第3話 立ちはだかる者
ナギの墓を後にした颯だったが、授業も全く頭に入らず、1日中、ナギや空の聖騎士のことについて考えていた。
そして放課後・・・。
(勇者かぁ・・・俺、世界を救うために旅に出ないといけないのかな・・・)
そんなことを考えていると、耳元で何か声が聞こえる。
「・・て・・やて・・・。颯ぇ!!」
「うわぁ!!びっくりしたな!!もう!!」
振り向くとそこには絵利菜と美乃た。
「どうしたの!?1日中ぼーーっとしちゃってさ」
「何かあったんですか?」
「・・・いや、なんでもないよ」
2人には「世界を救う勇者の力を受け継いだ」なんて言えない。
「それで颯、このあと暇?」
「う、うん」
「んじゃ付き合って」
「へっ?何に?」
「ゲーセン。これからしーにょんと一緒に行くんだ。・・・さあ、行くわよ!!」
「ちょっ、腕引っ張んなよ!!」
絵利菜に強引に連れられてきたところは近くのデパートだった。
プリクラを撮ったり、エアホッケーをやったり、パンチングゲームをしたり、クレーンゲームをやったりした。それらがやり終わったあと、美乃が颯に向かって囁く。
「どうでした?颯さん」
「えっ?・・・まぁ、楽しかったけど・・・」
「それならよかった♪」
「そういえば美乃、みゃんちーはどうした?」
「みゃんちーは毎晩抱いて寝てます。」
「・・・まぁ持ってたら今頃、絵利菜がもふもふモードだもんな・・・」
「それと颯さん」
「ん?」
「その絵利菜さんですけど、今日1日の颯さんを見て、『元気づけてあげよう』と誘ったんですよ」
「・・・そうだったのか・・・・悪かったな付き合わせちまって・・・」
「元気出ました?」
「ああ、ありがとな。おまえたちには感謝してるよ」
「その言葉、絵利菜さんにも言ってあげてくださいね」
「そうだな・・・おーーい、絵利菜ぁ!!」
「ん?」
少し前を歩いていた絵利菜が振り返る。
「今日はありがとな」
「元気出た?」
「ああ、もう大丈夫だ。」
「んじゃ、もう一軒付き合ってよ」
「「へ?」」
颯と美乃の声が重なる。
「・・・なっ!・・・なんじゃぁーー!!こらぁぁ!!!」
颯が驚いた顔で怒号を上げる。
「何ってモデルガンショップだけど?」
「んな物は見りゃわかる。なぜここに来た?」
「エアガン買うために決まってんじゃん」
「・・・ですよねぇ~~・・・」
ここは、今はほぼゴーストタウン化した商店街『さつき商店街』そこにある大野火薬店、窓から見る限り、エアガンやガスガンや電動ガンのモデルガンやスリングショットの他、釣り道具、そしてドッグフードやバスクリンと、意味不明な組み合わせの品揃えが所狭しと並んでいる。。
「新型が出たんだよ」
「・・・そういやあおまえ大好きだったもんなぁ~~・・・エアガン・・・」
颯は苦笑いする。
「どういうことなんですか?わたし、聞いてませんけど・・・」
美乃が会話の間に入る。
「エアガンのことなんて、わたし何もわからないし、ちょっとそこの本屋さんで立ち読みでもしてます」
「俺はコンビニで飲み物買ってくるよ。2人とも何がいい?」
「わたしはレモンティーで」
「あたしはカフェオレ。んじゃ、2人とも10分後にここに集合ね」
そう言い残し、美乃は本屋へ絵利菜は火薬店の中へと入っていった。
10分後、絵利菜に頼まれたカフェオレ、美乃に頼まれたレモンティー、そして自分で飲むサイダー、3本のペットボトルが入った袋を手に下げ、颯はつぶれかけの商店街に戻ってきた。
「ちっと遅れちまったかな?」
そう思っていたのは颯だけではなかった。
「颯さぁ~~ん!!!」
「美乃!?」
美乃が本屋の方から必死に走ってくる。
「はぁ・・はぁ・・。よかったぁ!!間に合ったぁ!!・・はぁ・・はぁ」
「おお、美乃!!俺も今来たとこだから安心してくれ。ほら、頼まれたレモンティー、買ってきたぞ」
「ありがとうございます。絵利菜さんまだなんですね、でも飲むのは3人そろってからにしましょう」
「そうだな」
「「こんにちは」」
2人が店に入ると、そこには予想もしていない光景が広がっていた。
カウンターの奥でおびえるショップのオヤジ、目の前で不敵な笑みを浮かべる身長2メートルくらいの40前後の大男、そして大男の左腕に捕まれてる絵利菜。
「絵利菜!!」「絵利菜さん!!」
「ほう。てめーら、この嬢ちゃんの連れか?」
「そうだけど・・・」
颯が答える。
「おいおい。ガキのくせに両手に花とは、いい趣味してんな小僧」
「・・・んなんじゃねぇよ!!・・・それよりオッサン何モンだ!?絵利菜を放しやがれ!!」
「てめーらなんかに名乗る名は無得ぇ」
「・・・は・や・て・・・。しぃ・にょ・ん・・・」
絵利菜は首をつかまれて苦しそうだ。
「絵利菜!!」
「おーーっと小僧、それ以上近づくんじゃねぇぞ。この嬢ちゃんの首を刈られたくなきゃな」
大男の右腕から、黒い大きな鎌のようなものが出現した。
「なっ!!何なんだコイツ!?」
颯の動きが止まる。
「まぁいい・・・お前らにチャンスをやろう。この町の魔導士共に伝えておけ!!今から1時間後、つまり午後6時までに空の聖騎士をこの先にあるデパートあとの廃ビルまで連れてこい。必ず連れてこいよ。か・な・ら・ず・だ・ぜ・!・!・!」
「空の聖騎士だと・・・」
颯の脳裏に今朝のナギとの一件が過る。
(なんでコイツが空の聖騎士のこと、知ってんだ?・・・つーかこのオッサンの顔、どっかで見たことあるような?)
一瞬我を失う颯だったが、すぐに我に返る。その刹那、美乃が颯の目の前に立つ、しかしいつもの大人しい仕草ではなく凛と構えている。
「あなたのその鎌、邪器ですね?」
しかも右手には、先の方に白い宝玉のようなものが付いた1メートルちょっとはありそうな銀色の杖を持っている。
「貴様、この町の魔導士か?」
「そうですが、何か?」
大男の問いに美乃は答える。
大男の左手を見てみると絵利菜は無傷のようだが、気を失っている。
「なら話は早い。さっき言った通り空の聖騎士を連れてこい。1分でも遅れたらこの女を殺す・・・じゃあな」
大男は、テニスボールくらいの大きさの球を天井に向かって投げた。・・・すると、球から煙が出て視界が奪われる。
「うわっ!」
「大丈夫ですか!?颯さん」
「美乃、とりあえず脱出するぞ!!窓かドアを探せ!!」
「はい!!」
美乃は手探りで入り口のドアを探し当て、全開にして外に出る。
「けほけほっ・・・颯さん、大丈夫ですか!?」
「ああ・・・げほっげほ・・・」
颯も出てきた。ガンショップのオヤジを担いで。
「大丈夫ですか?」
「ああ、俺は大丈夫。それよりオッサンは大丈夫なのか!?」
「よかったぁ・・・。あの煙は単なるCО2ガスだったようなので、あまり害はないと思います。」
「絵利菜は!?」
辺りを見渡すが、大男も絵利菜の姿もない。
そして不思議と店の中の煙も消えていく。
「もうあの男に連れられて廃ビルでしょう」
「くそぉ!!」
颯は石畳に地団駄を踏む。
「騒ぎになってなくてが幸いです。とにかくおじさんの方は奥のベッドに寝かせておきましょう。それと颯さんにはお話があります」
「美乃、おまえは一体?・・・」
「・・・すいません黙っていて。実はわたしはこの町の魔導士の1人なんです」
美乃はスマホとは別の小さな端末を取り出し、颯に見せる。そこには剣と杖が盾の前で交わっているエンブレムが、メタリックブルーで刻まれていた。手に握られていた銀色の棒はその端末へと消えていく。
「・・・えっ!?」
「さっきあの男が『空の聖騎士』と口にしたとき、何か知っているようでしたよね?話を聞かせてもらってもいいでしょうか?」