プロローグの2
プロローグなのに長々しててすみません!
「ちなみにですが、あなたと件の老人で奇数か偶数かでサイコロ振って決めました。では、説明も済んだことですし、これから転移して頂きますね。」
ぱぁぁぁっと、白い空間が、輝きを増していく。え、待って待って待ってちょっと待て!?
「?なんですか??あぁ、パソコンのデータが心配なら、必要ないですよ?あなたという存在そのものを転移させるので、地球上であなたが存在したという記録も記憶も一切合切消滅しますので。では、改めて。」
一旦輝きを潜めたが、またぱぁぁぁっと空間が輝いていく。なるほど、データは消えるか、よかった。あんなデータやこんなデータが盛りだくさんだからな。って違う!そうじゃない!待ってくれ!!!
「まだ何か??あ、私としたことが、まだ転移先の世界の名前をお伝えしていませんでしたね。転移先の世界の名は「レオニエ」です。その世界で私は「女神アデーレ」と呼ばれ、人々から信仰されておりますので、教会や神殿を見かけたらなんか甘いものでも備えてください。さて、まだ何か言いたそうですが、他になにか?」
「異世界の名前もあんたの名前もどうだっていいよ!俺はもうなんもしたくないの!!天国か地獄に普通に行かせて!?どうせ魔物だとか魔族だとかいて、貴族が蔓延っててそんなに繁栄してない中世くらいの魔法のあるファンタジー世界だろ!?!?俺はわざわざそんな世界でサバイバルしたくない!!できるかどうかすらわからん魔法とか、男の夢のハーレムとかよりも、なによりもう働きたくないって言ってんの!!言ってないけど心が読めるんだからわかるでしょ!」
もう働きたくない働きたくない、テンプレ的に貴族に巻き込まれるのもやだし、危険生物とわざわざ命かけて戦うのだってしたくない。あぁいうのはゲームでやるからいいんだ、自分の体張って、命を賭けるもんじゃない。それを仕事にする冒険者とかもう目も当てられないわ、緊急招集とか断れない依頼とかあるってわかってんのに、そんなものに登録、所属するファンタジー主人公達の気が知れないわ、ほんと。
・・・・・・・・・あ、こんなこと考えてたら大事なこと思い出した。これが俺の思ってる通りなら、詰み、だ。
「あなたの考えていること、働きたくないことはよくわかりますが、あなたのレオニエ転移は既に決まっていることです。変更は絶対に不可能です。」
サイコロによってだるおおおおおおおおお!?認められるわけねええええええええだろおおおおおおお!!
「つかあんたここまであんたが言ってることまとめるとあれだろ、俺にもともとの肉体のまま、特別な力の付与もなしで送り出すってことだろ!?それこそムリゲーだろ!あほか!」
そう、この運任せクソ女神が言ったことをまとめると、俺に今までの肉体のまま、死ぬ前に転移させる。これだけだ。特別な力を与えるとか、そういう力が潜在的に宿ってるとか、そんなセリフは一切言っていない。詰みってのは、そういうことだ。なーんの力も持たないで、過酷な世界を生き残れるほど、俺の体も意思も、丈夫じゃないんだ。ただの一般人になにが出来るっていうんだ、馬鹿女神め。もう絶対この女神に敬意は払わん。絶対にだ。
「馬鹿とは聞き捨てなりませんね、仮にも女神の私に馬鹿とは。」
「だってそうだろ?仮にも魂のバランス調整で送るって建前のくせして、知識もない状態、つまり頭からっぽの言葉も通じないただの人間送り込んで生きろっていうんだろ?死ぬわ、んなもん。馬鹿か、馬鹿だろ、サイコロで決めるくらいだもんな、やっぱり馬鹿だよ。」
「む・・・。ですが、そのくらいわかっていますとも。さすがに言語能力は付けましたとも。ええ。さらに言うと、ただ言わなかっただけで人間以外の種族に肉体を変更することも決めてましたとも。サイコロで、ですが。」
・・・またサイコロか、いい加減にしろよ、駄女神が・・・。
「・・・ちなみに、その種族ってなんすか・・・?」
ハイエルフとか竜人とか、いるかは知らんがそういう種族なら知識なんかなくても何とかなるだろ、魔法とか強靭な肉体とかで。
「鼠族の獣人ですね。サイコロ振って決めました。」
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よし、わかった。俺も腹を括ったわ。自殺は地獄行きだっけ?天国行きの目はなくなるがしょうがない。もうどのみち死ぬことは確定してるんだ。もう一回、自分の手でやることにはなるが、ムリゲーで頑張って生きていくよりずっといいわ。あ、なんか頭めっちゃ冷えてきた。鼠だもんな。無理無理。いや、生きていくのが無理とか、そういうんじゃないから。鼠の獣人、鼠族で生きてくのも確かに無理だろうけど、鼠ってのがまず生理的に無理、やだ。全ての望みは絶たれたのだ。何年になるかはわからないけど、特に悪いこともしてないし、女神に連れ去られたって言えば情状酌量もあるかもしれない、ないかもしれないけど。よし、じゃあ転移だ。さくっと行ってさくっと逝こう。
「いえ、転移後すぐに死なれても、魂の選考が2度手間になるので嫌なんですが。日野さんの記憶で、ゲームのガチャガチャとかのランダム要素にハマっていたから、日野さんと会話しながら裏でサイコロを振っていたというのに。」
やれやれ、とでも言いたげに肩をすくめながらそんなことを言う駄女神。
あほか?ゲームとかでランダムが好きだっつっても、それは俺がプレイヤーで、キャラクターを操作するからいいんだよ?自分の生涯を決定づけるようなことを、サイコロなんかで勝手に決められて、納得行くと思ってることこそが間違いだわ。理由があって鼠族にしたとかじゃなくて、転移だってそうだが、俺はゲームのキャラクターじゃねえんだ。あんたに自由に右へ左へされるのは納得いくわけもないし、ただただ腹立たしいわ。異世界に行くのは決定?鼠族?言葉だけは伝わる?いいよわかったよ、行ってやろうじゃないか、異世界。滞在時間はどうせ1時間もないだろうな。
「じゃ、お待たせしました。覚悟も決まったんで、転移させてもらっていいですかね?」
「わかりました、こちらとしても転移してすぐに死なれても困ります。種族や生命力とか魔力とか決めさせてあげますから、それで納得してください。」
「もう一声よこせ。」
さもなくば死ぬ。ははは。まるで営業マンと悪質な値切りを要求する客のような図だな。
「くっ、いいでしょう。この後で肉体を決めてもらったら、その後に鑑定のスキルと、全言語理解のアビリティを付与してあげましょう。」
「・・・、わかった、ここら辺が落としどころだろうな。」
どうせそんなに無茶を言っても、却下されるだけだろうしな。サイコロで決まっただけで、俺である必要はないんだから。
「では、これであなたのこれからを決めていきましょうか。」
そう言って駄女神が差し出してきたものは、サイコロだった。
「そうきたかー。」
もう、何も言えないっすわ。
次回、いよいよステータス決めていきます。
今回も読んでいただいてありがとうございます。