5-27 呼び出された 1
リリスが旅立って二日後、今度はダイバーではない冒険者ギルドに呼び出された。
水晶ダンジョンが消えてからは初だが、帰ってきてすぐには何度か呼ばれてはいたのだ。侯爵との打ち合わせとかを理由に行かなかったけど。
しかし以前戻ってきたら連絡をさせるとゼキル君に言わせていた手前、これ以上無視してはゼキル君に迷惑がかかってしまう。
馬車まで用意されてしまったので、仕方なく現在向かっているところだ。
「やはり素材の譲渡要求でしょうか」
呼びに来た妙に挙動不審のギルド職員は、馬を操る御者の隣にいる。
オレたちだけの馬車内で、抱っこ係のニケの声もありありと面倒臭さを表現している。
「だろうなあ」
この街の冒険者ギルド統括であるダンドンは、点数稼ぎのために希少な素材を欲しがっているようだから。アダマントや、水晶ダンジョン終盤の魔物を寄越せと言ってくるに違いない。
「どういう論法で来んのかな……買わせろとかなら少しくらい考えてやらんこともないけど、力ずくで奪おうとしてくるとかだったら」
「さすがにそれはないだろう、野盗でもあるまいし。以前は私もカッとなったが、あまり冒険者ギルドを甘く見ないほうがいい……私の父は滅多に周囲に弱みを見せる人ではなかったが、冒険者ギルドに悩まされていたのは私でも知っている。伊達に大きな組織ではないのだ」
途中からルチアの声のトーンは一段沈んだ。
嫌なことを思い出してまで忠告してくれたのだ。真摯に受け止めなければなるまい。
そうして東門近くの冒険者ギルドに到着した。
挙動不審の職員に連れられて中に入ったが……階段には向かわないようだ。
廊下を進むと、異様に厚く頑丈そうな扉が見えてくる。
方向から考えても、ここって──
「こっ、こちらに……お入りっ、くださいぃっ」
挙動不審職員が体重全てをかけて、両開きの扉の片側を押し開ける。
その先には広い空間。
やはりそこは、ギルドに併設している修練場だった。
扉の隙間から、男の後ろ姿が見える。眩い頭部からしてダンドンだろう。体育館二つか三つほどありそうな広さの修練場に、ポツンと立っている。
「マスター」
「うん、いいよ行こう」
その背中に向けて歩み、修練場に足を踏み入れた。
とにかく頑丈さを追い求めた結果だろう。修練場には上の方に通気口があるだけで、他の扉どころか窓すらない。
壁も頑丈にするために、魔術的ななにかが施されていたりするのかな。
「来たか」
一つしかない扉が音を立てて閉まる中、俺たちが近づくとダンドンは振り返った。
腕を組み、眉間や額に深いシワを寄せた渋い表情をしている。格好いい意味の渋いではなく、しかめっ面の方だ。
「お待たせしてすみません。それにしてもこんなところに連れてくるなんて、どういうつもりですか?」
俺の当然の疑問に応えたのは、ダンドンではなかった。
「へぁっはっはっ、わかんねーのか?」
嘲るような声が、後方から響く。
入ってきた扉側の上部は、広くはないが階段状の観覧席になっていた。
四十人以上はいるだろうか。小馬鹿にした笑いとともに、続々と観覧席から飛び降りてくる。
いずれも屈強そうな男や女。間違いなく冒険者だ。
「わかりたくありませんね。でもそんなことより教えて下さい」
「あん?」
俺たちを取り囲んだ冒険者たち。
その中でダンドンの横に行って一番偉そうにしている、犬系の獣人を煽ってみる。
さっき声を上げたのもこいつだろう。笑い方も犬っぽかったし。
「前もそうでしたけど、皆さん驚かそうとするのが好き過ぎません? 大の大人がこんな大勢で息を殺して僕たちが来るのを待っていたなんて、恥ずかしくなかったですか?」
以前の集まりで俺たちが即帰ったから、そうさせないように入るのを待っていたのだろうか。
入るときニケもルチアも気づいていたし、俺でさえいるだろうなと思ったけど。
「……ガキが」
元々鋭かった目を更に細め、獣人が前に出てこようとする。
それをダンドンが制した。
「やめろトゥバイ。いい加減人相手だと簡単に熱くなる癖を直さんか」
「チッ、わーったよオヤジ」
見るからに短気そうだが、獣人は素直に従った。
なんとなく本当の親子というわけではなく、単にダンドンを慕っているのだと思える。
その獣人を見てルチアが、「なるほど」と呟く。
「あれがS級ハンターの『群青の狩猟者』トゥバイか。前回の集まりにはいなかったように思うが、マリアルシア王国きっての凄腕と聞く。狙った獲物は決して逃さないとか」
「そうなのですか、大したものですね。獣人は年齢がわかりづらいですが、まだまだ若く見えるのに」
年なんてどうでもいい。
そんなことより『群青の』というのは、後ろでくくっている長髪の色からきてるのだろうが──
「二つ名ってそんな長くてもいいの!? 群青とか響きが格好いいし、ずるい!」
俺なんてあんな無理くりつけられた、全く中身にそぐわない二つ名なのに。
おのれ、なんて羨ましい……。
腹立ってトゥバイにガンを飛ばしていると、
「ぎゃあ!」
ニケに目をつつかれた。
「一人で勝手に煽られていないで、話を進めなさい」
「うう、なにも目潰ししなくても……それでダンドン統括、これはどういう了見ですか」
「単刀直入に言う、素材を提供しろ」
渋い表情を崩さぬまま、ダンドンは続けた。
「アダマント、そして水晶ダンジョンの深層階で得た素材をだ」
それは想定通りだったが……一応色々確認しておかないと。
「もともと素材を売るときは、ダイバーズギルドにも売らなければいけない契約ですが」
「ギルドには売らずにこちらに回せ」
そこまでを望むのか。完全に背任行為だと思うんだが。
「代わりに個人的に買い取りたいということですか?」
周囲の冒険者から声が上がる。
「誰が金なんか払うかよ」
「ふむ、タダで寄越せと。量はどの程度ですか?」
「アタイらが納得する量さ」
「曖昧ですね。そもそも統括に提供しなければならない理由もわからないのに、なぜ更に皆さんにまで差し上げなければならないのでしょうか」
「だからわかんねーのか? 面子が立たねえんだよ、このままじゃ」
最後のトゥバイに、周りも鼻息荒く賛同している。
「面子ですか……皆さんはもしかして、アダマンキャスラー撃退に向かった方々ですか?」
「行ったか行ってねえかなんて関係ねえ。冒険者全体としての面子の問題だ。水晶ダンジョンが消えた責任も取ってもらわねえとなんねーしなあ」
水晶ダンジョンが消えたのは断じて俺たちの、俺のせいではないのだが、反論したところで聞く耳など持ってないだろう。
そして俺の問いに誤魔化して答えた理由は、ルチアが教えてくれた。
「半分以上は撃退に参加した者ではないだろうな。とてもではないが、そこまでの実力者とは思えん」
なんとなくそんな気はしてた。
俺には強さとかわからない。でもニヤニヤしながらククリナイフみたいなのを手で弄んでる奴とか、三下感にあふれすぎているのだ。
弱くはないのかもしれないが、人数合わせで声をかけられ尻馬に乗っただけの奴らか。
「当然ですね。少しでも矜持を持つ者であれば、このようなことに加担しないでしょうから」
あのときのメンバーが丸々いないのは、そういうことなのだろう。
ニケの言葉に反応して口々に凄んでいる連中の面構えを眺めていると、うつむき唇を噛む者が目の端に映った。
「あれれ~、でもさニケ──」
いるのは気づいてはいたが、やや意外……そうでもないか、強欲だしな。
「──元貴族の人もいるみたいだけど? 貴族って、矜持持つ立派な方だと思ってたよ~」
黒い三角帽子を深くかぶって目元が見えないギネビアさん。
固い表情の五十くらいのおっさん。
二人に挟まれていた坊っちゃんが、キッとこちらを睨む。
「僕だって望んでここにいるわけじゃない……君のせいだろう!」
「へー、そうなんですか」
「そうさ! 君たちが水晶ダンジョンを攻略したから……君のせいで水晶ダンジョンがなくなったから!」
そうだそうだと、周りも俺たちを責め立ててくる。
それに乗せられて、坊っちゃんは更にエキサイトして語り始めてしまった。
「もう少しで七十階に辿り着いたのに、貴族に戻れたのに! ……でもこれに協力すれば、統括が」
「ああいいですいいです、もういいです。貴方の事情とかそういうのどーでもいいです」
「なっ……」
興味なさすぎて無理矢理ぶった切ったら、坊っちゃんは口をパクパクさせている。
放っておいて前を向いた。
「それで最後に聞いておきますが、僕たちが断ればどうするのですか?」
答えたトゥバイだけでなく、多くの者が含んだ笑いをこぼした。
「へぁっはっはっ。決まってんだろうよ、痛い目見るだけだ。俺としちゃあそっちの方がいいけどな。その姉ちゃんたちは可愛がりがいがありそうだ」
「もう、トゥバイったら!」
パーティーメンバーだろう。
杖を持った女がトゥバイの背中を叩いた。ヤキモチかなんか知らんが。
「そんな怒んなって。ま、大人しく素材出しとけや、おめえら。竜種やら超級の魔物が群れで出てきただとかはフカシ過ぎだが、それなりのもんは持ってんだろ?」
俺たちが講演で語ったことは信じていないようだ。
それも当然か。以前まで俺たちは六十五階層で止まっていた。彼らの常識では、短期間でそれほど強くなるはずがないのだ。
未到達だった七十八階層の先は、大したことがなかったと思っているのだろう。
まあ……どうでもいいな。
ホントもう無理。
いい加減限界。
それは俺だけじゃなくて、まず初めにギブアップしたのはルチアだった。
「プッ……くくくくくく」
ルチアが吹き出したのに釣られた俺も、もうこらえきれない。
「ぷくっ、クひひ、うひひひひ、ひひははは!」
「もうマスター、ふふっ、またそんな下品な笑い方を、ふふふ」
ニケも珍しく人前でこんなに笑っている。
「ひぅひひ、だってさあ、おいルチアぁ」
「すまない主殿、私が間違っていた。ふふふ、これではとても野盗ではないなどと言えないな」
まさかルチアの注意喚起が、こんな綺麗にフリになるとは。
「ふふ、野盗の方がまだマシでしょう。これではただのゴロツキです。これぞ冒険者ギルドの構成員と言えますが」
最後のセリフはよくわからないが、ゴロツキというのはよくわかる。
話している今も、野盗やゴロツキ扱いされた冒険者たちの怒号は飛び交っている。あんだとやんのかおんどりゃあ的な。
しかしトゥバイなんかはダンドンに手で制されているけど、他に単身で挑みかかってくるような者はいない。
こいつらは脅せば俺たちが頭を垂れ、素材を差し出すと思っているのだ。もし従わなければ、みんなで寄ってたかっていたぶればいいと思っているのだ。
戦いをする気などこれっぽっちもない。
命がけの野盗のほうが、まだ潔いかもしれない。
ま、そんな奴らだからこの場にいるのだろう。
「セレーラ殿が以前言っていたことを実感するな。本物の冒険者などここにはいない」
「このような者たちであふれていたのです。リリスが水晶ダンジョンを消したくなるのも納得してしまいますね」
「くくっ、ああ思い出した。ダンドン、あんた前になんか言ってましたね」
「……なにをだ」
拍子抜けというかなんというか、意外にもダンドンは冷静にしている。
ゴロツキ呼ばわりや呼び捨てにされても、ずっと渋い顔のままだ。
「確か、冒険者は己の腕一本で生きてるとかなんとか……これがですか? 徒党を組んで、ただわめき散らしてるこれが?」
これにはダンドンも歯を噛み締めたが、すぐにフーッと大きく息を吐いてこらえた。
「……なんとでも言え。なんと言われようと、儂は成さねばならぬ。この国の冒険者ギルドの頂点に立たねばならぬ。冒険者ギルドの開祖たる、エルグレコの遺志を継ぐために」
頂点に立つために俺たちから素材をぶんどって、偉い人に献上でもするのかね。
話をするのもバカバカしいが、昔の主の名が出てきてしまってはニケも尋ねずにはいられなかったようだ。
「エルグレコの遺志? どういうことですか」
「ほう、興味があるか。儂も偶然手にした古い文献で知ったことだからな、お前たちが知らぬのも道理だが……教えてやろう。エルグレコは常々こう言っていたそうだ。『冒険者ギルドは、ただひたすらに愛すべき冒険者のためにあれ』とな」
……胸を張ってさも名言のように言い放ったけど、大したこと言ってなくね。
「ニケ殿、そうなのか?」
「そうですね、確かにそのようなことは言っていましたが……」
ひそひそ話をする二人に構わず、ダンドンは熱く語り続けている。
「それがどうだ、今の冒険者ギルドの姿は。国におもねるどころか、商人共の顔色までをもうかがっておる。そのせいで冒険者は安い報酬で命をかけて働かされ、素材を得たとしても買い叩かれる。ランクの高い者たちはまだしも、C級に上がれないような冒険者の末路がどれほど悲惨か…………だから儂が変える。儂が冒険者ギルドを、あるべき姿に戻すのだ。冒険者が誇り高く生きられるように!」
「さすが統括……王都本部の連中に、統括の十分の一でも気骨があれば」
「アンタに一生ついてきますよ!」
強く宣言したダンドン。
熱く盛り上がる冒険者たち。
楽しそうな彼らを見て、俺が思うことはただ一つ。
やっぱりこのノリって──
「アホくさー」
ついこぼれた俺の呟きを拾い、ダンドンはため息をついた。
「やはり期待するだけ無駄だったか……貴様らは驕りすぎだ。ゆえに他者を省みず、アダマンキャスラーのときも手前勝手に挑むようなことをする。驕り高ぶった貴様らには、力無き冒険者の苦しみが目に入らんのだろうな」
正論ぶった言葉で責めてくるのがたまらなくうざい。
お前は自分にとって都合の悪い行動を取った俺たちに腹が立ってるだけだろうが。
「アダマンキャスラー戦の前に信用を失わせるようなことをしたのはそっちでしょう。勝ちましたし」
「勝てばいいというものではない。それはただの結果論だ」
「一人の犠牲も出なかった完勝なんだし、結果論でいいじゃないですか。誰かを危険に晒したわけでもなく、僕たちが負けても害は出ないと踏んで挑んだだけですし。それと力無き冒険者? そんな人たちは冒険者なんかやめればいいだけだと思います」
鼻で笑ったダンドンが首を振る。
「そんなに簡単な話ではない。これだから驕っていると言うのだ」
「簡単な話でしょ。あの水晶ダンジョンでずっとC級に上がれないって、どう考えても戦闘職じゃない人たちですよね。普通にやめた方がよくないですか」
ただの人間の錬金術師だった頃の俺でも、安全に戦い続けていたらいつかD級くらいには到達できた自信がある。
戦い続けてもC級になれないというのは、つまりそういうことなのだ。
そんな戦いに向いてない冒険者でも、宝箱とかで大きく稼げてしまうということがある。
そんなの当然極稀にしか起こらない幸運なのに、それを追いかけて冒険者になる者が後を立たない。
「冒険者を救う前に、そういう人たちが冒険者になるのを止めるべきではないですか」
まあ俺も初めは錬金術師なのに冒険者になろうとしてたが、それは強くなっとくためであり俺自身が冒険者で稼ぐためではなかったし。
ちなみにセレーラさんは俺たちが冒険者になるときに、忠告してくれたんだけどね。そうそう美味しい出来事なんてありませんわよ、と。
ダンドンはセレーラさんとは違う考えのようだが。
「貴様らはさぞ強い力を持って生まれてきたのだろうな。だから容易くそのようなことが言えるのだ。夢と憧れを持って冒険者を目指す者に、ただステータスが向いていないからやめろなどと」
強い力を持って生まれてきた、ね……。
まあ、ある意味ではそうだけど。
「……別にステータスに縛られろというつもりはないですけどね。でも夢と憧れっていうより、ただの欲望と言った方が言葉としてピッタリでは? 一攫千金狙いたいとか、有名になりたいとか。この人たち見てると、ほとんどそんな人ばかりだとしか思えませんよ。そんなんで無理して冒険者になるなら、さすがに自己責任でしょ。それを儂が救うからお前たちは素材を寄越せって? ホント馬鹿げてますよ」
言っておくが、これは説得である。
ニケやルチアと違い平和主義者で暴力を好まない俺は、話し合いで理解して引いてもらいたいのだ。
興が乗ってきたので面白半分に舌戦で叩きのめそうということではないのだ。本当だよ。だから二人とも、そんな不信の眼差しで俺を見るのはやめようね。
「しかも冒険者って金が入ったら入ったで『宵越しの金は持たねえ』とか言って、どんちゃん騒ぎしてますよね。次の日も休養日とか言って飲んでますし。それでその次の日に、『二日酔いだからやっぱ今日はやめとこう』ってギルドから帰ってくような人たちたくさん見ました」
「ふん。命をかけているのだ、生きて帰ってくれば羽目くらい外しもする」
「ええ、それは別に好きにすればいいですけど。でも金も貯めずに飲んだくれて末路が悲惨とか言われても、全く同情できないのがわかりませんか」
ハンターやマーセナリーのことはよく知らないが、ダイバーはそんな感じだ。
万年低級ダイバーがそんなんでも生きていくことができたというのが、水晶ダンジョンが甘すぎた部分なのだろう。
「でもよかったじゃないですか。水晶ダンジョンがなくなったので、あんたの言う力無き冒険者も今後減ってきますよ。ハンターやマーセナリーにも変なのが混ざらなくなって数が減って質が上がれば、報酬も上がるでしょう。あれ? ということはわざわざあんたが頂点に立たなくてもいいですね。そうなると僕たちから素材を巻き上げる必要もなく、これにて一件落着ということでは?」
「くっ、ベラベラとゴタクばかり並べおって……なにもわかっておらぬ小僧が!」
もはやマトモに反論もできていない。
渋い顔はどこへやら、目を釣り上げたダンドンの顔はだいぶ湯だっている。
「ハァ、冒険者を救うみたいなゴタク並べてたのはどっちなんですかね。せっかく冷静になってもらおうと思って理路整然と説明してあげたのに、そうやってキレるだけだし。そういうところ見ればよくわかりますよ。結局あんたは、根本から問題を解決しようとしてるんじゃない。ただ偉くなって可哀想な冒険者に恵んであげて、ありがたがられたいだけ。つまりあんたは──」
初めてダンドンに会ったときの印象は、大当たりだったのだ。
「──自分に酔ってるだけ」
豪快で子分思い……そういう自分で思い描いた自分に。
そうでなければ、いきなり素材を寄越せと命令なんかしてこない。大勢で取り囲んで脅してなんかこない。
なにが面子だ。本当に冒険者を救いたいという一心であれば、そんなもんかなぐり捨てて頭の一つでも下げてきたはずだ。
「きっきさ、キサマぁ……!」




