第7話 生命《いのち》の器
「なあ、美乃。おまえを疑いたくないが、この近藤さんって信用していいのか?」
颯が美乃の耳元で囁く。
「悪い人じゃないんですよ・・・。あれでも一応、魔導攻防隊の支部長ですし、普段は怠けてるんですけど、いざというときは助けてくれる人ですよ・・・。」
美乃は苦笑いで答える。
いろいろ考えているうちに車へと着く。
「颯、君は助手席に乗ってくれ」
近藤に言われたとおり颯は助手席に乗る。
絵利菜と美乃も後ろの席に座り、全員がシートベルトを締めると、颯が冷静な口調で近藤に問う。
「・・・で、近藤さん。なぜあなたがナギのことを知ってるんですか?」
「まあ、まずは案内してくれ。走らせながらでも話はできる」
そして4人は車に乗り込んだ。
「まずは詳細を話す。『ナギ・スカイオーシャン』彼の育ての親は、俺の遠い先祖だ。そしてこの世界は今、邪器によって危機に陥っている。・・・そして世界を救う鍵はSKYの紋章の担い手、空の聖騎士なんだ・・・」
近藤のその発言に颯と美乃は、口を丸くして驚く。その一方、絵利菜は全くと言っていいほど状況が読みこめていないのか、首をかしげる。
「ナギの墓を護るのが先祖代々うちの家系の役割だったんだが、俺の祖父さんが戦争のときに家宝のひとつでもあるその地図を失くしちまってよ。俺も詳しい場所は判らねーんだ。んで、見つけ出すために俺は魔導攻防隊に入ったんだ」
「なるほど・・・そうだったんですね・・・」
美乃が納得する。そして・・・。
「・・・判りました。近藤さん、あなたは嘘をついてはいない。何となくだが、目を見れば分かる。しかしまだ俺たちに話すことはあるでしょう?先ほど『失くしてしまった地図は家宝のひとつ』と言ってましたが、ナギに関係するものならそのことも話してもらえませんか?案内はそれからです」
颯が真剣な目つきで近藤に質問する。
「やれやれ・・・颯、君は鋭いな」
近藤はため息をつきながら、ジャケットの内ポケットに手を入れ、何かを取り出す。
「これだ」
近藤が取り出したのは、縦長六角形のロケットペンダントだった。。
「これが・・・ナギの物なんですか?」
颯が訊ねる。
「俺にもわからん。・・・だが、祖父さんの言う通りなら、何か関係があるはずだ」
「このロケット、開けてもいいですか?」
「ああ」
颯はボタンを押してロケットを開ける。
「っ!?」
「そう、何も入っていないんだ」
「それを確かめるためにもナギのところに行くと?」
「ああ。頼む」
「・・・わかりました。では案内します」
颯の案内で、近藤は車を出発させた。
車で移動中、絵利菜が急に静かになる。
「絵利菜さん、大丈夫ですか?」
隣に座っている美乃が心配そうに尋ねる。
「うんあたしは大丈夫だよしーにょん。それより颯、あんた車酔いの方は平気なの?」
颯が振り向く。
「ああ、デパート跡から皐月署までも平気だったし、ナギの墓もそんなに遠くない」
「ならいいけど・・・。でね颯・・・」
絵利菜が真剣な目をして颯に訊く。
「何だ?」
「戦ってた時に手に有ったあの模様がSKYの紋章なんだよね?」
「ああ」
「あたし、あの紋章・・・どっかで見たことあるような気がするんだ・・・」
「「えぇーーー!!!」」
颯だけでなく、美乃も驚く。
そしてふたりの声を聞いて、近藤は思わず急ブレーキを踏んでしまう。そのせいか、颯は軽く酔ってしまった。
「何!?颯もしーにょんもあたしがオタクだから、なんかのゲームかアニメで見たと勘違いしてると思ってんでしょ!?」
「いや、そうじゃないよ!驚いたんだよ!」
颯の言葉に美乃も全力でうなずく。
「・・・そう?それならいいんだけど・・・」
「でも絵利菜、どこで見たんだ?」
「う~~んそれが思い出せないんだよね・・・でも絶対見たことあるんだぁ・・・」
「まぁそのことは追い追い考えるとして、出すぞ」
近藤が話に割り込む。
「あっ、すいませんお願いします」
「ところで絵利菜、君は魔導攻防隊に入る気はないか?」
近藤が絵利菜に問う。
「えっ!あたし!?」
「ああ、君は魔法を使う素質がある。どうだ?」
「うん、入る」
「「早っ!!」」
思わぬ即答に颯と美乃は驚く。・・・当然だろう。
「はは・・・そうかなるほど。よしっ、判った。颯の分と一緒に申請しておこう」
近藤は思わず笑ってしまう。
「「お願いします」」
このあと美乃が「そんな簡単でいいんですか――!?」と全力でツッコミを入れたのは無理もない・・・。