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魔超戦記 リリパットステップ  作者: 沢崎ハル
結成編
2/16

第2話 SKYを継ぐ者

 その日の夜の東雲家(しののめけ)

 颯には同級生からは美人と評判な3つ上の姉、涼香(すずか)と、真ん丸と太ったの2つ下の弟(ひかる)がいる。夕飯の準備に取り掛かっていた。・・・とはいっても、準備をしているのは涼香だけで、颯と晃は携帯型ゲーム機で対戦をしていて、男たちはそれぞれ熱くなっていた。

 ゲーム画面を必死に見つめながら「アイスストーム!」と叫ぶ颯に対し、「アレイアードスペシャル!」と叫ぶ晃。パズルゲームで対戦していて、2人は連鎖に応じてのキャラクターのセリフを真似ているようだ。

「ばたんきゅぅ~」

「残念だったな!」

 結局、晃の勝利となった。

「ごはんできたよ~」

男たちは「はいよ~」と返答した。テーブルの上を、颯が片付け、晃が台布巾で拭き、涼香が料理を運ぶ。

3人の「いただきま~す」で食事は始まった。

今夜の東雲家の夕飯はカレーだ。涼香は辛いのが苦手なので1人だけ中辛を食べる。颯と晃は辛口なのだが、その中でも晃は、辛口カレーだけでは刺激が足りないのか、ブラックペッパーと粉末の唐辛子をかけて食べる。


「・・・ふぅ~・・・ごちそうさま」

 食事を終えた颯は居間に寝転がる。そして数時間後、風呂に入り床に就いた。

 その夜、颯は不思議な夢を見た。それは、夢というにはとてもはっきりしたものだった。

「ここは・・・」

辺りは何もない真っ白な世界、そんな中に自分は立っている。

 しかし右手の甲を見てみると、翡翠色(ひすいいろ)の輝いた先の渦巻いた勾玉のような模様が描かれていた。

「なっ!なんなんだこれは!?」

 そこに声が聞こえてきた。

「君は、ぼくの力を受け継いだんだ」

 目の前に突然、1人の男の子が現れた。鼻筋が通っていてけっこうなイケメン、歳は自分と同じくらいのようだが、RPG(ロープレ)の登場人物のような服を着ていて、髪色も現実の天然ではありえない、藍色(あいいろ)をしていた

「ぼくはナギ。君は?」

「俺は、(はやて)

「・・・ハヤテ?目が覚めたら、ぼくに会いに来て」

 ナギと名乗った少年はそのまま光の渦の中へと消えていった。

そして颯は目を覚ます。そこはもちろん自分の部屋のベッドの上。もちろん右手の甲を見ても何も描かれていない。

「目が覚めたら、ぼくに会いに来て」その言葉が脳裏から離れない。あの少年はいったい何を伝えたかったのか、颯は全く分からなかった。

「ん~~・・・。もう7時かぁ・・・」

 颯はスマホを見る。今日も学校なのでいつも通り制服に着替え、自分の部屋からリビングへと降り、朝食をとる。ちなみに今日の朝食は、昨晩残ったカレーである。

 カレーを温めていると、姉の涼香が降りてきてテレビをつける。

「おはよ~」

「おはよ・・・今、カレー(あった)めてっから・・・」

「私はいい・・・」

「そうだったな・・・姉ちゃん、2日目のカレーは食わねぇんだったな」

「なんか適当に探すよ」

 2人が用意をしていると末っ子の晃も降りてきて、朝食が始まる。

「「いっただきま~~す」」


 3人は戸締りなどを確認し、玄関の鍵をかけ、出発する。

 今日は絵利菜は日直のため、先に学校に行っている。颯はウォークマンに入れた大好きなアニメソングを聞きながら、いつも行く学校へと歩き始める。しかしあの夢が脳裏から離れない。

「ナギ、おまえはいったい何者なんだ・・・?」


 学校に向かう途中、颯は人通りの少ない道である人物を目の当たりにする。

 RPG(ロープレ)に出てきそうな服装をしていて、藍色の髪をした自分と同じくらいの男の子。間違いない夢に出てきた男の子だ。しかし半透明に透けている。

「・・・ナギ!?」

 颯は思わず口を開く。すると半透明な少年も口を開く。

「ハヤテ!!」

 颯はウォークマンの音楽を止め、ナギに近づく。

「なんでおまえ、透けてんだよ?幽霊なのか?」

「しーーーっ!!ここじゃ少しとは言えど人目に付く。ぼくの姿や声は見えないし聞こえないけど、君からの言葉は丸出しだ。とにかくぼくについてきて」

 半透明の少年は宙に浮かび、進みだす。

「ああっ!!ちょっと待てよ!!」

 とにかく颯はナギについて行くことにした。


 ついて行くとそこは人気(ひとけ)の全くない森の前だった。

「ここに何かあるのか?」

「手を見てみて」

 ナギの言うとおり手を見る颯。右手の甲に夢の中で出てきた模様が浮かび上がる。

 先の方が渦を巻いた勾玉のような模様、それが翡翠色の輝いている。

「夢じゃなかったんだな!!」

「空にかかげてみて」

 またナギの言うとおりにしてみる。するとこんどは正面の木々が消え、1本の道が現れた。

「うわっ!」

 颯が驚くのも無理はない。現れた道に足を踏み入れた瞬間、ナギの姿は半透明からはっきり見えるようになったのだ。

「この中ではぼくも普通でいられるんだ。この先だよ着いてきて」

 颯は恐る恐る歩く。道を抜けると日当たりの良い小高い丘があり、そこには1本の大きな針葉樹と1つの西洋風の墓、それと奥には大きな扉があった。墓には見たこともないような文字が刻まれていた。

「なあナギ、これ何て読むんだ?」

「『ナギ・スカイオーシャン ここに眠る』」

「って・・・!?」

「そう、ぼくのお墓だ」

「えっ!!どういうことなんだ!?俺には全然わかんねぇ!!」

「じゃあ、順を追って説明するね。ぼくはとある王国で生まれ育ったんだ。だけどある年に王が亡くなり、新しい王に変わったその時から国は大きく変わった。そう・・・絶望の方向へと・・・。」

「その話・・・俺、知ってる!!」

「なんだって!?」

「子供の時、母さんがよく話してくれたんだ。確かそのあと勇者が現れて、翡翠色の剣を使って邪悪な王を倒し、のちに伝説を残したんだけど、最後の一撃を切り裂いたとともに勇者は命を落とした。・・・って。・・・っあ!!」

「それがぼくなんだ。そして気が付いたらこうなっていた。最近、あのときのような気配を感じるんだ・・・」

「えっ!!」

「そこの扉の奥にはぼくが邪悪の王を倒した時に使った剣がある。その剣を使ってぼくの代わりに邪悪の王を倒してほしい!!その右手にあるSKY(スカイ)の紋章、君が受け継いだのは勇者の(ちから)は『空の聖騎士(スカイ・シュヴァリエ)』なんだ!!」

「ナギ・・・悪いんだけど、ちょっと考えさせてくれないか・・・」

 颯は扉の前で立ち止まる。

「・・・うん、わかったよ。でもぼくは、またハヤテが来てくれるって信じてる」

「悪いな・・・」

「ううん」

颯は墓を後にし、学校に向かった。


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