プロローグ
久しぶりにこの週末は2連休だ。家でごろごろしてたいけど、腹減ったわ。
でも食材がない。外はくっそ寒いが、しょうがないか。スーバー行くべ。
・・・・なんて、思っちゃったのが運の尽きだったんだなぁ。
結論から言うと、この後俺は死んだ。
簡潔に言うと、スーパーに向かって車走らせてたら前日の雪のせいでスリップしたらしい車が前のほうで電柱にぶつかって止まってたんで、車を止めて近寄って、中を覗いたら運転席で爺さんが気を失ってて、脈があったんで110番して、ついでに救急車も呼ぶように言って、あ、住所はぶつかってた電柱見たよ、基本だね、そうだね。で、ドア開けたら運よく歪んでなかったんで、着てたコート脱いで脇と首固定してシートベルト外して車から引きずり出して、歩道まで行って、さて呼吸はどうかなってしたところでブレーキ音が聞こえてきて、ブラックアウト。
まぁ一気に状況だけいうとこんな感じか。
で、じゃあ死んだはずなのになんでこういう風に考えることができるのか?
俺、ファンタジー小説は結構読むんだよね。でもって、今いる場所は真っ白。果てもわからなければ距離もわからない。ついでに言うと俺の体もない。
あと、目の前に女神を名乗る人物がいて、俺が死ぬまでの状況を説明された。つまりそういうこと。ありがちな神様空間ってわけだ。
「日野悠一さん、どうです?思い出せましたか?」
目の前にいた女神がそんなことを言う。
日野悠一、それが俺の名前だ。さっきの説明を女神にされて、俺は記憶が途切れるまでのことを思い出した。ブレーキ音が聞こえたし、突っ込んできたのはまぁ車かバイクだな。つまり、死んだからここにいる。そういうことだろう。
「え、ええ、まぁ、はい、思い出せました・・・。」
ちなみにだけど、女神様すっげえ美人。背はだいたい160くらいか?髪は腰まで伸びる、流れるような銀髪。目は大きく碧眼で、鼻は小さく唇はぷるぷる。足はすらっとしてて、あと、胸が大きい。素晴らしい。
「それは何よりです。では早速、何故この場に連れて来たのか、それをお話ししましょう。」
ついに来たか。テンプレ的には勇者、そうじゃなくてもチートやるから何か成し遂げろ的なアレだ。
正直御免被る。え?なんでかって?
んなもん決まってんだろ、働きたくないからに決まってんじゃん。天国か地獄に行かせてください。
だって理不尽な要求を上司から突き付けられて出来なかったが認められないとか、クソ喰らえだ。ははは、俺がやってた仕事一つも引き継ぎしないで死んでやったぜ、クソ上司め!引き継ぎなしで自分でやってみろってんだばーかばーか!
勇者なんてその最たるものだろ!人類の希望背負って負けたら人類全てから恨まれるとかなんの罰ゲームだよちくしょう。つかそもそも勇者が魔王に負けること自体が許されないんだろ、そんな責任を負いたくないね、絶対。
・・・おっと、女神様が憐れむような目で此方を見てらっしゃる。
「・・・。ま、まぁ、そこまで言うのであれば仕方がありません。勇者にはしないでおきましょう・・・。」
あれ、俺の思ってることわかります?さすが女神様だわー。じゃあ早速天国か地獄に行かせてください、おなしゃす!
「ええ、わかりますよ、これでも女神ですからね。また、貴方は天国にも地獄にも行きません。そもそも、まだ死んでないですからね。」
やっぱり伝わってるわ、じゃああれか、女神様の裸体を想像しても伝わってしまうってことか?・・・やめておこう、視線が半端なく冷たくなってきてるわ、、、、。って、あれ?
「じゃあ、なんで俺、いかにも死後の世界入り口ですーみたいなところにいるんですか?死んでないってことは、病院のベッドとかで意識不明になってるとか?」
死んでないってことは、目を覚ませばまたあのクソみたいな営業のお仕事が待ってるってことかよ、、、ふぁっきんじーざぁす・・・!
「いいえ、今現在の貴方の現実の肉体は、暴走した車があと10cmくらいにある状況ですね。タイミング的には貴方の死という運命が、不可逆的に確定したその瞬間になります。車に轢かれて、即死するという事実が確定したその瞬間に意識だけをここに連れて来ました。つまり、貴方の意識を私が此処から戻すと、その瞬間に貴方は車に轢かれて死にます。」
10cmくらいって・・・。てか、それってわざわざ止める必要あったのか・・・?
「はっきり言って、必要ありませんね。」
「じゃあ、いったいなんでですか?」
「んー、ではその説明をする前に、今後の話をさせてもらいましょうか。ちょっと話が脇にそれましたからね。」
そらした訳ではないが、俺が気になったところを質問していたのも原因か。
「わかりました。お願いします。」
「はい、では説明しますね。まず、何故此処に連れて来たのかですが・・・・・・。」
その後の女神様の説明をまとめると、こうだ。
・女神様の管理する世界がいくつかあり、そのうちの一つである地球で人が増えすぎたこと。女神様が管理するいくつかの世界では、魂の総数が決まっているが、地球に偏り過ぎていて、他の世界の魂の数が減ってしまい、危ないからちょっと調整に入ったとのこと。
・魂をまっさらにして、赤ん坊に転生させるのにはかなりの時間を要するため、肉体がある上での転移が望ましかったこと。既に天国や、地獄での罰を終えた魂を転生させたが、あと1枠空いていたため、俺、つまり日野悠一を転移させる事にしたとのこと。
・これらのことを伝えるため、そして転移のための準備のため、此処に連れて来たということ。転移の為の準備とは、どんな世界に行くのか、また、どういう状況で転移するのかということを決めることだという。
「・・・・・・いや、理解はしましたが納得は出来ないですね。なんで俺なんです?」
自分で言うのもなんだが、俺は普通の人間だと思う。なんの取り柄も無いし、自信も無い。勇者っぽい崇高な使命感も夢もない。こんな俺を選ぶ理由がわからない。あと、転移の状況ってなんだ。時間と場所か?確かに町の広場のど真ん中に人が現れたら大騒ぎだ。
「なんでかって言われたら、特に理由は無いです。あえて言うなら死ぬことが確定したから、というのが理由になりますか。」
「いや、そうじゃないです。あの瞬間に死ぬことが決まった人間なんて世界中を見れば俺以外にもいたでしょう?なんでその中から、わざわざ俺を、ってことです。」
「あぁ、そういうことでしたか。それなら理由がなくもないですね。サイコロで、決めました。あのおじいさんと、貴方で、貴方に決まりました。」
女神様に会って、初めて見た笑顔だった。さっきまで事務処理をするような表情だったのに、サイコロで決めたという女神様のその表情は、とても神々しかった。
いや神々しいけど女神様、サイコロって・・・。
どうやら、俺の運命はサイコロで決められてしまったらしい。まぁ、変な理由並べられるより、よっぽどわかりやすいね、ちくしょー。