第9話 俺、魔導攻防隊《ルーン・セイヴァー》になります。
車内、颯にはもうひとつになることがあった。
「なあ絵利菜。何でおまえ魔導攻防隊になろうと思ったんだ?」
「うん、あたしが捕まった時、颯やしーにょんは必死で助けてくれた。そのとき思ったの・・・あたしもこんな力があったらなぁ・・・って」
「なるほどな・・・」
「でもすごいよね!あたしにも2人と同じような力を使う素質があるなんて・・・まだどんなのか分かんないけど・・・」
絵利菜はにししと笑いながら言う。
やはりあまり離れていないので、すぐに颯に家の前に着いてしまう。
「もうあたしん家近いし、あたしもここで降りるよ」
「ありがとうございました」
颯は車を降り、近藤にお辞儀する。
絵利菜もシートベルトを外し、車を降りる。
「実はね、あたしが魔導攻防隊になろうと思った理由はもう一つあるの」
「それは・・・!!」
絵利菜は「この続きは正式な同僚になってからの方がよさそうだね♪」とウィンクをして去っていった。
どうやら絵利菜はなる気でいるようだ。
「ただいまーー」
颯は玄関をくぐる。
「おかえりーー。ちょっと遅かったね?」
迎えてくれたのは姉の涼香だった。
「うん、ちょっとね・・・」
「今日はお父が久しぶりに帰ってくるんだから!」
颯たちの父親、蒼介は、普段東京に単身赴任している。そこまで遠くではないのだが、なかなか会いに行けない。
「んで、今日のおかずは?」
「いもフライよ」
他県ではあまり知られていない、いわゆるB級グルメのひとつである。そして東雲家全員の好物でもある。
「あいよ。んじゃ、カバンおろして、着替えて来んね」
そして数十分後、父、蒼介が帰って来た。涼香は階段下から弟2人を呼ぶ。すると颯と末っ子の晃が部屋着に着替え、リビングに降りてくる。
「父さんおかえり」
颯は笑顔で出迎える。
「「いただきまーーす!!」」
4人はいもフライをおかずに夕食を食べ始める。蒼介はあまり東京へ単身赴任していて、年に数回しか帰ってこられないので、もろフライは久しぶりだ。
「涼香、ソース取ってくれ」
「はい、お父」
4人ともこれが大好物なので、あっという間に平らげてしまった。
「ふぅー、食った食った」
蒼介が腹をさする。そこへ颯が口を挟む。
「あのさー・・・父さん・・・」
「ん?」
「近藤勇治郎って人に会ったよ」
「あっ、近藤先輩か・・・。しばらく会ってないなぁ・・・元気だったか?」
「うっ、うん。・・・じゃあ、その近藤さんが今、どんな仕事してるか知ってるの?」
「魔導攻防隊だろ?何度か新聞で見てるし」
「じゃあ、単刀直入言う。・・・俺、魔導士になった。それで魔導攻防隊に入りたいんだ!!」
「「・・・!?」」
蒼介、涼香、晃は声を出さずに驚く。
「見てもらいたいものがあるんだ。ちょっと庭に出てくれないか?」
4人は庭に出る。
「兄貴、準備できたよ」
晃は颯に言われた通り、昔姉弟3人ともやっていた剣道の稽古用に使っていたカカシを地面に刺す。
「悪いけど、ちょっとさがってて。神凪・・・召喚!!」
颯の右手にSKYの紋章と魔刀・神凪が現れる。
「刀が・・・!?」
「わーお!!」
「すげぇ・・・」
もちろん、3人共驚く。
そして・・・
颯が目を閉じ、「・・・フェザー!!」と言って開いた瞬間・・・刀の刃が翡翠色に輝く。
「いくぞ・・・はっ!」
魔刀・神凪が手から振られる。その瞬間風が起き、カカシが吹き飛ぶ。
「ふぅー。まあ、これが俺の授かった能力なんだ。・・・で、俺、魔導攻防隊に入ろうと思ってるんだけど・・・いいかな?」
という颯の問いに「いいんじゃないか?」「兄貴、俺も賛成だよ!なんかカッコイイ!」と、蒼介と晃は賛成したが・・・。
「私は反対だからね!下手したら死んじゃうじゃない!」
涼香だけは1人反対をした。だが・・・。
「・・・まぁ、誰かひとりはンなこと言うと思ってたよ。でも、俺が入る理由はそれだけじゃない。そう、もうひとつの理由は・・・」
颯が言ったもうひとつの理由、それを聞くと3人ともまた驚く。そしてそれまで反対していた涼香も、「本当なの!?分かるの!?」颯の両肩をつかみ全力で揺らす。
「姉ちゃん落ち着いてくれよ。まぁ、100パーセントとは言えないが、手掛かりは掴めると思う」
こうして家族の了承を得た颯は、部屋に戻ってスマホを持ち、電話をかける。その相手は・・・。
『もしもし』
「もしもし、近藤さん?颯です。今、電話大丈夫ですか?」
『おう、丁度メシが食い終わったとこだ。俺にかけてきたってことは、決心したみたいだな?』
「ええ。俺、魔導攻防隊になります!」