4-12 停滞してた
今日も今日とてアイシングリバティ参り……は、やめだ、やめやめ!
「飽きた! 六十五階層の攻略に行くぞ!」
ニケとルチアの半目が刺さるが、ここは譲らん。変顔で対抗していると二人が折れた。
「仕方ありませんね。氷の魔石はだいぶ貯まりましたし、一度どれほど使うか調べるのも悪くないでしょう」
「そうだな。気分転換も必要だろうし」
「二人とも大好き!」
嬉しさで二人にいっぱいチュッチュしたらトロトロになってしまったので、朝から一戦交えることになった。我が家に倦怠期とかはないのだ。
賢者にジョブチェンジして、昼前にスカスカのギルドへ。
「あっ、タチャーナ君!」
手を振ってくるピンク髪を無視して、空きカウンターでセレーラさんを探す。
「あっ、セレーラさん!」
手を振るとセレーラさんは気づいてくれたが、お仕事中だったので少し待つことにする。
「ひどくないかな?」
ダイバーの相手を終えたピンクが寄ってきてしまった。
「ああいうことされると鬱陶しいんですけど」
「同じことしてたよ!?」
相思相愛の俺たちをお前と一緒にするんじゃない。
この前こいつ━━ピージに受付やらせてあげてから、妙に絡んでくるようになってしまった。元気うざさも復活してきてるし。
まあ初めて見たときよりはマシになってるのかな? あんまり覚えてないけど。
「新たな寄生先の対象にしないでください」
「そんなつもりないってば」
「嘘ですね。貴女は男にヒルのように吸いついて養分を奪っていくのが生き甲斐の人じゃないですか」
「ひどい決めつけ!? いや、それはもちろん今までのことは悪かったと思ってるけど……でも本当に反省してるから。タチャーナ君には感謝もしてる」
どうだか。今はちょっと痛い目を見たばかりだからそう言ってるだけだろう。どうせすぐ忘れて同じことをするに決まってる。もっと痛い目にあえばいいのに。
しかしどうやら、ピージが元気になってしまったのは俺が原因らしい。
S級ダイバーであり、『リースの明け星』を潰した張本人である俺たちがこいつを許した形になったせいで、他のダイバーがこいつにちょっかいを出さなくなったそうだ。セレーラさんがそう言ってた。
こいつがイジメられようが、俺たちは全く気にしないのに……他のダイバーの根性のなさが悲しい。
そのことでセレーラさんが喜んでくれて、機嫌がよくなったのが唯一の救いだ。
「感謝の気持ちがあるなら、事務的なセリフ以外金輪際喋らないでもらえませんか」
「つ、つれなさすぎる……ニケさんもなんとか言って……なんでもないです」
俺を抱っこするニケの、ピージへの関心のなさに諦めたらしい。俺同様、ニケとルチアもこいつにプラスの感情があるわけではないのだ。
なのになんでわざわざピージは近寄ってくるのか理解できん。前はあんな打たれ弱かったのに、タフになってるし。
俺に助けるつもりなどなく、結果としてたまたま助かっただけなのはこいつもわかってるはずだが……やはり寄生狙いか。
「お待たせしましたわね」
ここでようやくセレーラさんがやってきてくれた。でもシッシッとやってもピージが去らない。
それを見て、セレーラさんがとんでもないことを言い出した。
「ピージさんと随分仲がよろしいようですわね。これからは彼女に貴方のお相手を任せようかしら」
「それはこの女を行方不明にしろという命令ですか?」
「なんでそうなるの!? 怖いよ!」
だったら俺の邪魔をするんじゃない。
クスクス笑うセレーラさんに記録用魔道具を渡す。
「今日も五十階層台に行きますの?」
一応俺たちが五十台に行くのは、レベルとスキル上げのためと言ってある。俺が魔石爆弾を作れるのがバレると、面倒なことになりそうだし。
「いえ、今回は六十五に様子を見に行ってきます」
「マスターが駄々をこねるので」
「飽きたんだから仕方ないだろ」
「もう、こらえ性がありませんわね。普通は階層を越えるのなんて、ときには何年も停滞することもありますのよ? まあいいですわ。言っても無駄かもしれませんが、無理だけはなさらないように」
頷きながらセレーラさんから魔道具を受け取ると、ピージがなにかを思い出したように声を上げた。
「あれっ? そういえば六十五って今日…………ううん、なんでもなーい」
俺が相手をしない仕返しか、ニッと笑って思わせ振りな態度で話を打ち切りやがった。
どうせたいした情報じゃないだろうが。
しばらくピージを無視してセレーラさんとお喋りを楽しんだが、セレーラさんも忙しそうだしほどほどで出発することにした。
「では皆様に水晶の輝きがあらんことを」
「皆さんに水晶の輝きがあらんことを」
「いってきまーす」
セレーラさんとオマケから、気をつけてと言葉をかけられながらギルドをあとにした。
そして六十五階層━━
「くそっ、あの女ぁ」
「こういうことでしたか」
「どうする、主殿」
ダンジョンに突入してすぐに俺たちの目に入ってきたもの、それは他のパーティーの姿だった。
ここに辿り着いているのは、俺たち以外では『マリアルシアの旗』しかいない。当然彼らはそのリーダーパーティーだ。
すでにあっちの六人も、こっちに気づいて向かってきている。
「逃げるか……いや、でもなあ」
今日はギネビアさんがいるな……痛いよニケちゃん。君が噛むときと噛まないときの基準が僕にはわからないよ。
そんなことを悩んでいたら、旗パーティーはすぐそばまで来てしまっていた。
ただ、こちらにコンタクトを取るのはギネビアさんだけのようだ。以前のお願いをちゃんと聞き届けてくれる姿勢は素晴らしいではないか。ちょっと旗を見直した。
プリプリをプルンプルンさせながら、魔女ルックのギネビアさん一人が寄ってくる。
「久しぶりじゃないか、坊やたち」
「お久しぶりです、ギネビアお姉ちゃんっ」
俺のショタスマイルとともに、ルチアだけ軽く頭を下げる。ニケは基本的に、他人に対してノーリアクションなのだ。
「誰だよあれ……僕たちのときと全然違うぞ」
とか坊っちゃんリーダーが俺の陰口を言ってるのが聞こえたが、無視無視。ぺかーと輝くショタスマイルでギネビアさんを照らし続ける。
だが、俺を見てにへ~と崩れた表情を、ギネビアさんは慌てて整えた。
むむ、ショタ攻撃を凌いだだと?
「コホン……こないだはよくも逃げてくれたわねえ」
どうやら以前勧誘から逃亡したのを、まだ根に持ってらっしゃるご様子。
「あのときはごめんなさい。やむにやまれぬ事情がありまして」
「ウソばっかり。そのお嬢ちゃんたちにいやらしい服着せようとしてただけじゃないか」
おおう、聞かれてたか。
「ギネビアお姉ちゃんも着ますか? 絶対似合いますよっ」
「そ、そうかい? ……ってあんなの着ないわよ!」
惜しい……バニースーツの貸し出しはしないが、俺たちのホテルに来てくれれば好きに着させてあげるのに。
「全く、可愛い顔してスケベな子だねえ。にしても、話には聞いてたけど……まさかもうこんなところまで潜ってるなんてね。しかも三人でなんて、どうなってんの? アンタたち」
マジックバッグから簡易な椅子を取り出し、ギネビアさんは腰かけた。
階層の入り口周辺では魔物は湧かないので、旗パーティーの残りのやつらもちょっと離れたところで休憩している。
少しの間お話しするのも悪くないか。情報も得られるかもしれないし。決してギネビアさんが暑そうに胸元をパタパタさせてるのに釣られたわけではない。
でもさ……。
「休むなら外に出た方がよくないですか? ゲートすぐそこですし」
「なに言ってんの。そんなことで頻繁に出入りしてたらカッコ悪いじゃない」
「はあ、そういうもんですか」
ダイバーの謎の見栄か……まるで意味がわからん。
まあ仕方ないか。
俺たちもくつろぐことにしようと、ニケにでっかいソファーベッドを出してもらった。
いつかお外でベッドを使う日が来ることを夢見て作っておいた、クッション性抜群の逸品だ。
「ダンジョンになに持ってきてんの……意味わかんないわよ……」
パタパタ胸元をガン見しながら聞いたところ、どうやらギネビアさんたちは氷魔術を遺宝瘤から手に入れたらしい。現在スキル上げ中だそうだ。使い手はもちろんギネビアさんである。
「さすがにアンタたちは手にいれてないのね」
「残念ながら。まだ下の階層でレベル上げ中ですよ。たまにはこっちの魔物でも倒そうかと思って、今日は来てみたんですけど」
「ふーん……なんかアンタたちの余裕は怪しいのよねえ」
「余裕なんてないですよー」
本当に……毎日あんな寒いとこ行ってるんだから。心が死にそうなのだ。
「ということでギネビアお姉ちゃん……僕たちのパーティーに入ってください!」
「おい! ふざけるな!」
離れたとこから、ちょいちょい話に入ってくる坊っちゃんが邪魔すぎる。
そんなに俺がニケの膝の上に座り、扇子でパタパタされているのが羨ましいかね。
ちなみにルチアも座ってはいるが、装備は出しっぱなしだ。旗は味方ってわけではないし。
「あはは。勧誘する気が、逆に勧誘されちゃったよ。ま、悪いけどアタシはここを抜ける気はないよ」
「僕を思う存分抱っこできますよ?」
「……ちょっと悩むねえ」
「ギ、ギネビア!」
焦る坊っちゃんに振り返り、ギネビアさんはケラケラと笑った。
「冗談だってば、坊っちゃん」
「僕より坊っちゃんを取るのですか……」
「お前が坊っちゃんと呼ぶな!」
名前忘れたんだからしょうがないじゃん。
ひとしきり坊っちゃんをからかい俺たちに顔を戻したギネビアさんは、昔を懐かしむように穏やかな笑みを浮かべていた。
「坊っちゃんというか、先代には恩があるしねえ」
「先代?」
「アンタたち本当になにも知らないのね。アタシらの事情は結構広まってるはずなんだけど。先代ってのはカルディルム子爵のことよ」
「なるほど……そういうことか」
俺は聞き覚えなどあるはずもなかったが、どうやらルチアは知っているらしい。
「西にカルディルム在り、とまで言われるマリアルシア王国の武門の名家だ。いや、『だった』と言うべきか。何年か前に取り潰しにあったはずだ」
つまり坊っちゃんは元貴族の息子だったってことか。
それで貴族を拗らせて、決闘だとか言い出すキャラになっちゃったのね。
別に興味はなかったがギネビアさんが話してくれたところによると、事業に失敗したのが取り潰しの原因だそうな。そんな名家が取り潰されるほどって、どんだけ大コケしたんだよ。
商人に騙されただけだと坊っちゃんは主張していたが、周りの反応からするとかなり怪しい。元子爵は取り潰しを気に病んで体調を崩し、すでに亡くなってしまったそうだが……きっと相当な脳筋だったのだろう。
そしてマリアルシアの旗には、子爵の元にいた者たちが多く在籍しているらしい。どうりでここまでこれるほど優秀なわけだ。
マリアルシアの旗という名前も子爵家にちなんだ理由があるらしいけど、聞き流したのでよくわからん。
「つまり皆さんは無職になったのでここで生活費を稼いでいるというわけですね」
「ふざけたことを言うな! 皆は僕の志に賛同してくれた者たちだ! 爵位を取り戻すという志にな!」
なんか坊っちゃんが憤慨しているが、普通に近寄って話に入ってこないでもらえませんかね。
そんな邪魔者坊っちゃんの話に、なぜかニケが食いついた。
「水晶ダンジョンに潜ることが、爵位を得ることに繋がるのですか?」
「え、あ、えっと、知りませんか。七十階層のルビードラゴンを倒し、それを献上すれば貴族に叙されるのがこの国の慣例なんですよ」
国としては素材と優秀な人材のダブルゲットでウハウハなわけだね。
「初めは領地のない法衣男爵ですが、僕は絶対に上に行ってみせますよ。ニケさん」
前は知らなかったニケの名前を覚えてきた坊っちゃんが、そう言って胸を張る。
肝心のニケはお前のことなどどうでもいいと言わんばかりに俺をクルッと回転させ、見つめてきたが。
「マスター」
「狙わんよ。貴族なんて絶対」
なにが悲しくてそんな面倒なもんにならんといけんのだ。
「そうですか……もちろんルクレツィアの件が済んでからのことですが、その選択肢も悪くないと思ったのですが」
そういえばそもそもの話、水晶ダンジョンにきたのは子供のために職を求めたのが発端だったな……。
ちなみに今は二人とも、低用量の経口避妊薬を飲んでいる。子供は欲しいが、今はまだそのときではないだろうということで話がまとまっている。
「主殿に貴族は無理だろう。器が違う」
「まあ確かにそうですね」
貴族になる気はないが、それはそれでひどくないかな……。
いじける俺を見て、二人してクスクス笑っている。
くっ、マスター兼主をイジメるなんて……このっこのっ! ヘディングでスイカ割ってやるぅ! うわっ弾き返されたぁ! 幸せっ!
「んっ。ふふっ、なにか勘違いしているようですが……今はいいでしょう」
一瞬で機嫌が回復した俺は、またクルリとニケに回された。
なんか凄い目で坊っちゃんが睨んでるんだけど、どうかしたのかなー。
「では皆さんは七十を越えたら貴族になるんですね」
「はっ、君は馬鹿か。なれるのは一人だけに決まっているだろう」
なにそれ凄い不公平。
確かに貴族の席というのはそう簡単に増えるものではないかもしれないが……。
「では貴方は自分が貴族になるために他の方に手伝ってもらっているのですか……結構欲深いんですね」
「ぼっ……僕が貴族に戻ることを欲だと!? 侮辱する気か!」
「あれ? えっと、間違ったこと言いました? 商人で言えば、貴方の親が手放した店を従業員みんなで働いて買い戻すってことですよね? で、それはもともとは親の店だったから、これは自分だけの店だって言ってるようなものでは」
別に他の人がそれでいいならいいんだけど。
他のメンバーは俺の言葉に苦笑いしてたり、反感からかブスッとしてたりだ。ギネビアさんみたいに恩があるというならまだわかるが、お家への忠誠心とかは理解できんな。
まあそのへんがどうであれ、自分が貴族になるのは当然と考えてるっぽいし、こいつが欲深いのは変わらんだろ。友達になるなどあり得ないタイプだ。
しかし人の振り見て我が振り直せというし、俺も性欲を少しは抑え……無理だな。そんなことをしたら二人も悲しむだろう。そう、俺の性欲は奉仕の精神でもあるのだ。絶対そうなのだ。
俺が今日の深夜の献立を考えていると、坊っちゃんはますますヒートアップしていた。
「間違っているさ! 貴族の再興を商人なんかと一緒にするな!」
なにが違うかよくわからん。
首をひねる俺を、顔を真っ赤にしながら坊っちゃんが指差してくる。
「だったら君はどうだというんだ! 一体なんのために先を目指して潜っている!」
「さあ……わかりません」
「…………はあ?」
そんな馬鹿みたいな顔されてもね。本当によくわかってないんだから。
もちろん潜ってる一番の目的は力を得ることだ。その力でルチアの復讐を手伝うために。
ただ最近は、今でも十二分にやりようはあるだろうし、もういいんじゃないかとも思っている。それを二人にも言ったことがある。決して寒いのが嫌だからじゃないよ?
だけど二人は潜り続ける気満々で、ルチアには完全攻略してからでいいとまで言われてしまった。どんだけ。
その真意を聞いてもルチアは言葉を濁すが、色々思うところがあるんだろう。凄いこと達成して、殺す前に自慢してやりたいとか。
なので多分今は俺個人としては、『まだ深く潜れそうだし、このまま進んでもっと強くなっとくかー』くらいの気持ちでしかない。
ってことはつまり━━
「惰性ですかね?」
いや、でも湧いてくる感情がないわけじゃないか。
クソ暑いのもクソ寒いのも嫌だけど、ルチアとニケがダンジョン攻略を楽しんでるのを見ているのは楽しい。セレーラさんとの触れ合いも楽しい。
俺や二人が強くなってくのも楽しみの一つと言える。
それを考えると━━
「遊びに来てるんですかね?」
命懸けではあるが、そのぶんエキサイティングだと感じてる部分も俺自身に確かにある気はするし。
ただ、二人に万が一があると俺は壊れてしまうので、それだけは本当にやめて欲しい。
もしそのときがあるとすれば、ワガママだけど三人一緒がいい。
俺の言葉にニケとルチアは我慢できずにプフッと吹き出し、笑いだした。
旗の面々は空いた口がふさがらない様子。
そんな反応されても、他に言いようがないんだからしょうがないじゃない。
「ふ……ふざけるな……」
俺を指差したままの手を、アル中かと心配になるくらい坊っちゃんは震わせていた。
「惰性だとか遊びだとか、そんないい加減な気持ちで潜るなんて……ダイバーを、ダンジョンをなんだと思っているんだ!」
「うーん、興味ないです」
このダンジョンが作られた理由なら、なんとなくわかってきた気はするけど。
「そんなに怒らなくてもいいでしょうに。むしろ僕は貴方みたいに欲深くないので、尊敬されてしかるべきだと思うんですけど」
「そ……尊敬? 君を?」
「だいたい他人が潜る理由なんてどうでもよくないですか?」
金子みすゞ先生も言ってるよ? みんなちがってみんないい、って。
「間違っている……君は間違っている」
坊っちゃんがなにかブツブツ言い出したと思いきや、また激昂して叫びだした。
「君は全て間違っている! 聞いているぞ、君は自分の都合でギルドのルールを破ったそうじゃないか! 明け星のことだってそうだ! 正々堂々と戦いもせず、卑劣な手で彼らを葬るなんて……話し合う道だってあったはずだ!」
んー……いい加減こいつ、ちょっと本気で━━
「どうせニケさんのことも卑怯な手を使って手に入れたんだろう!」
━━めんどくせえな。
「っ! ……坊っちゃんもうやめだ。休憩は終わりにしよう」
急に前にギルドで残ったおっさんが立ち上がり、坊っちゃんの肩を掴んだ。
ギネビアさんも立ち上がり、そそくさと椅子をしまった。
「……そうね。十分休めたし、続きをしましょ」
「待て、僕はまだ! こら、放せ!」
パーティーメンバーに拘束され、また坊っちゃんはドナドナされていく。
突然あちらさんが慌ただしく動き出したんだけど、一体どうしたの?
「懸命な判断だな」
「その辺りの嗅覚はさすがといったところでしょうか」
「ハハ……アンタたちと潰し合う気はないからね」
よくわからんルチアとニケの褒め言葉に、ギネビアさんは肩をすくめていた。
「ギネビアお姉ちゃん行っちゃうんですか? もうちょっとお喋りしましょうよ」
ショタアイを潤ませ、真一はおねだりの構え!
効果がないみたいだ……。
ギネビアさんは首を振り、背中を向けてしまう。
「坊やはどの顔が本物なんだろうね……じゃあまたね」
そう言って仲間を追いかけていった。
「どの顔もなにも、いつでも可愛いショタフェイスだと思うんだけど」
「ああ。たまにゾッとするほど可愛いぞ」
「近寄るのをためらうことがあるくらい可愛いですよ」
褒められてるんだよね?
まあギネビアさんも行っちゃったし、とりあえず……。
「帰るか……」
ハァ、なにしに来たんだろ。どうも最近空回りしてるような気がする。ハムスターみたいに雪山ぐるぐる回ってばっかだし。
ここらで一つ大きな変化が欲しいよ……。
その日からわずか五日後のことだった。
リースの街を震撼させる知らせが、前触れもなく舞い込んだのは。
アイスボーン……
我慢します……
できるかな……
頑張ります……




