第70話 それぞれの立場
「なんで黙るんですか、みなさん。私バックレますなんて言ってませんけど。」
思ったよりも凍りついた場面が溶けない。
…。
…。
「生になりますー。」
「ありがとうございます。」
生来た。私が喋らないと何も始まらないな。
とりあえず一口…美味い。
「鈴木さん、続きお願いします。」
司会進行務めさせていただきます、一ノ瀬です。
「ああ…いや…。」
「どこまで聞いてたかって?全部聞いてたので続きからでいいですよ。」
ほんと、普通の人って頭の回転遅いよね。早く喋ってよ。
イライラするから。
「…その、一ノ瀬さんが調子に乗ってるっていうのはあくまで比喩で…。」
「素だとそんな喋り方するんですね。」
「…はい?」
「いや、仕事中は横文字をたくさん使うので、話しにくいなーと思ってたんです。」
「普通に喋った方が良いですよ。」
沈黙。
「それで、説教ってなんですか?ほら、私を公開処刑してくださいよ。」
「一ノ瀬さんは…第一、人をなんだと思ってるんだってとこ…ですよ。」
「覇気が無いですね。面接の時もそうやって話してたんですか?」
「調子に乗んなっつってんだよ!!」
ああ、やっと対等に話せる。ここまで長かった…。
「人がどんな気持ちで仕事してるかとかお前考えたこと無いだろ?新卒だからよ。」
「はい。」
「俺は毎日毎日血まなこになって良い漫画提案してんだよ!」
「それをぽっと出のお前に酷評されて…されて…」
「はい。」
「…だから用は…お前には道徳が無えんだよ!」
「はい。」
「…はいじゃねえよ、終わりだよ。」
「そうですか…。思ってた以上に効きませんでした。無?ってやつです。」
結局のところ鈴木さんが言いたいのは、私の運の良さに対する妬み。
どうやって私がこの立場にいるのかは知らないけど、とにかくムカつく。
存在がムカつくってことだろう。
「まるで猿みたいな考え方してますね。鈴木さん、ここは人間社会ですよ。」
「私は生まれ持って顔も良いし、運が良いんです。人より出来ることも多い。」
「でもそれは私が望んだから?いいえ。努力したから?いいえ。」
「なるようにしかなっていないから。」
「みなさんの反感を買ったのは事実かもしれませんが。」
「私だってこの立場にいきなり立たされて困惑しました。」
「でも、やるしかない。私は私なりに仕事を全うしているんです。」
…そろそろ誰か口を挟んでもいいんですけど。いつまで私喋ってるの。
「新卒だから、経験が無いからといって仕事をしないのは、問題外ですよね?」
「なので私はあなたたちの目の敵にされようが構いません。」
「まあとりあえず、私も揃ったことですし、新卒歓迎会リスタートしましょうか!」
これは名司会ではないだろうか。空気は星野さんが喋ってくれれば戻るよ。の目線を送る。
「あっ、みなさんお冷大丈夫ですか!あと私唐揚げ食べたいです!」
「…おう、食え食え!」
ナイス、星野さん。
「星野さん。」
「はい!」
「これ終わったら、ちょっとお散歩でもしようか。」
流石に迷惑をかけた自覚があるので、ちょっとばかしお話をね。




