入れたか」


 そう言って、掲げていた盾を思い切り自分の前に振り下ろす。

 先の尖った中型盾は、強く固められた土に半ば以上埋まった。


 修練場の中からでは手前に引いて開けるしかない、たった一つの扉──その真ん前に。


「私が逃げる? それは勘違いだ。私がお前たちを逃がさないのだ」

「なっ……」


 絶句する冒険者たちに振り返ったルチアの口元には、笑みが浮かんでいる。

 自信に裏打ちされた、覇気に満ちた笑みだ。


「小娘が……粋がってんじゃないよ!」


 対照的に女冒険者が歯をむき出しているのは、圧倒されているからか。

 当然ルチアは意に介していない。


「確かに私はニケ殿と違って若輩の身ではあるが、あえて言わせてもらおう。簡単に逃げられると思うなよ。覚悟無き刃で貫けるほど、私は脆くない」


 きゃあ格好いい! 惚れ直しちゃう!

 きっと冒険者の中にも惚れてしまった奴がいるだろう。

 でも残念。


「その通り! ナニでとは言わないが、ルチアを貫けるのは俺だけだ!」

「台無しだ主殿…………」


 ガックリしているルチアを見て、ニケが憤っている。どうも年齢イジりのことだけではないようだ。


「わざわざ私を引き合いに出したことはあとで話し合うとして、やはりルクレツィアは卑怯ですね。この者たち相手に盾など不要というのはわかりますが、わざわざそれで扉をふさがなくてもいいはずですが。盾で釣って自分に集めようとしているのでしょう」

「その発想ができるニケもアレだが、さすがにルチアもそこまで戦闘狂じゃ……ルチア?」


 冒険者たちの隙間から見えるルチアは、そっぽを向いた。

 更にあちこちに視線を巡らせているが、その視線は決して俺とは交わらない。マジかお前。


 今宵の虎徹なみに血に飢えた二人に恐怖していると、トゥバイも片眉だけを上げた困惑の表情をしていた。

 わかるよその気持ち。我が婚約者ながら、この二人はちょっと頭がおかしいからね。


「こいつらなに言ってんだ……この人数の高ランク相手に勝てるとでも思ってんのか。頭イカれて──っ!?」


 突然ビクンと震え、トゥバイが言葉を途切れさせた。

 なにごとかと思っていると、なんということもなくニケが涼し気に言い放った。


「《隠密》に《追跡》ですか。確かに優秀ですね。狩猟者と呼ばれるだけのことはあります」


 ああ、鑑定したのか。

 《隠密》と《追跡》というのはスキルだ。

 確か《隠密》は気配が薄くなり、感知系のスキルに引っかかりにくくなったりする。《追跡》は認識したターゲットが、どこにいるのかわかるようになるものだったと思う。

 どちらも希少なスキルであり、王国を代表する有名なSランクであるのも頷ける。

 頷けるが──


「てめえ! 鑑定しやがったな!」

「なに!? まっ待て!」


 もはやダンドンの制止も届かず、ブチギレたトゥバイが飛び出した。

 無許可に魔眼をかけるなど、完全な敵対行為と見なされる。

 それを考えれば仕方ないけど……馬鹿なヤツ。


 地面を一蹴りして飛び出し、そして二蹴り目。

 俺とダンドンのちょうど真ん中辺り。地面にトゥバイの足がついた瞬間、音が響く。


 パチュンと、水風船が割れたような軽い音が。


「…………あ?」


 トゥバイが間の抜けた声を漏らして立ち止まる。いや、止まらされた。

 そして間の抜けた顔で、自分の()()()()()()ニケを見ている。

 そしてトゥバイは、そこからゆっくりと視線を下ろした。


 ニケの動きにまるで反応できていなかったが、さすがに理解しただろう。

 ニケの艶めかしい白磁の脚。それがスカートから飛び出て、自分に向けて伸ばされているのを見て。

 その足先が、左から横っ腹を押し潰し、ヘソがあった位置にまで到達していることを感じて。


 はいおしまい、ということを理解しただろう。


 わずかな間を置き、ニケが足を抜いて後ろに飛ぶ。そして俺の横に戻った。

 下向きのまま、大量の血を吐き出したトゥバイは膝を落とす。糸が切れたようにくにゃりと潰れて顔から地に伏した。


「うへー、吹き飛びもしないのな。こわっ」

「あれは完全に攻撃寄りのステータスをしていましたからね」


 豆腐を細い棒で叩いても飛んでかない。そういうことなのだろう。

 スキル構成的にも、トゥバイは無警戒の相手への急襲こそが持ち味と思われる。いくら挑発されたからといって正面から突っ込むなど、よほど俺たちを舐めていたのだ。


 そもそも本来鑑定眼なんて、そう簡単に通るものではないのに。俺だってニケの鑑定眼ならそれなりに防げる。

 気を抜いていたというのもあるかもしれないが、それが一発で通ったというのがなにを意味するのか。

 有名なS級としてトップにいたトゥバイは、すっかり忘れてしまっていたようだ。


 そして戦慄の結果ではあるが吹き飛んだりしないぶん地味だったせいで、他の奴らはしばらく理解が追いついていなかった。


「そんな、まさか……トゥバイ!」

「えっ……えっ? …………トゥっ、トゥバイ!」


 ダンドンと仲間の女魔術師がやっと駆け寄り、遅れて他のパーティーメンバーも続いた。


「くそっ、やりやがったな!」


 仲間の一人はそのまま襲いかかってきたが、ニケに蹴り飛ばされて今度は吹っ飛んでいった。倒れたまま動かないが、うめいているし気絶しただけだ。

 盾とか持ってたし、トゥバイより頑丈な職だったのだろう。


「う、嘘だろ……群青たちがあんなあっさり」

「スキルでもない一撃だぞ!? ありえねぇ……」


 この段階まできて、ますます及び腰になっていくその他の冒険者たちには呆れるばかりだ。ルチアを包囲する輪も大きくなったし。


「で、トゥバイ死んだん?」

「すぐに治療すれば助かると思いますが──おや」


 ニケが意外そうにしたのも無理はない。女が上位の回復魔術を使ったのだ。パーティーに回復持ちがいるなんて珍しいな、さすがS級か。

 そして更にダンドンがポーションをかけている。


「これなら確実に助かってしまうでしょう。どうしますか?」


 トゥバイだけのことではないだろう。

 ニケが聞いてるのは『皆殺しにするか』、ということだ。

 しかし逃さないように扉の前で仁王立ちしているくせに、ルチアは皆殺しに反対のようだ。


「さすがにこの人数を意図的に、というのは私はまずいと思うが」

「えー、そうか? 野盗みたいなもんだろ?」

「しかし命を奪おうとまではしていないようだからな」


 うーん、さすがに皆殺しは過剰防衛だろうか。一応社会的地位が高い連中でもあるし、問題になるかもしれない。

 ほどほどに殺す程度なら、罪に問われるのは奴らだと思うが。

 俺たちはこの街の領主様とも仲良くやってるし。なぜ二人は「そうでしたか?」「どうだろうか……」と首を傾げているの。


 まあそれも勝てば、の話だ。

 負ければ俺たちの声に周りは耳を傾けることなく、泣き寝入りになる可能性も高い。

 その心配はしてないけど。

 ルチアとニケも言っていたように、こんな覚悟も持たないゴロツキ相手に二人が負けるはずがない。


「罪に問われるか否かは置いておくとしても、やり過ぎるとセレーラも怒るでは済まないかもしれませんね」


 ……それはなによりも大問題だな。

 もうじき俺たちは旅立つ。その前にちゃんとセレーラさんと話をして、仲間に引き込みたい。嫌われるのはなんとしても避けなければならない。


 もともと人を殺したいわけじゃないしな。合理的判断に基づいて、殺すべきときは殺してきただけだ。

 今回は損しないために生かしておくべきか。一応なんらかの形で賠償は受け取れるだろうし。

 と言っても金とかこいつらの持ち物とか、大して興味は────


 いや…………待てよ?

 上手くすればこれは使えるのでは。


「……二人とも、あまり簡単に皆殺しだなんて物騒なことを考えてはいけないよ。大いなる慈悲を以て人に接しなければね」


 仏の微笑みを二人に向けたが、なぜか返ってきたのはまたしても不信の目だった。


「またそんな悪魔のような笑みを……」

「どうせ悪いことを思いついたのでしょうね」

「悪いことなんて考えてないよ! 皆がハッピーピースになる、素晴らしい案を思いついただけだよ! ということでもちろん安全第一だが、可能な限り生かしておくように」

「はいはい、わかりました」

「了解した」


 ちょうどこっちの方針が決まったところで、意識のないトゥバイを後ろに下げさせたダンドンが立ち上がる。

 悔しさ、怒り……多分恐れとか後悔も。色々こもって、顔をクシャクシャに歪めている。


「貴様らは……一体なんなのだ! ついこの間まではここまでの力はなかったはずっ」


 前に不意打ちを返り討ちにしたときも一撃だったが、どうやら違いがわかったようだ。ダンドンも元S級冒険者だったらしいしな。

 俺としてはそんなに実感がないが、あの頃からステータス値の全てが倍近くなってるもんなあ。

 ダンドンたちは以前の強さを基準にして、今回いけると踏んでいたのだろう。

 そして、その目算が甘かったことに気づいたのだ。


「ただの新種ですよ。あ、今更謝っても遅いですからね」

「ふん、誰が! だがわかっているのか。仮に貴様らが勝ったとて、冒険者ギルドが黙っては──」


 そこまで言って、ダンドンはハッとして口をつぐんだ。

 気づいたのだろう。自分のセリフが悔し紛れにバックの威を借る、まさしくゴロツキのものだということに。


 だいたいお前はギルドに背任してるじゃねえか。ギルドがそれを知れば、こいつらを積極的に庇ったり、俺たちと敵対するとは思えないな。


 ではいい加減に始めようかと思ったが、最後にニケが一言あるようで前に出た。


「本当につまらないですね、貴方がたは。貴方もどうせ水晶ダンジョンが消えたことについて、私たちが悪いと考えているのでしょう?」

「なにも違わぬだろう」

「そうですか。やはり貴方はエルグレコの言葉に大きな勘違いをしているようですが、一つだけ言っておきましょう」

「勘違い? なにをだ」


 ニケはその問いには答える気がないようで、ただ首を振って続けた。


「もし彼が生きていれば、攻略した我々を褒め称えたでしょうね。水晶ダンジョンが消えたことなど笑い飛ばして」

「……馬鹿馬鹿しい。なにを知ったようなことを。もう良いわ、始めるぞ」


 どこか諦めた雰囲気で、ダンドンが投げ捨てるように言い放つ。

 それを皮切りに、ようやく始まった。


 彼らにとっての地獄絵図が。





「なんだよこれ、なんなんだよ! こんなの聞いてな──ごガっ」


 縦横無尽に修練場を駆け回るニケを捉えることができず、逆に冒険者がまた一人蹴られて天高く飛んだ。

 そして扉付近では、


「なんで効かねぇっ!?」


 放たれた魔法を物ともせず、ルチアが集団に突っ込む。


「うわああ! はっ、離せっやめ、うごぁ!」

「なんっ、ぐあっ!」


 逃げようとした一人の襟首を掴んで振り回し、もう一人に投げつける。見事にクラッシュして二人とも脱落。


 見渡してみれば、もはや立っている冒険者は半分もいない。

 当初は人数が多かったから慎重だったニケとルチアも、大胆に狩り始めた。このぶんならそう長くはかからない。


 ダンドン? いの一番にニケに蹴り飛ばされてた。一応ニケはフェイント入れてたし、きっとそれなりに強かったのだろう。


 そして俺はといえば、さすがにパーティーを相手にするのは荷が勝ち過ぎる。自分から攻めるのはやめておいた。

 その代わりに俺狙いで突っ込んできた相手で、ついに無双デビュー! …………そう意気込んでファイティングポーズを取って待ち構えていたのに、


「ガキだ! あのガキを、オぎガがが!」


 雷撃バリバリー。


「あのガキを捕まえゴボフッ」


 岩塊ドゴーン。


 …………今は修練場の真ん中で、大人しく体育座りしています。一人山崩し楽しいなー。

 あの二人本当は、俺よりたくさん目を持ってるんじゃないですかね。


 それにつけても、これで高ランク冒険者? と思ってしまうが……実際のところは初めから戦う気があれば、こうも脆く崩れたりしなかっただろう。

 覚悟と戦略が無さ過ぎたのだ。


 例えばもっと広いところで対峙するだけでもだいぶ違っていた。距離取られて飽和攻撃されたり、バラバラに逃げられたりしたら俺たちもしんどい思いをしたはずだ。

 でもここじゃあ同士討ちはするし、ろくに距離も取れない。

 俺たちの力を見くびっていたと言えばそれまでだが、こんなのわざわざ檻の中に入ってきて猛獣にケンカ売ったようなもんだ。


 ふむ、となると俺は猛獣使いか。

 新しい二つ名として、『純真無垢な猛獣使い』というのを広めてみようか……猛獣扱いされた二人がキレる未来しか思い浮かばないな、やめとこ。

 とりあえず今日の夜は、興奮冷めやらぬ二人が猛獣になるのは見えている。痛くないムチを使って無邪気にアレコレしてみようか。


 などと考えていたら、いつの間にかほとんど冒険者は残っていなかった。

 その残り少ないうちの一人が目についた。


 黒い三角帽子に黒いドレス──『魔女』ギネビアさんだ。

 彼女がまだ立っていることに驚く。マリアルシアの旗のリーダーである坊っちゃんは、とっくに倒されていたからだ。

 あれは自爆と言ってもいいが。


 ダンドンが倒れてすぐ──


「こんなことをしてはいけない、ニケさん! 貴女はそんな人じゃない! こんなことを望んでいないはずだ! もう彼から自由になるんだ!」

「なっ、ダメだ坊っちゃん!」


 坊っちゃんが盾役らしいオッサンを抜かして、前に飛び出てきたのだ。


 そしてニケにぶち転がされた。何度かバウンドして壁に激突するくらい強めに。

 両鼻穴から血をたらして、どこか幸せそうに気絶していた。


「気持ちの悪い幻想を押しつけないでもらいたいのですが。少しは女を教えておくべきだったのでは?」

「…………面目ない」


 どうやら坊っちゃんは貴族だけでなく、そっち方面もこじらせていたようだ。俺の中でちょっと好感度が上がってしまった。


 そのあと恐縮するオッサンも倒してからは、ニケは各パーティーを回ってつまみ食いするように倒していった。自分が狙われるようにだと思う。

 俺は途中からイジケて見てなかったが、旗の中でギネビアさんだけは残されていたようだ。危険度は高いと思うのだが、なぜだろう。


 まあギネビアさんは長い杖の先をニケに向けているが、雷光のような動きを追いきれていない。ぶっ倒れている冒険者もそこかしこにいるし、手を出せないでいる。

 なにより初めから乗り気じゃなかったようだし。

 結局諦めて杖を立てたギネビアさんと、視線が交わった。


「坊や……」

「ギネビアさん……こんなことになってしまって残念です……」

「ね、ほんと。しかも負けるし。なにがなんでも坊っちゃんを止めとくべきだったよ……アハハ」


 やるせなさそうに笑うと、うつむいて目元を帽子で隠した。

 それを見て俺は立ち上がる。


「でもほら、坊やとアタシの仲じゃない。ここは見逃して──」


 そこまで言って顔を上げたギネビアさん。


「ほあたあ!」


 その横っ腹に、俺のガタック風飛び回し蹴りが炸裂ぅ!

 敵を正面にして目線を切るとか甘くない?


 くの字に折れたギネビアさんは吹っ飛び、地面を何度も転がった。

 うつ伏せに倒れてドレスがめくれ上がっているが、カボチャパンツなのが残念である。


「うーん、ニケのようにはいかないもんだな」


 当たりどころはトゥバイと同じだったけど、ギネビアさんは三角帽子だけを残してぶっ飛んでってしまった。

 魔術師のVITならいけるかと思ったのに……ちぇっ。

 というかまだ意識すらあるようで、咳き込みながらも顔がわずかに持ち上がる。


「ゲホッ……ハ、ハハ、ゲホ……やっぱり、坊やは…………ワイ……子だ、ね…………」


 最後に小声でそう言い残し、ガクリと落ちた。


 きゃはっ、こんなときにまでカワイイって言われちゃった。


 嬉しさをコサックダンスで表現してたら、ニケとルチアが並んでこっちに注目していることに気づいた。


「どうなるかと思って残しておきましたが、やはりこうなりましたか。それなりに気に入っていたのに……コワイ人ですね。身が引き締まります」

「改めてニケ殿には感謝するしかない。昔ニケ殿に止められず離脱していれば、たとえ戻ってきたところでああやって地に伏すことになっただろう……考えただけでコワイな」


 よく聞こえないが、どうやら二人も俺を見てカワイイと言っているようだ。

 自分の魅力が度を越しちゃっててコワイ!








コサックダンスはロシアではなく、ウクライナの伝統的な舞踊だそうです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちなみにボルシチもロシア料理じゃなくてウクライナ料理らしいですよ
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