第64話 煙たい
一服。
葬式には呼ばれなかった。
つぐちゃんも私と一緒で、家庭がアレだから、私のこと話して無かったんだって。
だから呼ばれなかった。そっかあ。
でも、これから親御さんたちには会ってたのかもな、
なんて。
多分もう一生会うことは無いけど。
まあもう、終わったことだしさ。
終わっちゃったことだし。
しょうがないことだよ、事故は。
心の整理?そうだね…。
一服。
ホントはベランダで吸わなきゃなんだけどさ。
ごめんなさい、大家さん。
ベッドで吸って。
退去する時は多めにお金払うから。
お金払えば許してくれるよね?
だって、世の中お金が全てなんだから。
だからさ、あの男2人組にもお金払ってもらわなきゃね。
義務でしょ?
それで償えるんだからさ、安いもんじゃん。
”お金”ごときで償えた気になれてさ、楽な世界。
償ってるフリもほどほどにしてよね。
一服。
この世はどうしても私を許さない。
私、悪いことした?
前世、とかいうやつ?
それなら仕方ないか。
でもさ、
つぐちゃんを殺すのは違うよね?
私が不幸なのは別にいいよ。百歩譲って。
でもさ、
つぐちゃんを巻き込むのは違うよね?
ねえ、神様。
バカ。
おかしいよ、こんなの。
ねえ、どうすれば帰ってくるの?
よっす、って言って私を見るあの目はどこに行ったの?
路上ライブで有名になって、いつかフジロックとか出たりさ、
アニメの主題歌担当してアニサマ出たりさ、
ワンマンで武道館埋めたりさ、
そういう未来がつぐちゃんにはあったんじゃないの?
ねえ…。
ねえ。
ねえ!
…。
私はつぐちゃんを応援していたし、尊敬してた。
多分…つぐちゃんも、他の人とは違ってさ、
私という存在を、ちゃんと見てた。
そんな人今まで居なかった。
お母さんすら私のことを見てなかったのに、つぐちゃんは見てくれた。
私のこと才能あるって言ってくれて、
それでも私の決めたことは尊重してくれて、
背中を押してくれてさ、
存在で背中を押してくれてた。
…でも死んだ。
存在で人生を肯定してくれてた。
…でも死んだ。
私の屑で腐った人生を、肯定してくれてた。
…でも死んだ。
私にはそんなつぐちゃんが必要不可欠だった。
…でも死んだ。死んだ死んだ死んだ。
…。一服。
タバコの味。つぐちゃんの味。
懐かしいなあ、もう。つぐちゃんに振り向いてほしくて私必死で…
ずるいよ、つぐちゃん。
私に一生忘れられないものだけ残して先に行くなんて。
ずるいよ、つぐちゃん。
最後、なんて言おうとしたの?
ずるい、ずるいよ。全部ずるい…。
「どうすれば、良かったんだろう。」
ああ、煙たい。




