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魔超戦記 リリパットステップ  作者: 沢崎ハル
結成編
1/16

第1話 始まりの風

「行ってきまーす」

 東雲(しののめ)(はやて)はいつもの通りカバンを持ち、スニーカーを履いて、玄関のドアを開ける。

 するとそこには、1人の少女が、颯と同じ学校のブレザーを身にまとい、玄関前に立っている。

「おっす!」

 元気な声で挨拶してきた。

「よっ!絵利菜(えりな)!いつもながらおまえ早ぇな・・・」

「えぇ~!ふつうだよぅ~♪だってもう7時30分だよ!」

「あっ!ホントだ・・・。悪かったな、じゃ、行くか」

「待って、涼姉すずねえは?」

「なんか用でもあるのか?」

「ううん。特にない」

「んじゃ俺たちは行こうぜ。姉ちゃんとはどうせ別の学校だし」

「うん♪」

 2人は学校を目指し、歩き出す。


 彼女の名は綾垣(あやがき)絵利菜(えりな)。颯とは幼稚園の時からの付き合いだ。栗色のロングヘアーにトレードマークとも言える桜色のリボン、黒真珠くろしんじゅのようなきれいな瞳に、ツヤツヤしたきれいな(くちびる)。見た目はかなりの美少女であり、それに加え高校生とは思えないほど幼稚(ようち)・・・もとい、天真爛漫(てんしんらんまん)な性格をしている。

 通学の途中、颯が絵利菜に向かって質問をした。

「そいえば、絵利菜は何で俺と同じ高校にしたんだ?おまえの成績だったら、もっといいとこ行けたんじゃないか?」

「決まってるでしょ!颯と同じ学校に行きたかったんだよ♪」

「ホントにそうなのか?」

「うん♪」

「ふ~ん」

「何? あたしが颯と同じとこ行っちゃダメなの?」

「・・・そ、そんなんじゃないよ!・・・あっ、やばっ!遅刻しちまう!早く行かないとっ!」

「あ~~っ!待ってよぉ~!颯ぇ~!」


 県立皐月(さつき)高校、1年7組の教室。

「ふぅ、何とか間に合ったな」

「うん」

 颯と絵利菜は自分の席にカバンを置く。颯の席は、窓際の1番前で、絵利菜はその後ろである。

「颯さん、絵利菜さん、おはようございます。」

 アニメの幼い女の子のような声が聞こえる。

「おっす、美乃(よしの)!」

「おはよう、しーにょん!」

 振り返るとそこには小柄な少女がいた。彼女は稲葉(いなば)美乃(よしの)。銀色のカチューシャにロングのツーサイドアップの長い黒髪、そのうえ童顔の可愛らしい少女だ。ちなみに『しーにょん』とは、絵利菜が美乃に付けたニックネームである。

「見てくださいよ。これ」

 美乃は後ろに持っていた物を颯たちに見せてきた。

「おっ、かわいいな」

 灰色の猫のぬいぐるみだった。

「自分で作ってみたんです。名前は『みゃんちー』」

「美乃・・・」

 颯が真剣な目つきで見つめる。

「ナイスキューティー!!」


「しーにょん、こっち向いて」

 パシャッ!

 カメラのシャッター音が聞こえた。

「良いデータが取れました」

振り返ると、絵利菜がスマホのシャッターを切っていた。

「やっぱりいくつになっても、かわいい物はいいよね」

「そうですよ絵利菜さん。かわいいものに歳なんて関係ないの♪」

「だよね。そのぬいぐるみを抱えてるしーにょん、めちゃめちゃかぁいいもん!こりゃ~もぅ、お~もちかえりぃ~!!!」

「そこか!?」

 絵利菜の眼はサバンナで獲物を狙う凶暴な肉食獣のよう。一方、美乃は野良犬に挟み撃ちにされた子犬のように怖がっていた。

「しーにょん、もふもふさせて~~!!」

 そんなに高くもない天井へとジャンプし、美乃に襲いかかろうとする絵利菜。

周りで見ていたほかの生徒たちが驚く。それを()めようと颯はノートを丸め、剣のように構える。

 颯は美乃の目の前に立ち、襲い掛かってくる絵利菜に丸めたノートを振りあてる。

「こんの!デレスケがーー!!」

すると、絵利菜の動きが止まった。

「そ・・・そんな・・バカな・・・・たった一瞬(いっしゅん)で7発も!?」

絵利菜は倒れた。

「えっ!?私、1回しか振ってないようにしか見えなかったけど!」

「一撃に見せかけて7回振り当てたか・・・見事だ!」

 スマホのカメラを連射モードにして撮っていた生徒が解説した。

「いい加減にしろよな!」

 颯は絵利菜を倒した。

「だってめっちゃかわいいのよ!アンタがお持ち帰りする?」

 だが、絵利菜は何事もなかったかのように立ち上がり、近づいてきた。『もふもふモード』は切れたようだ。

「・・・それは納得できなくもないが、普通に考えて遠慮しとく」


 放課後、帰り道。

夕焼けの中、強い風が吹き、桜の花びら舞った。

 このとき、颯には風に紛れて「時が来た」と言う少年の声が聞こえた気がした。

 この先、風がのちの(はやて)たちの運命を(みちび)く風だとは、このとき彼も、周りの誰も()(よし)もなかった。


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