彼らの名前は…
複数人で行動する冒険者達は、大抵がその集団に名を付けている。
依頼主に覚えてもらえるし、それで一行の能力などが知られれば、
後々その能力を活かした指名依頼もしてもらいやすいからだ。
まあ、悪いほうで覚えてもらった場合は負の方向へ働くのだけど。
彼らの名称も多種多様である。有名どころを挙げるならば。
大型魔獣との戦闘に長けていると評判の五つ星「鋼の獣」。
迷宮探索や遺跡調査を得意としている五つ星「黄金もぐら」。
高難易度の稀少素材を確実に入手する六つ星「竜の果樹園」。
中には、取り敢えず他と区別がつけばいい、とばかりに名付けたか、
「村の出がらし」「独身の集団」「とにかく殴る」なんてのもある。
そんな中で、新人でありながらも名前だけは有名な一行があった。
その名も。
「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、
そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!
追い出した人達が後悔してももう遅い」
と言う。
ちなみに全員が一つ星だ。得意とする依頼は町中清掃である。
◆
「それでは本日、
『無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、
そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!
追い出した人達が後悔してももう遅い』
の皆さんには東三番街の清掃をお願いします。
時間は日没までの予定で、今回は側溝に注意して下さい」
息継ぎなしで一行名を呼んだ受付嬢さんはさすが本職だ。
「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、
そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!
追い出した人達が後悔してももう遅い」
の一行八人は、早速東三番街へと向かう。
彼ら彼女ら、
「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、
そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!
追い出した人達が後悔してももう遅い」
の面々はいずれも若い。代表が十三歳、最年少は十歳である。
名称の通り、全員特に戦闘力はない。特定技能も持っていない。
読み書き計算は近年の王国方針で皆一応出来ているものの、
優秀である、などとはお世辞にも言えない。
冒険者が集団で活動する場合、仲間への信頼、連携は必須要素だ。
当然相手がどんな能力を持ち合わせているのか、伸びしろがあるか、
何より仕事を任せてこなしてくれるかは見極める必要がある。
情だけで仲間に勧誘するほど、誘う側も余裕はないのだ。
ゆえにどこぞの一行が声をかけて恒久的に仲間に誘う事もなく、
臨時で別の一行の手伝いなどはあっても、その場限りであった。
皆、臨時で入った際も無能と呼んで蔑んだり、追い出したり、
わざと仲間外れにしたりもしていないのだが、
彼ら彼女らの脳内ではそういう事なのだろうか。
愉快とは言えないが、その思いが活動の原動力になるならよかろう。
年長者や先輩冒険者達はそう考えて大目に見ていた。
「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、
そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!
追い出した人達が後悔してももう遅い」
の連中は
「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、
そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!
追い出した人達が後悔してももう遅い」
の中で頑張ってくれればそれで構わない。
こちらが不都合を被らない限り。
◆
現地、東三番街に到着した、
「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、
そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!
追い出した人達が後悔してももう遅い」
の代表が指示を出す。
最近彼ら彼女らは、冒険者組合で月に一度ほど行われている、
一般開放魔術の講義を受けて《汚れ落とし》の魔術を覚えていた。
これは衣服や装備品のみならず建物や石畳に対しても効果がある。
無論、今回注意すべき側溝の掃除にも。
魔術効果の範囲が他人と被らないよう立ち位置を調整し、
体内魔素が尽きぬよう代わる代わる《汚れ落とし》を唱えていく。
ある程度の範囲にかけ終えたら、塵となった汚れを掻き出す。
一般開放魔術は、消費する体内魔素がかなり少なめである。
途切れず連続使用でもしない限り、自己回復が追いつく。
それを講師から教えてもらった彼ら彼女らはいいことを聞いたと、
先日《汚れ落とし》を覚えてすぐに実践で試しているのだ。
かかる時間は手作業での清掃とほぼ同じなのだが、
明らかに落ちる汚れは魔術のほうが多い。
手間は増えても、これなら街の人達からは喜ばれるだろう。
「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、
そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!
追い出した人達が後悔してももう遅い」
の一行は結果ににんまりとしつつ、清掃を続けるのだった。
◆
「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、
そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!
追い出した人達が後悔してももう遅い」
の評判は上がり続けていた。
彼ら彼女らの手法は、他の見習いや下級冒険者達に模倣され、
それを特に彼ら彼女らも別に咎めたりはしなかったので、
(元々は講師から教わったやり方でもある事だし)
主だった通りや建物は見違えるように汚れが減少していた。
日々真面目に取り組んでいたおかげで、
「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、
そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!
追い出した人達が後悔してももう遅い」
達は三か月後に二つ星へと昇格出来た。
清掃依頼の合間合間に、組合の訓練所では戦闘指導も受けており、
武器や防具、活動に必要な道具類も規格外品ながら手に入った。
そろそろ町の外で駆除依頼を受けてみよう、という話になったが。
はたと、
「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、
そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!
追い出した人達が後悔してももう遅い」
の代表は気づく。
僕ら、これずっと名乗り続けるのか?
依頼主からも、こう呼ばれ続けるのか?
仲間達も代表の言葉を聞いて急に我に返った。恥ずかしいぞこれ。
言いにくそうにしながらも、代表は窓口で受付嬢に告げる。
「あの、僕らの登録名の改名をお願いしたいんですが…」
◆
「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、
そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!
追い出した人達が後悔してももう遅い」
は二つ星昇格に伴って改名した。
新しい名は「立ち向かう者達」。かなり大人しくなった。
しかし、
「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、
そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!
追い出した人達が後悔してももう遅い」
の名は見習いの間で長きに渡って語り継がれる事となる。
「それでは魔術を教えます」で行った一般開放魔術講座は毎月続けられてます。
長い名称は分かりやすい場合もあるけど、なんか面倒よね。




