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第1話 ねえ。こんな感じでいいの?

 風の中のアクター。青と緑。映画(君)を撮る。


 ねえ。こんな感じでいいの?


 私は生きていく速度をとりもどさないといけないって思った。

 誰よりも速くとか、『あの子に勝ちたい、あの子に負けたくないとか』、そういうことじゃなくて、私のために私は生きていく速さをとりもどなさければいけないんだって思ったんだ。

 いつまでも立ち止まっているわけにはいかない。(お休みすることも大切だってわかってはいるんだけど)

 まずは歩きはじめないといけない。自分の足で。ゆっくりとでもいいから歩きはじめて、だんだんと早歩きになって、そしてもう一度、大地の上を走りはじめなければいけないんだ。

 みんなにおいていかれないために。

 ……、あの子の背中に追いつくために。


「おはよう。緑」

「あ、おはよう、青。今日は早いんだね。どうかしたの?」

 朝練の途中で、汗をかいて顔を冷たい水で思いっきり気持ちよさそうに洗っていた緑は青を見てすこし驚いた。

 緑と青は高校の二年生で、小学校のころからのいつも一緒にいる一番仲のいい友達で、中学も高校も一緒で、二人とも中学生のころから陸上部に入っていて、高校生になっても入学してすぐに陸上部に入っていた。

 だから朝から二人は陸上部のみんなと一緒に朝練をしていたのだけど、青は少し前に陸上部をやめてしまった。

 だから、こんな早い時間に青と会うことは久しぶりのことだった。

 青は今は映画を撮っているらしい。撮るほうではなくて、撮られる側。映画の主人公として青は映画部の映画の撮影に参加していた。

「君のことを好きなったから映画を撮りたいって思ったんだ。君のことをヒロインにして映画を撮ってもいいかな?」

 って恋の告白のときに言われたらしい。

 相手は三年生の先輩で映画部の人らしい。かっこいいけど、少し変わった人だと言うことだった。(緑はまだ『その噂の先輩』にあったことがなかった)

 それは嘘みたいなお話だったけど、本当のことのようだった。

 青は出会ったときから、背が高くて、大人っぽくて、とっても綺麗だったから小学生のときからずっといろんな人に告白されていたけど、まだ付き合った人はいないはずだった。

 今度も恋の告白はことわって、恋人にはならなかったみたいだけど、映画のことは「やってみる」って嬉しそうな顔で言っていた。

 そして青は陸上部をやめてしまった。

 映画にとられてしまったのだ。

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