表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アームド・ブラッド―畏敬の赤―  作者: chiyo
第六章 終わる世界 繋ぐ光―Union―
149/172

第28話 破壊の詩、絶望(やみ)を裂いてー“counterattack”ー

#28


「お、おい、あれは……」


 罅割ひびわれた虚空そらに映し出された、眩い“黄金ひかり”。


 神秘の鎧装ヨロイまとい、禍々しい円盤群が産み落とした“御使ミツカイ”の群れと対峙する勇士達の雄姿すがたは、否応なく全世界の眼差しを集め、憔悴しきっていたその瞳に、僅かな篝火かがりびを灯しつつあった。


 “この状況でも、諦めず抗っている奴等がいる――”。


 その映像ビジョン――天空そらから響いた少女の言葉を補強し、実証するような、その“現実”は、人々の心を静かに奮い立たせ、円盤群が放つ“声”に抗う糧となっていた。そして、


「きれーな、ひか、り……」


 祖父母を“結晶化”によって喪失した、幼い少女も、フラフラと彷徨さまよいでた屋外で、その虚空そら映像ビジョンを目撃していた。


 眩い、輝甲の騎士達が並び立ち、禍々しい、“御使”の群れを迎え撃つ、その映像ビジョンは、心神喪失状態にあった少女の心を揺り動かし、そのつぶらな瞳に、大粒の涙をこぼさせる――。


「……んばれ……」


 理性や理屈ではない。


 衝動に近い感情が、幼い心を突き動かし、その未成熟な唇から掠れた、だが、芯の通った言葉こえを紡がせていた。


「がんばれぇ……っ! みんなぁ、がんばれぇ……っ!」


 天空へと贈られた、幼き少女の言葉(こえ)が、戦士達に届く事はない。


 だが、戦士達はその声を受け止めたかのように、熾烈な戦闘に身を投じていた。


退け……! 有象無象の御使バケモノども……!」


 ――いざ、血戦の刻。


 人類側の先陣を務めるキョウ――“骸鬼スカルオウガ煌輝キラメキ”の黄金ひかりが眩く躍動する。


 人類の最終防衛ラインそのものである戦士達は、雪崩れ込む“御使ミツカイ”の群れと激突すると同時に、返り血である、鮮烈な“畏敬の赤アームド・ブラッド”の飛沫しぶきをほとばしらせていた。


 苛烈な交戦の中、響の重輝醒剣が、群がる“御使ミツカイ“達の甲殻を粉砕。数十体の異形をまとめて跳ね飛ばす……! そして、


「“封印解除シール・ブレイク”……ッ!!」

「……!」


 響の“音声指示オーダー”とともに、大剣状の鞘が弾け飛び、露わとなった白銀の刀身が、“御使”たちを瞬く間に斬り伏せてゆく。


 “畏敬の赤アームド・ブラッド”の奇蹟、その因子そのものを絶つ、輝醒剣によって斬られた“御使”たちは、塩の塊となって朽ち果てる――。


 同時に、大地を埋め尽くす“御使”の海を割り拓くように、銀蒼の閃光ひかりもまた、戦場を疾走!


 “御使ミツカイ”たちの首を、胴を次々と切断していた。


「神の使い――その不遜な“赤”、この“ブルー”が地に落とす……!」


 ――閃光の名は、“蒼鬼ブルー・オウガ月輝ツキアカリ”。


 輝双剣きそうけん三日月ミカヅキの剣閃を、華のように舞わせるブルーは、“御使ミツカイ”の奥に控える本丸、“円盤死告御使(リボルブ・アンゲーラス)”により接近すべく、銀蒼の鎧装ヨロイを全力で駆動させていた。


「隊長たちの進路は、塞がせない……ッ!」

「ほいさー!(ʃƪ^3^)」


 斬っても砕いても湧いて出る“御使”の群れへと、背中を合わせたミリィとアーロウの射撃が直撃……!


 ミリィが乱れ撃つ、閃光ひかりの矢と、アーロウが放つ紅紫色マゼンダの生体レーザーが、“御使”たちの荊棘いばらき尽くし、撃ち貫く。そして――、


「来い……! 輝電人きでんじん雷威我ライガッ!」

【――_-―――_-――ッ!!】


 抉じ開けられた“活路”へと、響のび声とともに、観念世界アンダー・ワールドで、力を充填チャージしていた“雷威我ライガ”が、現実を叩き割り、再度出現。


 雷威我はその巨腕で、纏わりつく“御使ミツカイ”どもを薙ぎ払い、主上マスターである響と並び立つ……!


 その“輝神金属アーシウム”の眩い輝きは、先行するブルーの五感をも包み、鼓舞する――。


「まずは円盤アレを一機落とす。シャピロ、合わせられるか――?」

「了解――チャージは上々だよ、ブルー」


 “射程距離”に辿り着いた鎧装ヨロイを、滑り込ませるようにして停止させたブルーは、追走していた相棒バディへと視線・言葉を送り、相棒バディもまた、それにこたえる。


「“蒼月銀牙穿ムーン・パーフォレイト”……撃ち穿つらぬくッ!!」

「“混沌は暗夜を穿つ(ハイブリッド・ブラスター)”――撃つよ」


 ブルーが輝双剣を連結させ、完成させた“輝蒼弓きそうきゅう真月弐型シンゲツニガタ”は即座に“黄金氣マナ”を充填チャージ相棒シャピロとともに、虚空へと絶大なエネルギーを放射していた。


 真月弐型シンゲツニガタと“灰鬼グレイ・オウガ白輝ビャッキ”から放たれた“一矢”が、“円盤死告御使(リボルヴ・アンゲーラス)”へと直撃し、その巨躯を僅かに揺らす……!


【……ケ、イレヨ】

「……!」


 ――しかし、撃破には程遠い、その損傷ダメージは黙殺され、“円盤死告御使(リボルヴ・アンゲーラス)”による苛烈なる“報復”が、大地へと降り注ぐ。


 大地を刳り、破砕する、純粋な破壊エネルギーは戦士達の鎧装カラダを弾き飛ばし、“円盤死告御使(リボルヴ・アンゲーラス)”の指令によって、“爆弾”となった“御使ミツカイ”たちの爆発が、さらなる損害ダメージを与えてゆく。だが、


ひるむな……ッ! 此の災禍は俺が引き受ける……ッ!」


 進撃を阻む爆撃の連鎖を、“五獣将ごじゅうしょう”の首魁ボス、ラズフリートは真っ向から受け止め、その巨腕が練り上げた重力波が、連鎖する爆発を次々と“握り潰して”ゆく。


 白の重装が爆炎に黒く煤けても、この巨獣に怯む様子はまるでない――。


「進め……ッ! 道なら此処に抉じ開ける……ッ!」

【……!?】


 荒れ狂う重力の渦に、“御使”たちの四肢が戦慄とともに捩じ切れる……!


 ラズフリートが練り上げた重力波は壁となり、大地を埋め尽くす“御使”の群れを、真っ二つに分断。


 “円盤死告御使(リボルヴ・アンゲーラス)”へとより接近し、追撃する為の活路を抉じ開けていた。そして、


輝電人きでんじん雷威我ライガッ! 輝乗形態ビークル・モード!」

【――-―――-――ッ!】


 響の指令オーダーと同時に、展開した雷威我の胸部・脚部から車輪が出現。


 巨体を折り畳むようにして変形を開始した雷威我は、巨大なバイクのような形態となって、咆哮のような駆動音を轟かせていた。


 雷威我の頭部をそのまま残したヘッドライトは、搭乗を促すように、響の顔を照らす。そして、


【『鎧醒アームド』】

「……!」


 “御使ミツカイ”たちの歪な口顎クラッシャーから紡がれた、予期せぬ“言霊”に戦士達の表情が強張った瞬間、現象は電光とともに現実を破砕する。


 “観念世界アンダー・ワールド”より召喚された“神幻金属オリハルコン”の塊が、巨大な鎧装に変形。


 “御使ミツカイ”の群れを、人類を迎撃する、無数の鉄巨人ゴーレムへと“再醒さいせい”させていた。


 大地を揺るがしながら進撃する、文字通りの巨大な壁に、輝醒剣を握る響の五指に、緊迫の汗が滲む――。


 だが、


「ハッ……! 何を呆けてやがる、“好敵手”ゥッ!」

「……!」


 突如、弾丸、隕石のように飛び込んできた黒鎧が、その五指で“神幻金属オリハルコン”を薄紙のように両断……!


 立ち塞がる鉄巨人ゴーレムの一体を、跡形もなく爆散させていた。


 黒鎧の主――我羅ガラSSダブルエスは、仮面から伸びる蠍の尾を、辮髪べんぱつのように棚引たなびかせながら、凶暴にわらう。


「こんな木偶の坊――てめぇが越えてきた難関モンを思えば、カスみてぇなもんじゃねぇか。ヒビって、たじろいでる場合かよ……!」


 そう語る我羅の背後で、華が咲き乱れるような、鮮やかな剣閃ひかりとともに、鉄巨人ゴーレムたちが細切れに裂かれてゆく――。


 其れは、“武を極め、奇蹟に到る”漆黒の剣士。


 “剣鬼ブレーダー”、シオン・リー・イスルギの仕業である事は言うまでもない。


「――有象無象に足を止めている暇はありませんよ。貴方たち、“三輝士さんきし”がこの血戦の鍵なのですから」


 “黄金氣”の輝きを宿す、煌輝キョウ月輝(ブルー)白輝(シャピロ)鎧装ヨロイを見据え、告げたシオンは、奥に控える鉄巨人ゴーレムの腕部が展開するのを確認し、黒衣をひるがえす。


【――“罪罰の血剤(カイン・ブラッド)”、“罪赦の血剤(アベル・ブラッド)”――装填】


 ――逃れる為ではない。


 荒ぶる、盟友ともの射線を塞がぬ為だ。


「“我異端にして(マイ・ブラッディ・)神を穿つ朱(ヴェンジェンス)”――――“死の果て続くサーティーン・十三階段ギャロウズ”ッ!」


 ”血盟機(ブラッド)XⅢ(サーティーン)”とふたたび“契約鎧醒(テスタメント)”した麗鳳の黒鎧ヨロイが、その左腕から放たれた円輪状の光で鉄巨人ゴーレムたちを拘束……!


 鉄巨人ゴーレムたちの腕部から発射された、無数のミサイルごと、立ち塞がる木偶デクたちを“奇蹟を殺す右掌ファンタズム・ブレイカー”による光で、消し飛ばしてゆく。


「……愚にもつかぬ出来損ないガラクタを吐き出すだけなら、神威の具現化と呼ぶには値しないな、“円盤死告御使(リボルヴ・アンゲーラス)”……!」


 ほとんどの“御使ミツカイ”が塩の塊となり朽ち果てる中、“死の果て続くサーティーン・十三階段ギャロウズ”の直撃を受けてなお、その巨躯を回転させる“円盤死告御使(リボルヴ・アンゲーラス)”に、麗句は啖呵を切り、その紅き双翼を羽撃はばたかせる。


「ムラサメ……! こいつらは“畏敬の赤アームド・ブラッド”の根源に近い存在! 故に同じ“畏敬の赤アームド・ブラッド”に連なる攻撃では、効果は薄い……! だが……!」


 円盤が放つワイヤー状の触手を、“朽ちるも反抗(ハルバード・)契りし聖槍(ロンギヌス)”で切り払いながら、麗句は響達へと叫ぶ。


「お前達の“黄金氣マナ”を帯びた精神感応金属ヒヒイロカネ――シャピロが言うところの“神輝《器》”であれば! その“黄金ひかり”であれば! きっと斬り裂く事が出来る……!」

「……承知した」


 “煌輝キラメキ”の仮面マスク、その眼部に翡翠エメラルドの光がたぎり、その金色こんじき輝乗形態ビークル・モードとなった雷威我へとまたがる。


 その“発進”を阻まんとした“御使ミツカイ”たちを、ジェイクとガルド、“五獣将ごじゅうしょう”の面々が粉砕。


 しぶとく増殖を続ける“御使ミツカイ”を蹴散らし続け、“三輝士”の進撃を、強く後押ししていた。


「景気良くぶちかましてください、隊長ッ!」

「露払いは我等が引き受けますッ!」


 その声に頷き、雷威我と煌輝は、ほとばしる“黄金氣マナ”の粒子と共に、“赤”の戦場を駆け抜ける――。


 そして、


「……“原初の罪(アダムズ・アップル)”の拘束・四番から六番を解放。“逢魔形態アサルト・フェイズ”に移行する」


 “赤”の戦場から、遥か遠く隔たれた、世界の中心地――“煌都”。


 其処そこで抗う、カシウスの“音声指示オーダー”と同時に、“蛇鬼(ジャキ)”の両腕部が、皮膚が裂けるように展開し、蒸気を排出。


 光を透過する、特殊な精神感応金属ヒヒイロカネで鋳造された、追加武装を顕現させていた。


 杭打ち機パイルバンカーの如きそれは、踊りかかった十数体の“御使ミツカイ”を、一撫でで粉砕。


 生じた衝撃波で、周囲の瓦礫を破砕していた。


 さらに、連動するように“蛇鬼”の背部鎧装が裂け、内部に秘匿されていた精神感応金属ヒヒイロカネ――拘束具を露わとする。


 追加鎧装と同じく、半透明のそれは、猛禽類の翼のように展開し、禍々しい羽搏はばたきを、群がる“御使”たちへと見せつけていた。


「私も共に立とう同胞きょうだい――“骸鬼スカル・オウガ”よ」


 降り注ぐ“畏敬の赤アームド・ブラッド”の光を浴びた、雄々しき紫鎧ヨロイが、“悪魔ディアブロ”の如き、その異形(シルエット)を、瓦礫の上に映す。


 神を斃す為に捧げられた、最初の人柱。


 その“真髄”がいま、解き放たれんとしていた。


NEXT⇒第29話 畏れを知らぬ獣―“UNBROKEN”―

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ