表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/145

5-20 やっぱり雑だった

時間に関するお話を全部カットしました。

今無理に入れる必要はない話なのに、テンポが悪くなりすぎたので。べ、別に日和ったわけじゃないんだからね。




 ご褒美決めは非常に難航した。


 俺が望んだご褒美は、もちろん二人が切り開いてくれた地球への帰還の道だ。

 ただし水晶さんが一人あたりに使える力は限度がある。

 誰でも使えるような物品にすると効果が低いものになってしまうので、スキルをもらうということは決まった。

 しかしそれがどうしても俺の求める形に収まらない。俺としては複数人で自由に往復できる力が欲しいのだが……。


 どうやら地球がある元の世界は、こちらの世界よりも位が高いようだ。だから召喚された者は、こちらの世界の者より強い力を持つのだろう。

 そしてそれがゆえに、こちらに来るより向こうへ帰る方が大きな力と高い技能が必要となる。


 水晶さんの見立てでは俺をこちらに喚んだ召喚陣は、希少な《転移術》スキルによって作られたのだろうとのことだ。

 仕組みとしては世界の境界に無理矢理穴を開けて、二つの世界の狭い空間を一瞬重ねるだけのものらしい。

 転移術スキルで設置できる転移魔術陣という、二ヶ所の空間を繋げる装置と原理はほぼ同じである。その程度であれば転移術スキルを極めた者が設置し、あとは潤沢な魔力があればやれるのだそうだ。

 ただその方法は事故も起こり得るし、世界にとってもよくないらしい。穴がなかなかしっかりとはふさがらないとかで。

 というかそもそも地球側には行けない。地球側の方が位が高いからだ。


 世界が重なったときどちらかの空間の中に、ある程度以上力のある存在がいるとする。そうすると世界が離れるときに、その存在は位の低い世界側に残るようなのだ。俺たちが裸でこちらの世界に召喚されたように。

 これはなんとなくわかる。

 こちらに来ると強くなるということは、こちらにいるのが楽で地球側にいるのは大変ということだ。だから世界が離れるときに向こうから弾き出されるか、肉体がこちらを選んでしまうかするのだろう。

 要するに召喚陣というのは本当は召喚陣ではなく、『二つの世界を繋げて偶然そこになにかいれば引きずり降ろすことになるよ陣』なのだ。

 そしてそれが転移術スキルの限界である。


 そういえば俺と一緒に召喚された中年男性教師が、転移術持ってて羨ましかったな。どうにかしたら帰れるんじゃないかと思って。

 教師はほとんど会話もしたことないまま、さっさと一人で逃げやがったが。

 でも持ってたら転移術で帰ること試みて無駄に時間を費やすことになったから、持ってなくてよかった。


 で、転移術は無理だとして、帰るにはどうすればいいか。

 転移術とは原理が違う転移用スキル、《(うつ)ろう(まなこ)》という超絶希少スキルであれば不可能ではないらしい。

 転移術がトンネルを掘って空間を繋げるものとすれば、《遷ろう眼》は注射針で自分たちを直接その空間に注入するようなもののようだ。水晶さんの言葉は硬すぎてよくわからなかったが、自分なりにそう解釈した。

 とにかく転移術より、性能がほぼ全て上だと言ってもいいみたい。

 このスキルを授かることは可能だそうだ。


 でも大きな問題が一つ。

 今の俺のMPでも、消費の大きい《遷ろう眼》で地球に移動するのは俺一人が精一杯なのだ。ニケやルチアのMPでは、そもそも無理。

 自分を含めずに転移することはできないので、これでは二人やセレーラさんを連れていけない。


 《遷ろう眼》じゃなくて、一度使えば消えてしまうものでよければ、みんなで転移できる力を与えられるそうなんだけど……。


「全員がその力を授かっても、三回だけか……どうする主殿、それにするか?」

「遷ろう眼が術式に起こせないのは残念ですね。可能であったら魔石で魔力を補充できたのですが」


 術式に起こすというのは、術を魔術陣などにして誰でも使えるようにするということだ。

 魔術ならおおよそ可能なのだが、金がかかるし使い勝手も悪いのでそうそう用いられるものではない。転移魔術陣なんて、悪用されかねないから昔作ったものがあっても潰されたりしている。

 遷ろう眼は、魔術ではなく高度で繊細な魔法なのでそもそも無理なのだ。


「魔石でも、主殿のMPの何倍も確保しようと思えば大変な量になりそうだがな。アップグレードでそれほど増やすというのは現実的ではないし」

「そうだな、今よりも何倍もってのはさすがに…………」


 いや、待てよ……数値を何倍にもするのは無理だが、逆に──。


「どうしました?」

「できる……できるな! これがやれれば、疑似的に何倍にもできるな! 水晶さん! スキルのアレンジってできるんだよね?」

『可能なれど、いくら制約をつけようが効率が幾倍にもなりはせぬぞ』


 例えばクールタイムを伸ばすとか、スキルに制限をつける代わりに効果を増したりすることができるらしいのだ。

 だが俺がアレンジをお願いしたいのは、どちらかといえばもらうスキルではない。

 これならきっと……。


 そして水晶さんと相談した結果、俺のもらうご褒美が決まった。




研究所(ラボ)(Ver.2)8》


 研究所八部屋。部屋の間取りを変更可能。

 研究所内に、所持する生産スキルに関する設備を設置することができる。ただし、設備や設備によってもたらされる素材は持ち出すことができない。素材は加工後であれば持ち出し可能。

 研究所内で所持するスキルを使用時、支援効果を受けることができる。

 内包スキル──《新世界への扉》




 俺が選んだのは、《研究所(ラボ)》の進化だ。


 いつの間にかレベルが八になってたが、そこは今どうでもいい。

 重要なのは以前まで支援効果は生産スキルしか受けられなかったものが、スキル全般に変わったことだ。

 そう、《研究所(ラボ)》内でのMP消費が、えっと、今レベル八だから……なんでも十四分の一になったのだ! これでみんなを地球に連れていける!


 《研究所(ラボ)》をいじるのに力を使ったせいで、《遷ろう眼》には制限がかかることになってしまったけど、それはしょうがないね。

 かかった制限というのは二つだ。

 転移距離に関わらず、一度使えば丸一日使うことはできないというもの。それと《研究所(ラボ)》内でしか使えないというものだ。そのせいで内包スキルという形になった。

 名前が変わったのは、《遷ろう眼》そのものではなくなったからだろう。


 それにしても《新世界への扉》って……俺は旧世界へ帰りたいんですけど。


 …………これの中身も一応()()()見とこうか。




《新世界への扉》


 新世界への扉を開く。




 うん、そんな気はしてた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ