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ここはなにかが欠けている

彼らの名前は…

作者: 浮月重月
掲載日:2026/08/26

複数人で行動する冒険者達は、大抵がその集団に名を付けている。

依頼主に覚えてもらえるし、それで一行の能力などが知られれば、

後々その能力を活かした指名依頼もしてもらいやすいからだ。

まあ、悪いほうで覚えてもらった場合は負の方向へ働くのだけど。


彼らの名称も多種多様である。有名どころを挙げるならば。

大型魔獣との戦闘に長けていると評判の五つ星「鋼の獣」。

迷宮探索や遺跡調査を得意としている五つ星「黄金もぐら」。

高難易度の稀少素材を確実に入手する六つ星「竜の果樹園」。


中には、取り敢えず他と区別がつけばいい、とばかりに名付けたか、

「村の出がらし」「独身の集団」「とにかく殴る」なんてのもある。


そんな中で、新人でありながらも名前だけは有名な一行があった。

その名も。

「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、

 そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!

 追い出した人達が後悔してももう遅い」

と言う。


ちなみに全員が一つ星だ。得意とする依頼は町中清掃である。


◆


「それでは本日、

『無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、

 そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!

 追い出した人達が後悔してももう遅い』

 の皆さんには東三番街の清掃をお願いします。

 時間は日没までの予定で、今回は側溝に注意して下さい」


息継ぎなしで一行名を呼んだ受付嬢さんはさすが本職だ。

「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、

 そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!

 追い出した人達が後悔してももう遅い」

の一行八人は、早速東三番街へと向かう。


彼ら彼女ら、

「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、

 そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!

 追い出した人達が後悔してももう遅い」

の面々はいずれも若い。代表が十三歳、最年少は十歳である。


名称の通り、全員特に戦闘力はない。特定技能も持っていない。

読み書き計算は近年の王国方針で皆一応出来ているものの、

優秀である、などとはお世辞にも言えない。


冒険者が集団で活動する場合、仲間への信頼、連携は必須要素だ。

当然相手がどんな能力を持ち合わせているのか、伸びしろがあるか、

何より仕事を任せてこなしてくれるかは見極める必要がある。

情だけで仲間に勧誘するほど、誘う側も余裕はないのだ。


ゆえにどこぞの一行が声をかけて恒久的に仲間に誘う事もなく、

臨時で別の一行の手伝いなどはあっても、その場限りであった。

皆、臨時で入った際も無能と呼んで蔑んだり、追い出したり、

わざと仲間外れにしたりもしていないのだが、

彼ら彼女らの脳内ではそういう事なのだろうか。


愉快とは言えないが、その思いが活動の原動力になるならよかろう。

年長者や先輩冒険者達はそう考えて大目に見ていた。


「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、

 そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!

 追い出した人達が後悔してももう遅い」

の連中は

「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、

 そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!

 追い出した人達が後悔してももう遅い」

の中で頑張ってくれればそれで構わない。


こちらが不都合を被らない限り。


◆


現地、東三番街に到着した、

「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、

 そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!

 追い出した人達が後悔してももう遅い」

の代表が指示を出す。


最近彼ら彼女らは、冒険者組合で月に一度ほど行われている、

一般開放魔術の講義を受けて《汚れ落とし》の魔術を覚えていた。

これは衣服や装備品のみならず建物や石畳に対しても効果がある。

無論、今回注意すべき側溝の掃除にも。


魔術効果の範囲が他人と被らないよう立ち位置を調整し、

体内魔素が尽きぬよう代わる代わる《汚れ落とし》を唱えていく。

ある程度の範囲にかけ終えたら、塵となった汚れを掻き出す。


一般開放魔術は、消費する体内魔素がかなり少なめである。

途切れず連続使用でもしない限り、自己回復が追いつく。


それを講師から教えてもらった彼ら彼女らはいいことを聞いたと、

先日《汚れ落とし》を覚えてすぐに実践で試しているのだ。


かかる時間は手作業での清掃とほぼ同じなのだが、

明らかに落ちる汚れは魔術のほうが多い。

手間は増えても、これなら街の人達からは喜ばれるだろう。


「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、

 そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!

 追い出した人達が後悔してももう遅い」

の一行は結果ににんまりとしつつ、清掃を続けるのだった。


◆


「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、

 そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!

 追い出した人達が後悔してももう遅い」

の評判は上がり続けていた。


彼ら彼女らの手法は、他の見習いや下級冒険者達に模倣され、

それを特に彼ら彼女らも別に咎めたりはしなかったので、

(元々は講師から教わったやり方でもある事だし)

主だった通りや建物は見違えるように汚れが減少していた。


日々真面目に取り組んでいたおかげで、

「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、

 そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!

 追い出した人達が後悔してももう遅い」

達は三か月後に二つ星へと昇格出来た。


清掃依頼の合間合間に、組合の訓練所では戦闘指導も受けており、

武器や防具、活動に必要な道具類も規格外品ながら手に入った。

そろそろ町の外で駆除依頼を受けてみよう、という話になったが。

はたと、

「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、

 そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!

 追い出した人達が後悔してももう遅い」

の代表は気づく。


僕ら、これずっと名乗り続けるのか?

依頼主からも、こう呼ばれ続けるのか?


仲間達も代表の言葉を聞いて急に我に返った。恥ずかしいぞこれ。

言いにくそうにしながらも、代表は窓口で受付嬢に告げる。


「あの、僕らの登録名の改名をお願いしたいんですが…」


◆


「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、

 そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!

 追い出した人達が後悔してももう遅い」

は二つ星昇格に伴って改名した。


新しい名は「立ち向かう者達」。かなり大人しくなった。

しかし、

「無能と呼ばれて仲間外れにされたけれども、

 そんな奴らが集まったら大活躍しちゃいました!

 追い出した人達が後悔してももう遅い」

の名は見習いの間で長きに渡って語り継がれる事となる。

「それでは魔術を教えます」で行った一般開放魔術講座は毎月続けられてます。


長い名称は分かりやすい場合もあるけど、なんか面倒よね。

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