第7話 寄り道のつもりだった
「付き合って…ください!」
その日の放課後。人気の無い場所ではじめくんに告白された。
考えろ、私。これは利用出来るんじゃないか?
私とはじめくんが付き合うっていうのは…。
私がそれだけの関係性を築くことが出来るって、ここなちゃんにアピール出来るんじゃない!?
思わずにやけた。見つけた。
「いいよ。よろしくね。」
私はゆっくりと彼に手を伸ばした。
目的から遠ざかってるように見えるのは錯覚。これは必要なこと。必要なの。
最初から利用するつもりではじめくんに近づいたんだもん。
利用するだけ利用してやる。
そうして初めてのカレシが出来た。
しっかし、冷静に考えるとどうして私を好きになってしまったんだろうか?
かわいいね、って言われたことはある。でも小学生なんてみんなそうでしょ。
私はここなちゃんにアピールするために、はじめくんに何をしたっけ?
後ろから飛びついたり、
腕を組んでみたり、
目があったら笑顔を返してみたり、
とにかく見つけたら声をかけたり、
うーん…。それくらいしかしてない。それで私のことを好きになるかなあ?
こうして手を繋いで歩いてる今もそんなことを思ってしまう。
そうして1ヶ月後、時は来た。ここなちゃんが私とはじめくんが2人で歩いているところに偶然遭遇したのだ。
これでここなちゃんの信頼も勝ち取れ…
「ちょっとごめん、そういうの無理だから…。」
あれ。思ってたのと違う。ここなちゃん?
「違うのここなちゃん、私はじめくんに告白されて断れなかっただけで…」
「葵、そうなの…?」
はじめくんの前でそんなことを口走ってしまった。
はじめくんの信用が崩れていくのが目に見えた。
立ち去ろうとするここなちゃん。待って…。これだけは伝えないと今までみたいに一生後悔する。
「私、ここなちゃんが好きなの!」
足を止めるここなちゃん。答えはない。はじめくんと手を繋いだままそんなこと言ったって…。
全部空回り。
それからしばらくして学校では席替え。ここなちゃんとは隣同士じゃなくなって、次第に話さなくなった。
何がいけなかったんだろう。自分の部屋で夕焼けをぼんやりと見つめながら考える。
今になって考えても、何がいけなかったのかよくわからない。人を利用しようとしたから?
でもそれって、社会構造そのものじゃん。
誰も私のことなんて気にしてないとことかも。だから悪いことじゃない。
私は悪い子じゃない。
悪い子じゃない。
悪い子じゃ…
「葵、紹介するね、新しいお父さん。しんたろうお父さんだよ。」
ノックくらいしてよ、お母さん。そういえばこんな出来事もあったっけ。
再再再婚…もう面倒くさいからいいや、幾度目の再婚相手のお父さんは、私に気さくに挨拶をした。
そのお父さんは、今までに見たことのない目をしていた。




