銃-出現
それは一瞬だった。
いつもの風景が瞬きした後には、ほぼすべて消えていた。
例えるなら、落書きを雑に消したあとのような、いわば世界だった残滓、
そのようなものが宙に浮いていた、いやもはや上下の認識ができないのだから、
浮いてるという表現は正しくない。
俺は生きているのか、それすら分からない。
何が起きたのか、ほかの人は?
『いや、そんなことはどうでもいい』
混乱する頭にそんな声が聞こえた。
あぁ、そんなことはどうでもよかった。
考えるだけ無駄だ、目に見えるものにはもはや意味は無いのだから。
私が生きた世界はもうここにはない。
あぁ、耳障りだ。
声が聞こえる。
力を使えと。
戦えと。
世界を救えと声がする。
私は、ゆっくりと歩き出した。
再び東京の地へと。
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今日、世界は終わりを告げた。
今日、命が終わった。
そして生まれた力、
無数にある世界の一つが消えたところでなんの支障があるのだろうか、
かつて四人の勇者がいた。
四人の勇者は、無数に無駄に存在する世界を救い続けた。
それは確かに救いだった。
強い光、しかし偽物だ。
無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄無意味無駄、
だからハエ虫のように意味もなく、潰そう。
貴様らはただ目障りだった、だから殺そう。
「……お前……は、ガッ!!」
おっと、しゃべるなよ。
お前は虫だろ。
右手に持つそれをさらに強く握る。
我が立つは、高層ビルより高見の空間、
ゴミはそのまま落とせば、綺麗になるだろう。
我はそのまま手の力を抜こうと……。
センサーが反応する。
頭にビリっとくる感覚だ。
生体反応、バカな……。
かすかに残った地上に一人の人間が立っていた。
「お前を殺す」
ただ一言、
光が一面を包み込む。
白い装束、そして二丁の拳銃を携える、少年。
その姿に見覚えこそないが、これが本物であると確信する。
「……現れてくれたか、勇者よ」