第74話 聖地巡礼Ⅰ
「西園寺さん、ありがとうございました。そして、すみません。」
人生で一番深く頭を下げた。
これしか出来なくてごめんなさい。
「一ノ瀬ちゃんどうしたの?」
「仕事、辞めます。」
「へっ?」
諸々の説明をした。
黙って聞いてくれた。西園寺さんならきっと、完璧な純度で理解してくれる。
そう思って話して、返ってきた一言。
「私の見る目は間違ってなかった。ただ致命的に、良すぎたってことね。」
それだけだった。静かに感謝をしつつ、次の場所へ向かった。
さようなら、西園寺さん。
「え!仕事辞めた!?なんで!」
星野さん。唯一仲良くなった同期。
「ちょっと疲れた。放浪でもしてくるよ。貯金はあるし。」
本当のことは伝えない。きっと、またあの顔をされるだろうから。
「まあ…そうだよね。うん、一ノ瀬さんはよく頑張ったと思うよ。また連絡してね。」
連絡してね、か…。
「保証は出来ない。」
嘘はついてない。
じゃあね、星野さん。
さて、さくっと終わらせられる人はこれだけか…。
あとはゆっくり時間をかけて、清算していこう。
ね、ここなちゃん。
「えっと、久しぶり!」
「久しぶり。」
成人式ぶりだったかな。かわいさに磨きがかかってるなあ。
「約束よりちょっと遅れちゃったけど、ちゃんと会えたね。」
「そうだね…!仕事はどう?順調?」
「そりゃもう、とんでもなく。」
「えー、話聞かせてよ!」
それからは、西園寺さんに会ったところから全部話した。
話すたびに驚いて、流石だねって一声。
「今日はありがとね!また次は…アラサーになった時かな?」
次を考えてくれるんだ、ここなちゃんは。
「次は無いよ、これで最後。全部最後だから。それじゃね。」
泣きそうになって顔を見れないまま、振り返ってここなちゃんとは別れた。
バイバイ、ここなちゃん。
ああ…思ったよりキツイな、この清算。
まるでみんな私に生きててほしいみたいな。
無責任なエゴを押し付けて生かそうとしてくる。
やめて。
それ、一番私に効くから。
「おひさ。」
《うっす。》
「元気?」
《おん。》
「これ、多分最後の通話になる。」
《死ぬの?》
「うん。」
《あー…まあ止めはしない。》
《お前ぶっ壊れてるし。》
《じゃーな。》
「うん、バイバイ。」
《あ、忘れてた。》
「うん?」
《ゲーム、完成したから。感謝してる。》
そっか…。良かった。
「おめでとう。やっと完成させられたね。」
「それじゃ、ね。」
じゃーね、マギカさん。
ボロボロ泣きながら話してたの、バレてないといいな。
いつだって最後は惜しい。
でも最後が無いともっと寂しい。
最後を選択出来ているだけ、私は運が良い。
だから次は…。
《みやこ:生きてたか》
待っててね。




