4-19 二勝三敗だった
あのあと錨の破片を拾い集め、そっこー逃げた。
錨は素材こそ甲羅と同じアダマントだったが、甲羅とは違って攻撃の要だ。
俺たちの強化に魔物の素材を使用する場合、魔物の部位の用途によって伸びるステータスが変わってくる。
やはり今回、錨ではSTRが伸びるとわかったので、全員一気にアップグレードで強化することにした。
そして━━
レベル --
種族 錬成人 Wirepuller
職業 錬金人形師
MP 13180 /13180
STR 2433
VIT 3276
INT 1922
MND 4867
AGI 1721
DEX 2305
《鈍器術1》《錬金術8》《研究所7》《MP回復8》《MP消費7》《人形繰り3》《第三の目》《アップグレード》
レベル --
種族 錬成人
職業 雷帝剣神
MP 3060/3060
STR 6560
VIT 5510
INT 3346
MND 4483
AGI 3078
DEX 2726
《神雷》《危機察知8》《無限収納》《剣術10》《格闘術6》《MP回復4》《竜の威光》《鑑定眼》《神鋼の意思》《アップグレード》
レベル --
種族 錬成人 Fake Beast
職業 獣騎士
MP 2580/2580
STR 3738
VIT 8204
INT 2246
MND 6518
AGI 2273
DEX 2872
《盾術6》《剣術4》《槍術4》(《土魔術4》《手負いの獣》)《MP回復3》《直感(第六感)》《先見眼》《人化》《獣化》《アップグレード》
「うわぁ……」
「これは……」
「凄いな……」
テーブルを囲み、開示したステータスを全員でチェックして絶句する。
アダマンキャスラー素材で強化する前と比べて、STRが一、五倍、MNDが二倍弱、VITには二倍強上がってる……錬成人になったときからだと、三倍とかそういう上がり具合だ。
「あっ、《人形繰り》が三になってる」
なんと、操れる人形が三体になった。
……いや実は前から二にはなっていて、スキル的には二体操ることはできていたのだ。ただ、《憑依眼》は一つしか使えないから、俺かシータで直接見て操らなければならないのだ。なのでシータを動かしながらでも自分がちゃんと動けるようになるまで保留していた。
でも今回の甲羅上での錬金のようなことでもない限り、ほとんど自然にシータと自分が動けるようにはなっている。そろそろチャレンジしてもいいかもしれない。
他のMP関係や《研究所》は水晶ダンジョン攻略中に上がっていたのだが、正直MPも部屋も過剰な感がある。
「わ、私ももう盾術が六に……土魔術もあがっている」
ルチアは剣術と槍術は前に上がっていたが、盾術と土魔術が今回上がったようだ。
水晶ダンジョンで戦い続けてたというのもあるだろうが、あれだけのことをしたのだから納得である。
「二人とも楽しそうですね……」
ちょっとニケがいじけてる。
「ニケ殿はほとんど完成されているからな」
「格闘術上がったばっかだし、しょうがないだろ。でもMP回復上がってるじゃん。これも最近だろ?」
二人とも魔法魔術持ちだし、魔眼の使用にもMPは使う。武器とかに流す分でも自然に使うし、地味に助かるスキルだ。
「そうですね、それを慰めとしましょうか」
などと言いつつも、まだ物足りなさげ雰囲気を出している。表情はほとんど普段と変わらないけどわかるのだ。
多分それは、ステータスのことだけじゃないんだろう。
そして、やはりそのニケが口火を切った。
「マスター。思うのですが、このステータスであれば……」
「そうだな。このステータスなら……」
ルチアもすっかりその気である。
まあ……俺もだけど。
三人で顔を見合せ、ゴクリと喉を鳴らした。
「や…………やっちゃう?」
「はぁっ!」
気合一閃。前方の甲羅から飛び降りたニケが、剣を縦に振り抜く。
鮮血を浴びながら剣を返して飛び上がりながら斬り上げ、弱々しく振られる首を蹴ってニケは離れた。
木こりが木を切り倒すときのように、アダマンキャスラーの首は大きくえぐり取られている。もう首の三分の一ほどの深さにまで達しているだろう。それでも筋肉の塊のようなその首は動いている。驚くべき生命力だ。
でも、もはやただの悪足掻きにしかなっていない。
アップグレードから一夜明け、俺たちはまたしてもアダマンキャスラーに挑んだ。
まず狙ったのは、後方の胴体だ。
昨日甲羅を破壊したとはいえ、内部まで貫通するのは時間がかかるだろう……そう思っていた。
だが、今日のニケはキレッキレだった。
攻撃がしっかり通り、高い防御力という安心もある。それに多分昨日はルチアに美味しいとこ持ってかれたから、対抗心もあったのだろう。
執拗に攻撃を重ね、あっさり貫通してしまった。途中で振り落とされたりして、冷や冷やした場面もあったが。
そして貫通してしまえば中は脆かった。
ニケが適当に暴れてかき回したあと、魔石爆弾をぽいぽい投げ込んでたら沈黙した。
それで死んでくれれば早かったがそんなこともなく、前方の胴体との戦いがまだ続いている。
とはいえ、それもじきに終わる。
アダマンキャスラーは重たい後方の胴体のせいでほとんど動くこともできず、駄々っ子のように頭と手を振り回している。
こうなってしまうと、哀れにすら思えてくる…………わけがねえ!
こいつにルチアがやられかけたんだ。慈悲など無用!
俺も渾身の力でトゲトゲ金属バットを振るう。
よくもルチアを! 食らえや! おら! おらぁ!
と怒りを込めてアダマンキャスラーを殴っていると、ケモケモバージョンのルチアがバックステップで近くに着地した。
「ん? なんだ、主殿はスキル上げか? あまり近寄って巻き込まれないようにするんだぞ」
「あ、うん」
まあ……俺が殴ってるのは、ピクピク痙攣してる後方の足だからね……。
さすがに前には近づけません。縦横無尽に動き回ってるニケにはね飛ばされそうだし。ニケに対抗してケモケモになってるルチアにもはね飛ばされそうだし。ここまでくればもう盾として引きつける必要もないとルチアは判断したのだろう。
俺はしばらくポコポコ殴って、飽きたし疲れたので見学に専念することにした。
シータと本体で交互に見学しながら外で三目並べをシータとやってたら、五戦目に俺が負けたところで終わった。
アダマンキャスラーは死んだ。




