第73話 腐った脳みそ
私は部長補佐ながら、私が提案したものを編集会議で議決してもらった。
補佐としての滑り出しは好調なんじゃない?
そんな中でもやっぱり頭の片隅に常にあるのが、
虚無感。
どうして、どうして。
私、上手くやってるはず。
これからもこの調子でやっていけば、出世コースってやつなはず。
私、幸せなはず。
だって、今はおばあちゃんの援助も受けないで、
一人暮らしして、
自分のお金で食べ物買って、
お酒買って、
タバコ買って、
家賃払って、
自立している。
…自立?
わあ、私自立してる。
気づかなかった。
私今、生きてるんだ。
それも、幸せに。
幸せ。
幸せ?
ちょっと待って。幸せ?本当に幸せ?
最初から良いポジションに立って、自分の提案したものが認められて、
社会に認められて。
そんで自立してて、星野さんみたいな話せる人もいて、
西園寺さんみたいに私を買ってくれる人がいて。
幸せ?
うん。幸せ。
はは。
これ、まずいかも。
気づいちゃいけなかったかも。
ああ、やばい、背筋が凍る、鼓動が高まる、息が詰まる。
ダメだ、ダメだ、ダメ。
私ってこんなに幸せになっていいの?
誰かがそうやって言ってくる。
答えは?誰が出す?
答えは、わからない。
幸せになっていいのか、わからない。
でもこれだけは聞こえる。
幸せなんて存在が罪だ。
ああ、ダメだ、ダメだ。
今ある幸せな環境を、脳みそが全力で拒否している。
脳から圧倒的拒否感と警報が鳴っている。
会社を休んだ。
無理だった。動けなかった。
ベッドから指一本も動かせなかった。
頑張って動こうとすると、吐き気とめまいに襲われる。
私はどうすればいい?
ただ…生きたい。
生きたい?…なんで。
別に生きなくても…。だれも何も思わない。
思ってくれる人は消えた。
うっ…気持ち悪い…。
タバコ…吸いたいのに吸えない。
お酒も…飲めない。
苦しい、苦しい、苦しい…。
死にたい。
生きたくない。死にたい。
幸せになんか最初からなれないんだ。
不幸だった私の幼少期、幸せを望んでいた。
あの時の記憶は思い出すだけで嫌な気分になる。
だから不幸にはなりたくない。
だから幸せになろうと、私は頑張った。
今までずっとずっとずっと、ずーーーーーーっとそうやって頑張ってきた。
それで幸せを掴んでる。
なのにどうして?この空虚は。
どこに穴が開いてるの?
どこに不備があるの?
誰か、私を助けてくれませんか?
自分でも自分がどうなってるかわからないんです。
この腐った人生、新鮮に戻す方法ありますか?
先生、私のびょおきはなおるんですか?
…最後に、終わるための始まりをしようかな。
そう思ったら身体が動いた。タバコに火を付けられた。
ふう…。清算するか。




