銃-1
ビルが立ち並ぶここは、東京。
言わずもがな都会である。
そしてこの俺は、モブの一人、広い世界の中でも東京という小さな空間の中でも俺は男性Aとして処理されるわけだ。
そこに自分の価値を見出すつもりもない。
正義の味方とか、勇者とか、救世主とか、何かの「1」になるつもりもない。
でも憧れや夢は無いわけでないんだ。
そりゃあ現実味のないことはしない。
ただやりたいことやかっこいいと思ったことに対して、一生費やしてやりたいとか、
簡単に言えば仕事にしたいとか。
男ならやったことがあるだろ?
ゲーム。
俺は、RPGが好きだったんだよ、
ゲームの中の主人公は、俺自身ではないけど俺なんだ。
あの世界では、俺中心で世界が回る。
最初は、ずっとプレイヤー側だった、
でもいつの日かその世界を自分で作りたいと願うようになった。
そのためにやれることはやった。
そして俺は今日という日を迎えた、
最終決戦「最終面接」
⚡︎⚡︎⚡︎⚡︎final battle!!⚡︎⚡︎⚡︎⚡︎
Player
就活戦士 レベル100天海新地 23歳 独身!
HP9999 PP1235
装備
就活用スーツ上下 (イメージアップ)
就活用ネクタイ (イメージアップ)
黒光りする革靴 (イメージアップ)
skill
笑顔 (イメージアップ)
コミュニケーションレベル3
ふっ、勝ったな。
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現実は甘くないという。
思い通りにならないことの方が多い、
今回の面接でいえば、予想していた質問が全くされず、
あたふたした挙句にすっ飛んだ発言も多々あった。
一番はやはり、自分の好きなことを熱心に語りすぎてしまったことだろうか。
面接官の顔を見れば、「うわ、何こいつ気持ち悪い」と言わんばかりの顔をしていた……ような気がする。
帰路が長く感じる、歩くのが辛い。
電車で揺られながら、ただ意味もなく携帯の画面を眺める。
映し出される情報よりも反射する自分の顔の方が気になって仕方がない。
またしても俺は夢に敗れた。
明日からまた堕落した毎日を送るのだ。
そんなことを考えてたら、いつの間にか最寄の駅に着いていた。
まだいける、まだ大丈夫、次ならかならず、そんな言葉でどれだけ自分を、家族を騙し続けるのだろうか。
どうしようもない孤独を、永遠にも思える深い苦しみを……。
『……そんなお前こそふさわしい、この力はな』
世界が崩れゆく悲鳴が聞こえた。