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ももたろうときんたろう。

いまはむかし。


あるところに、おじいさんとおばあさんが、くらしておりました。

おじいさんとおばあさんには、こどもがおりませんでしたが、ふたりはそれはしあわせにくらしておりました。おかねはありませんでしたが、ふうふになってから、ずっとなかよくくらしていたのです。


そんな、あるひ。


おじいさんは、やまにしばかりに。おばあさんは、かわにせんたくにゆきました。まいにちのおしごとです。おじいさんもおばあさんも、ふたりのしあわせのために、まいにちいっしょうけいんめいでした。


そして、おばあさんが、せんたくをしていたときのことです。じゃぶじゃぶ、じゃぶじゃぶ、ふくもてぬぐいもきれいにしていたときです。


どんぶらこ、どんぶらこ。


かわのじょうりゅうから、おおきなおおきな、ももがながれてきたではありませんか。


そのももの、おおきなことといったら。おばあさんじしんよりも、おおきいようにおもえました。


おばあさんは、とっさに、そのももをつかまえました。みずにういたももは、かるく、おばあさんでもころがしてかわらにあげられました。それに、おばあさんは、まいにちげんきにうごいているので、ちょっとおおきなももぐらい、なんてことないのです。


おばあさんは、このおおきなももを、おじいさんといっしょにたべれたなら、どんなにしあわせだろうとおもいました。だからいえまで、ごろごろ、ごろごろ、いっしょうけんめいころがしていきました。ももは、みただけでも、さわっただけでも、どんなにかおいしそうです。だから、ちっとも、つかれをかんじませんでした。まるで、ももがてにすいつくようです。


いえにもちかえったももを、あらためてみてみると、やはりとてもおおきいものでした。おだいどころには、とてもおさまりきりません。ですので、おばあさんは、にわできることにしました。


そうだ。おじいさんといっしょにきろう。こんなおおきなももには、きっとにどは、であえません。いっしょにおどろいて、いっしょにたのしみましょう。おばあさんは、そうおもい、おじいさんのかえりをまちます。おばあさんは、まだまだいえのしごとがあったので、おじいさんをまつのも、くではありませんでした。


おひるごはんのじかんです。おじいさんも、もどってきました。


おじいさんもまた、おばあさんとおなじように、おおいにおどろきました。そのすがたをみて、おばあさんは、まってよかったとおもいました。


いよいよ、ももをたちわるときです。ふつう、ももはかわをむくとおもいますが、これほどのおおきさです。かわをすべてむいていては、さいしょにむいたぶぶんは、かわききってしまうでしょう。ですから、ふたりは、まずまっぷたつにすることにしました。


ふたつにわかれたももからは、おどろくほどたっぷりのかじゅうと、あまいにおいと、そして、ちいさなあかちゃんがでてきました。


これには、おじいさんもおばあさんも、びっくりぎょうてん。それに。


おぎゃあ、おぎゃあ。なんとまあ、げんきのいいあかんぼうでしょう。このこは、きっとおおきくたくましくそだつにちがいない。


そう、ふたりは、このきてれつなあかちゃんをそだてるきでした。おにか、もののけとおもっても、ふしぎではないのに。それは、ふたりにはこどもがいなかったというのもあります。ですが、ほんとうのところ。おじいさんもおばあさんも、あかちゃんのないているこえをきいて、にっこりわらってしまったからです。


あかちゃんは、すくすくとそだちました。それこそ、びょうきひとつせず、そしてほかのこのなんばいものそくどでおおきくなっていったのです。


あかちゃんは、なまえをももたろうとなづけられました。ももからうまれたおとこのこだったからです。


ももたろうは、おじいさんとおばあさんのてつだいをよくし、そのたびごとにちからをつけ、からだをつくっていきました。


そんなあるひ。


かぜのうわさをききました。みやこのほうでは、おにがひとをおそい、みんなのたからものをうばっていくというのです。


これをきいたももたろうは、こまっているひとをみすごせないと、たびだちをきめました。


おじいさんとおばあさんのやさしさにふれたももたろうならではのはっそうです。


さいしょはとめたふたりですが、ももたろうのけっしんはかたいものでした。


さいごには、たびのどうぐをそろえてあげることになりました。


おじいさんがわかいころにつかっていたかたな、まいよあんでくれたわらじ。おばあさんがあんでくれたはおり、おなかがすいたときにと、きびだんご。


じゅんびばんたん、ももたろうは、あゆみだしました。


せなかには、にっぽんいちのはたまで。これは、おににたいしてのちょうはつです。このよでらんぼうをはたらくのなら、まずおれをたおしてみろとの、ちょうせんじょうです。


そうしてやまをおりはじめたももたろうでしたが、どうちゅう、たおれたいぬにあいました。


どうやら、いぬはおなかをすかせているようです。ももたろうは、おばあさんにもらったきびだんごをわけてあげました。


これには、いぬもかんげき。おなかをふくらませたいぬは、おともをもうしでました。


おにたいじときいても、いっこうにひるむようすはありません。むしろ、そんなきけんなたびなら、ぜひともつれていけといわんばかりです。


ひとりたびだったももたろう。しかし、いまではふたりです。


そのふたりが、てくてくみやこをめざし、あるいていると。つぎは、おさるさんが、きからおりてきました。おさるさんも、やはりひもじいおもいをしていました。いぬが、ももたろうからきびだんごをもらったのをみて、じぶんももらうためにおりてきたのです。


ももたろうは、きびだんごをあげました。さるは、やせてしまっていたのです。


みやこでは、おにのりゃくだつがあいついでいるとか。そのえいきょうでしょうか。ひとが、ものをうしなえば、それをどこかからか、ほじゅうしなければなりません。ふだんなら、やまのたべものも、さるがたべるぶんはあまるはずなのですが。たりなくなったぶんを、ひとがとり、さるのぶんはなくなってしまったのです。まわりまわり、さるもまた、おにのひがいしゃかもしれません。


そんなおさるさんも、ももたろうのおともにくわわりました。このままやまにいても、けっきょく、おなかをへらすだけなのです。なら、きがのこんぽんをたつまでです。これは、せいぞんきょうそうなのです。


またおんぎでも、ありました。ももたろうは、みずしらずのさるにやさしくしてくれました。なら、しょくじのおん。いのちをたすけてもらったかりは、いのちでかえすまで。


おさるさんをくわえたいっこうは、またもみちばたで、あらたないきものにであいました。


きじです。きじは、おなかをすかせたわけではありません。


ただ、まるでひとをおそれないかのように、ももたろうのまえにあらわれました。いぬがいるので、おいかけられたり、ひとにもたべられたりするかもしれないのに。


きけば、きじは、だれにもあいてにされないというのです。そのうつくしいはねも、たべでがありそうなにくも、だれもみむきもしないとか。


みどりのはね、みどりのからだを、ひともどうぶつもおそれ、だれもふれたがらぬというのです。


ですが、いぬとさるをひきつれた、ふしぎなにんげん。かれなら、へんなしゅみをもっているかもしれない。きじは、そこにいちるののぞみをみいだしました。


なにやらよくわかりませんが、きじもいっしょにきたがっている。そうかいしゃくしたももたろうは、きびだんごをあげて、おともにしました。


きじのほんいとは、またちがいますが、まあけっかおーらいでしょう。みながはっぴーなら、それでよいのです。


こうして、ももたろうごいっこうは、よにんぐみとなりました。そして、このちんみょうなぎょうれつは、ぶじみやこにたどりつきました。


みやこは、とてもとても、ひろくおおきいものでした。おじいさんのいえが、いったいなんびゃっこはいるでしょうか。


ですが。みやこは、しずまりかえっておりました。これだけおおきなばしょで、おしゃべりひとつきこえません。


だれもかれも、おにをおそれ、こえをひそめているのでした。


そんなとき。


まるで、やまをひとつふたつこえそうな、おおごえがとどろきました。


そのこえは、ももたろうをむけてはなたれているようです。


やあやあ。おれは、おにをさがしているのだが、きみはおにかい。


いいえ。ももたろうは、ももからうまれたにんげん。それに、こちらは、いぬとさるときじ。おには、なかまにおりません。


そうか。おれは、きんたろう。やまで、くまとすもうをとってくらしていたものさ。さいきん、みやこのおさむらいさまに、とりたててもらってな。そうしたら、このさわぎじゃないか。おれも、おにとすもうをとってみたくなってな。


ももたろうは、じぶんたちも、おにたいじにむかうさいちゅうだとせつめいしました。


ほう。なら、おれもつれていってくれまいか。しょうじきにいって、みちがわからんのだ。なに、ちからにはじしんがある。あしでまといには、なるまいよ。


きんたろうさんもやはり、きびだんごをぺろりとたいらげ、おともになりました。


みやこのひとも、えいえんにそとにでず、せいかつなどできるものではありません。せんたくにでてきた、おばあさんに、おにをみなかったかと、たずねました。


なんと、おには、おにがしまというしまからやってくるのだそうです。


しま。これには、ももたろうもおどろきです。かいぞくのようなものでしょうか。


しまにゆくには、ふねがいります。と。


きんたろうさんが、そこらのきを、きりたおしてしまいました。きんたろうは、おのをもっていたので、きこりはおてのものでした。


そのきを、さらにきり、ほり、なんと、ふねができました。


さあ、いきましょう。いざ、おにがしま。


どんぶらこ、どんぶらこ。うみのなみにゆられる、そのかんかくは、ももたろうには、なんだかなつかしいものでした。いつしか、ももたろうは、ねむりこんでいました。


ももたろうさん、ももたろうさん。


ももたろうは、さるのこえで、おにがしまについたことをしりました。


ぐっすりねむっていたももたろうときんたろうも、いよいよおにがしまにじょうりくです。さきに、いぬときじが、しゅういをけいかいしていてくれました。


おおおおい。


きんたろうのこえが、おにがしまじゅうをつらぬきました。


きんたろうは、めんどうなことが、きらいなたちでした。おにをすべてやっつけてしまえばよい。そうおもっておりました。そのために、すべてのおにをおびきよせたのです。


なんだ、なんだ。おにが、わいわいとやってきました。そのすがたは、おおきなかなぼうをもち、とらのこしまきをし、そして、かなぼうよりおおきなからだをしていたのです。そして、おにには、いっぽん、あるいはにほんのつのがありました。なかには、さんぼんのつのも。


にたりとわらったきんたろうが、まずのしのしとまえにでました。


おれよりつよいやつは、いるか。


そういい、おおわらいしてどかりとすわりこみました。


これには、おにすらどぎもをぬかれました。


てきちにて、てもとのおのをなげすて、あまつさえすわるだけとは。とほうもない、ばかものです。


ももたろうも、それにつづきました。


これいじょうのらんぼうろうぜき、おれをたおしてからにせい。


やはり、どかりとすわりました。


しかし、おともたちは、きがきではありません。ふたりのにんげんのやることが、あまりにもじょうしきはずれなので、おともははらをくくりました。たおれるときも、いっしょです。


おにたちも、このにんげんのしょぎょうに、どうようをかくせませんでした。どうかしているのでしょうか。


しかし。おにも、こたえました。


おにのなかでも、もっともつよい、あかおにだいおう。おにのなかでも、もっともゆうかんな、あおおにしょうぐん。このふたりが、なのりをあげました。


あかおにが、きんたろうに。あおおにが、ももたろうにむかいあいました。


あかおには、かなぼうをすて、きんたろうにあわせるかのように、すもうをかまえました。きんたろう、それをみやると、はをむいてわらいました。


たいくでまさるあかおにですが、したからすさまじいちからですくいかかるきんたろうにほんろうされます。ちいさなきんたろうのほうが、そくどでもまさるのですから、たまりません。ひだりあしをぜんりょくでかられ、あかおには、ふんばりたえようとするのですが、そこであごをかちあげられては、どうにもなりませんでした。まず、いっしょうです。


あおおには、かなぼうを、かたなにもちかえ、ももたろうとむきあいました。


ももたろうは、まともにやりあってはかてぬとみきわめました。あいてのかたなは、ももたろうのこしのものより、はるかにながいのです。きりあっては、とどきませぬ。


ももたろうは、ぬきうちのかまえのまま、ちかづきます。あおおには、そのももたろうのいしをよみました。こちらのふりぬきのあとをねらうつもりなのだと。


では、ぎりぎりまでまちましょう。そして、よこなぎ。これなら、ももたろうさんは、はんげきのきをえられません。


あおおには、ぬきはなっただいとうを、まるですすきのようにかるくもっています。おもさがないようです。ですが、そのかたなをぼうぎょしたしゅんかんに、ももたろうさんは、かたなごとりょうだんされるでしょう。


かいひし、かつ、ぬきうちをあてる。これができねば、かてません。


ももたろうは、いきをとめました。あおおにのうごきを、ぜんしんぜんれいでみきわめるためです。およそ、さんじゅうびょう。これが、せいしをわかつときです。


きました。そのきょたいからは、そうぞうもできないほどのはやさです。そのよこなぎは、ももたろうをかんぺきにとらえておりました。


ですが、ももたろうは、もっとはやかったのです。よこなぎをうけては、はいぼくしかありえません。なので、ももたろうは、そのよこなぎのはつどうのてまえで、ぜんそくりょくでふみこみました。


このとっしんに、あおおには、おどろいてしまいました。そのせいで、けんせんのそくどはおち、ももたろうのからだにあたることはありませんでした。


ももたろうはさらにかそくし、ぬきうちよりさらにはやく、ひだりていっぽんで、さやをぬき、あおおにののどにつきこみました。


おにのからだは、にんげんのちからではどうにもできません。ですが、つよいちからで、こきゅうきかんをあっぱくされ、いっしゅんあおおにののどはつまりました。にんげんにだしぬかれたこと、たしょうなりだめーじをもらったこと。このふたつで、あおおには、うごきをとめてしまいました。


ですので、つぎのももたろうのうごきにもたいおうできませんでした。


ももたろうは、みぎてにかくしもっていたきびだんごを、あおおにのくちにおしこみました。


もぐもぐ、ごっくん。おいしい。


あおおには、そういってしまいました。ももたろうの、かちです。あおおには、ももたろうのきびだんごをみとめてしまったのですから。


おにのだいぐんぜいからは、どよめきのこえがあがります。おにのなかでも、さいきょうのふたりが、こともあろうに、にんげんなどにやぶれてしまったのですから。いたしかたないでしょう。


ですが、けっかはけっかです。おには、はいぼくをみとめ、これいじょうのてだしをしないとやくそくしてくれました。


では、おにはどうやっていきていくのでしょうか。いままでは、どうしていたのでしょうか。


このおにがしま、それなりにひろいしまですが、すべてのおにがたらふくたべられるほどのたいりくでもありません。よくみれば、おにたちもまた、やせていました。きんこつりゅうりゅうにみえたそのにくたいも、じつは、えいようしっちょうの、すうほてまえだったのです。


じつは。


おには、みやこのおさむらいさんに、しょくりょうをわけてくれぬかと、たのんでいました。しかし、みやこのにんげんも、そこまでよゆうがあるわけでもなく。さらに、いぎょうのおになどに、どうしてわけてやるぎりがあるのでしょうか。にんげんは、おにのくきょうを、すておきました。


はなしをききおえたももたろうときんたろうは、あるけついをかためました。


ももたろうは、やまにかえってきました。ひとりでたびだったももたろうさんですが、かえったときには、ごにんです。それに、もっとおおくなるでしょう。


おじいさん、おばあさん、ももたろう。さんにんですんでいたやまは、にわかにさわがしくなりました。


おにのわかいしゅうが、やまにはいり、たはたをつくりはじめたのです。このやまは、にんげんがすんでおりません。だれがはいっても、もんだいではないでしょう。


みやこでは、おにのらんぼうは、もうなくなりました。ですが、おにがべつのちいきへしんにゅうしてきたとのほうがありました。


みやこのおやくにんさんが、そのやまにきたところ、にんげんのしじのもとで、やまはかいたくされておりました。きんたろうさんのはたらきです。


きんたろうは、のうぎょうなどできるあたまをもっておりませんが、やまのどうぶつがともだちです。いまのきせつに、まいていいたね。いまのきせつに、たべられるみ。それらをおににもおしえてあげます。


そして、みやこのやくにんにも、おにとのわへいをつたえました。


これに、みやこは、みやこにさえひがいがでなければよしとかんがえました。


けっか、ももたろうさんのやまには、みやこをしのぐほどのおおきなむらができました。にんげんと、ももからうまれたにんげんと、いぬと、さると、きじと、どうぶつとともだちのにんげんと、おにの、みながしあわせになれるしゃかいです。


みんなが、がんばれば、きっとこのしあわせはたもたれるでしょう。


そして、ほんとうにみなはいつまでもしあわせにくらしましたとさ。


めでたしめでたし。


おしまい。

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