第6話 御用改めである!
田藤納継を倒し、颯たちは安堵に浸っていた。そして・・・。
車の停まる音がした。
「ん?」
車のドアが閉まり、1人分の足音が聞こえてくる。
「絵利菜と美乃はここで待ってろ!俺が見てくる」
颯は警戒している。もしかしたら田藤の仲間かもしれない・・・。魔刀・神凪を構え、柱の陰から様子を見る。
「颯さん、どんな人ですか?」
美乃が問う。
「逆光のうえに、暗くてよく見えねえが、身長、体系からして・・・ウチの父さんと同じくらいの・・・大体40代半ばのオッサンかな?」
「・・・ん?もしかして・・・・」
美乃が柱の陰から飛び出す。
「・・・ばっ、馬鹿!!」
颯が止めようとするが、届かない。
「近藤さん!?」
美乃が近づいてくる男に向かって大きな声を上げる。
男も美乃の声に反応してこちらに振り向く。
「おー、美乃そこにいたか」
美乃が男に近づく。どうやら美乃の知り合いのようだ。
「美乃、その人・・・」
「さっきの電話の相手の近藤さんです」
どうやら悪い人間ではなさそうだ。
「ヤツはどこだ?」
「こっちです」
美乃が近藤を、田藤の倒れているエスカレーターホールへと案内する。
「「あの~~・・・」」
颯と絵利菜は声をかけようとした。だが・・・。
「話はあとだ。とにかくコイツを連れて外に出るぞ!悪いがそこの君、手を貸してくれ!」
「はっ、はい!」
颯が返事する。
「それと戦闘はもう終わったんだろ?危ないからその太刀はしまいなさい。美乃、おまえもだ」
「「はい!!」」
美乃は杖を端末に戻す。
一方颯の方は右手のSKYの紋章が光り、それに吸い込まれるかのように神凪が消えていき、紋章も消える。
建物の中は薄暗いうえに今はもう夕方で、颯と絵利菜はこの近藤という男がどんな顔をしているのか、はっきりとは判らなかった。
美乃と絵利菜が前を歩き、その後ろを近藤と颯が気絶した田藤を肩に担いで歩いて外に出る。・・・と、そのとき、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
「おっ、来たな」
どうやら近藤が呼んだらしい。
出入り口付近に着くと近藤の姿がはっきり見える。ラフなジャケットを着て、顎にひげを生やしたやはり40代半ばから後半の中年だった。
そして外には車が2台停まっていて、1台は普通のワゴン車。
もう1台はパトランプを付けた一般車っぽい車・・・いわゆる覆面パトカーというものだろう。そしてその覆面パトカーの運転席から、スーツをばっちり決め、メガネをかけた、仏頂面の30代半ばくらいの男が降りてきた。
「ようトシ」
近藤がメガネスーツの男に話しかける。
「近藤さん、コイツですか?例の脱獄犯」
「ああ、俺の部下とその友人2人が捕らえてくれた」
「・・・」
メガネスーツの男が颯たちを睨む。さすがに颯も少しビビる。
とりあえず気絶した田藤を車に乗せる。
「そういやあ自己紹介がまだだったな。俺は近藤勇治郎。魔導攻防隊皐月支部の支部長をしている。簡単に言っちまえば、美乃の上司だ」
近藤はジャケットの内ポケットから、美乃が持っていたものと同じ、エンブレム入りの端末を取り出す。
颯と絵利菜はこのとき初めて近藤のフルネームを知った。
「皐月署の土方だ」
メガネスーツの男も警察手帳を出して名乗る。
「へぇ・・・警部さんなんですか・・・」
美乃が土方の手帳をまじまじと見つめる。
どうやら美乃も土方に会うのは初めてのようだ。
土方が美乃をジロっと睨む。
「・・・しっ、失礼しましたぁーー!!わたし、近藤さんの部下の稲葉美乃です!!」
美乃が慌てて土方に挨拶をする。
「美乃の友人の東雲颯です」
「綾垣絵利菜です」
颯と絵利菜も挨拶する。
「・・・ん?東雲?・・・まさか、蒼介の息子か?・・・」
「!?・・・えっ!?近藤さん、父さんのこと知ってるんですか?」
近藤の発言に颯が反応する。
「やはり蒼介の息子か」
「あなたは父さんとどういう関係なんですか?」
「おまえの父東雲蒼介、アイツのことはいろいろ知っている。」
「ん?」
「アイツは・・・仲間だったからな・・・」
さすがに颯は驚いた。
(父さんが・・・魔導攻防隊だった?・・・だった?・・・どういうことだ?)
颯は、ひとり深刻に考える。
「ねぇしーにょん、あの近藤さんって人にはあたしたちのことどう伝えたの?」
「あっ、ごめんなさい。友人ってことしか言ってなかったです」
この絵利菜と美乃の会話は颯の耳には入ってこない。
「ヤツは高校時代の部活の後輩だ」
「ふぅ・・・」
近藤が煙草をふかしながら言った言葉で颯は我に返り、胸をなでおろす。
「なんだ?魔導士だと思ったのか?」
「・・・いやぁ・・はは・・・」
颯は苦笑いで誤魔化す。
「オホン・・」
何やら咳払いが聞こえる。4人とも土方の存在をすっかり忘れていた。
「では簡単な事情聴取を行う。署までついてこい」
土方は颯たちにそう告げると、
「・・・では近藤さん、コイツらを頼みます」
そう言って覆面パトカーの助手席に乗る。今まで気にしていなかったが、もう1人刑事がいるようだ。
「それじゃ俺たちも行くぞ」
「「はい」」
近藤の車に乗ろうとした矢先、颯はあることを思い出す。
「あっ!ヤバッ!カバン忘れてた!」
このいざこざでガンショップにカバンを置き忘れていたことを忘れていたのだ。
「それなら心配するな。多分おまえらのだと思ってトランクに乗せてある」
近藤は自分の車のトランクを開け、颯たちに見せる。するとちゃんとそこにはカバンが3つ置いてあった。
「あっ、俺のだ!!」
「あたしのもある!!」
「わたしのもです!!」
「「近藤さん、ありがとうございます」」
3人の声がハモった。
そして颯たちは近藤の車に乗り込み、土方の車について行った。
皐月署正確には皐月警察署に着くと、すぐに田藤は別の部屋に運ばれた。
颯たちは、ひとりひとり事情聴取を受ける。そんなに時間はかからず、合わせてほんの15分くらいだった。
「協力には感謝する。・・・それとおまえら、携帯を出して『赤外線受信モード』にしろ・・・」
颯たちはスマホを取り出し、言われたとおり『赤外線受信モード』にする。すると・・・。
「『土方輝歳』・・・。登録完了」
「オホンッ!わっ・・・私の番号だ!今度このような事件が発生した際には、直ちに連絡するように!」
威張った口調で土方はそう言って自分のデスクに戻った。
入口の方に戻ると、近藤が喫煙所で煙草をふかして待っていた。
「3人とも終わったみてーだな。大方トシに携帯番号の登録でも迫られてたんじゃないか?」
「はははぁ・・・。はいそのとおりです・・・。」
颯は苦笑いで答える。
「アイツ、昔から友だち作るの下手だったからなぁ・・・。でも悪いヤツじゃないんだ。許してやってくれ」
「はい」
「まあ、日も傾いてきたし、家まで送ってやろうか?」
「わーい」
「お手数かけます」
近藤の親切な言葉に絵利菜と美乃は歓喜をあげる。しかし、
「ありがとうございます。・・・でも俺はこれから約束があるので、すぐにそっちに向かいます」
颯はひとりその場を去ろうとする。だが、
「颯、ちょっと待ってくれないか?」
近藤が止める。
「何でしょう?」
「君にその力を与えたのは、ナギって少年じゃなかったか?」
「はい、そうですけど・・・」
「やはりそうであったか・・・」
近藤は煙草を吸い終わすと灰皿で揉み消し、自分の車へと向かう。
「話は車の中でする。絵利菜と美乃も来い、悪いが送るのはそのあとだ」
颯は気になっていた。なぜ近藤がナギのことを知っているのか?そしてなぜ会いたがっているのか?
・・・謎は深まるばかりである。