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魔超戦記 リリパットステップ  作者: 沢崎ハル
結成編
4/16

第4話 扉を開くとき

 オヤジをベッドに寝かせ、颯と美乃は路地裏へと歩いていく。

美乃(よしの)。改めてもう一度訊く。さっきの男とおまえの所属している魔導士とやらは別ものなんだな?」

 (はやて)が真剣な眼差しで訊ねるが、戸惑っていた。まさか、自分の友人が魔導士だったことに・・・。

「はい。さっきあの男が手にしていた大鎌、あれは邪悪な魔力の結晶石、邪器(ジャギ)で出来た産物。あれはとても恐ろしい物なのです。」

「・・・どんな?・・・」

 颯はごくんと、生唾を飲む。

邪器(ジャギ)とは遠い昔に存在していたとある王国を破滅へと導いたといわれる邪悪な魔力が宿る物です。手にするとその人の欲望に応じたとてつもない能力が手に入るそうです。そしてその人間を悪人へと変え、能力を使い、暴走し続けると言われています」

「それはマズイな・・・」

「それを殲滅(せんめつ)したり、魔法犯罪を阻止するためにわたしたち魔導攻防隊(ルーン・セイヴァ―)がいるんです。魔導攻防隊(ルーン・セイヴァ―)は、邪器(ジャギ)に対抗できる武器『魔器(マギ)』を用いて戦い、邪器(ジャギ)の暴走を防いでます」

「さっきの杖みたいのがおまえの魔器(マギ)ってやつなんだな?」

「はい」

 美乃は話を続ける。

「うちの学校にも、この町にも何人ものエージェントがいると聞いています。・・・詳しくはわたしも判らないんですけど・・・」

「・・・」

 颯は少し黙り込む。その刹那、わずかだが右手の甲に紋章が現れ、翡翠色に光りだす。それを見つめた颯は決意した。

「美乃・・・」

「はい」

「おまえも正体を明かした。今度は俺から話すことがある・・・ちょっと着いてきてくれ」


 颯が美乃を連れてきた場所は、今朝来た森の前だった。

「ここに何かあるんですか?」

 颯は右手を掲げる。すると翡翠色に光りだし、目の前に道が現れる。

「行くぞ」

「颯さん、これって・・・!?」

「おまえには話しておく。俺は空の聖騎士(スカイ・シュヴァリエ)の後継者なんだ」

「えっ!?」

「実は今朝の俺の夢にナギって男の子が出てきたんだ」

「・・・それって・・・」

「そいつは『君は、ぼくの力を受け継いだんだ』って言ってた」

 颯の話は続く。

「それで学校に向かう途中、半透明のナギを見かけてここに案内された。空の聖騎士(スカイ・シュヴァリエ)の話も聞いた。そしてここは、先代のナギ・スカイオーシャンの墓だ」

 目の前には西日に照らされる西洋風の墓がある。

「待ってたよハヤテ」

 針葉樹の木陰から1人の少年が現れた。

「・・・ナギ、実は・・・」

「ただ事じゃなさそうだね」

「ああ・・・、空の聖騎士(スカイ・シュヴァリエ)になる決意ができたよ」

「よかった。その言葉を待っていたよ。・・・ん?で、そちらの女の子は?・・・あっ、魔器(マギ)の使い手だね」

「ああ、彼女は美乃。俺の友だちで、魔導攻防隊(ルーン・セイヴァ―)ってやつの一員らしい」

「ああよかった。まだ聖の(ちから)は失われてなかったんだね・・・」

 心なしかナギの元気がない。

「やはり魔器(マギ)のことも知ってるんですね」

 美乃が頷く。

「それでナギ、俺の幼馴染みがさらわれた。相手の武器は美乃によれば邪器(ジャギ)ってのからできたものらしい。そのためには空の聖騎士(スカイ・シュヴァリエ)のちからが必要な気がするんだ、時間があんまし無ぇ。扉はどうやったら開くんだ?」

SKY(スカイ)の紋章が鍵になってる。その手で触れれば開くはずだ・・・」

「よし!」

 颯は右手で扉に触れる。すると紋章が光りだし、それに共鳴してか、大きな扉が開き、3人は中へと進む。

 扉の先には神殿のような部屋があり、奥には剣の刺さった台座があった。

「あれか!」

颯は台座に上る。

「美乃・・・」

「はい」

「俺、決めた!」

「えっ!?」

「俺も魔導攻防隊(ルーン・セイヴァ―)になる。・・・今も邪器(ジャギ)のせいで悪人になっちまってる人がいる。なんの関係もないのに巻き込まれてる被害者もいる。・・・現に絵利菜もそうだ。俺はそんな人たちを1人でも減らす手伝いでもいいからしたい!」

「わかりました。上にそのことを報告するのは、この戦いが終わり、絵利菜さんを助け出してからでいいですか?」

「ああ。よろしく頼むよ・・・じゃあ、いくぜ!!」

 颯が台座に突き刺さった剣を抜く。その刹那、颯の右手の紋章と抜いた剣が翡翠色にまばゆく輝く。

「「うわっ!」」

 まばゆい光が消えると3人はあることに驚く。

「「剣の形が変わってる!!」」

 抜く前は西洋風の両刃の剣だったのだが、颯の手に渡った瞬間、太刀の姿へと変形していた。

「ナギ、これはどういうことなんだ?」

「ぼくにもわからない。でもその(やいば)の色、それはぼくが使っていた時と同じ色をしているし、紋章も光っているから間違いなくぼくの愛用していた剣、ウェントゥスだ。どうやらこの剣は担い手によって形を変えるようだね」

「・・・」

 颯は少し目を瞑る。

「なあナギ、この剣・・・いや刀、すまないがウェントゥスから改名してもいいか?」

「・・・うん、もうそれはハヤテの物だもの。好きにしていいよ」

「・・・決めた!こいつの名は『神凪(かんなぎ)』だ!!」

 颯は刀を天にかかげる。夕焼けの日差しが差し込み少し眩しい。

「ハヤテ、それって・・・」

「ああ、おまえから譲り受けた剣だからな。おまえの名は入れようと思ってはたんだ」

「ハヤテ・・・」

 ナギは涙ぐむ。

・・・しかし

「あれっ!?」

 神凪が颯の手から消える。

 持っていた右手の甲を見てみる。光も紋章も消えている。

「でもいつでも呼び出せるから心配しないで」

「ああ」

「颯さん、急いでください!約束まであまり時間がありません!!」

 美乃スマホの時計を見て驚く。

「ああ、ナギ・・・行ってくる」

「あっ!待ってハヤテ!!」

 颯と美乃は足を止め、振り向く。

「その子を助けてからでいい、必ずここに戻ってきて!大事な話があるから・・・」

「うん判った。必ず戻ってくるよ!」


 絵利菜処刑まであと10分。


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